星空のメロディー⑩
草笛を吹きながら、中学で過ごした三年間を思い出していた。
真新しい制服をロンに見せたとき、大喜びで飛び掛かってきたロンに制服をシワクチャにされてしまったこと。
テレビドラマの主題歌に憧れてオーボエを吹くようになったこと。
里沙ちゃんと知り合ったこと。
花火大会にロンと行って変な男の人に絡まれたのをロンが助けてくれたこと。
そして、その日に初めて美樹さんと出会ったこと。
体育祭で美樹さんにデレデレする、ロンに腹が立ったこと。
そこで私の落したバトンをロンが拾って持ってきてくれたこと。
スキーに行って茂山さんと知り合ったこと。
美樹さんが家に来て一緒にロンのご飯を作ったこと。
その美樹さんがニュージーランドに旅立ってしまったこと。
・・・・・・。
数えればきりのない出来事は、私たちが生きて行く限りふえていく。
いま、私の少し前に座り目を閉じて奏でる音楽に耳を傾けている里沙ちゃんや茂山さん、そして二年生、一年生、先生とその家族、それから私の大切なロン。
持田先生の奥さんのヴァイオリンに助けられながら中盤を乗り切り曲の後半に入る。
曲を奏でながら思うことは、後輩たちに今年達成できなかった関東大会、いや全国大会に駒を進めてもらいたいことと、受験の先にある私たちの高校生活。
そして過去と未来は永遠に繋がっていることを。





