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星空のメロディー⑦

 オープニングは江角君のトロンボーンと伊藤君のトランペットによる「見上げてごらん夜の星を」で始まり金管の澄んだ音色が夜空に吸い込まれていくように皆、空を見上げて聞いていた。

 打楽器とチューバ担当者はさすがに登山道なので楽器を運べなくて可愛そうだったけれど、それでも音楽魂を発揮させタンバリンやカスタネット、それにオカリナなんかで演奏に参加していた。

 そのなかで圧巻だったのはドラムの甲本君で、なんとバチだけ持ってきて、あとは現地調達の石や木や草を叩いて確りリズムにしていた。

 私は江角君から渡された楽譜を胸に抱きながら、司会の伊藤君に呼ばれるのをずっと待っていた。

 今は美緒と和樹君と持田さんの三人による「コンドルは飛んで行く」楽器はクラリネット、フルート、そしてファゴット。

 順番的には次が私で、そしてそのあとに全体で「ムーンライト・セレナーデ」を演奏して終わりになるはず。

「コンドルは飛んで行く」の物悲しい響きが山々を渡って行くように終わった。

 さて、いよいよ次は私かな。ケースから取り出していたオーボエをぐっと握ると、司会の伊藤君が「ムーンライト・セレナーデ」と言った。

『あれ!?私は??』

 呆然と立っていた私の背中を江角君が優しく押して、皆と一緒に前に並ぶ。先に演奏していた美緒たちに笑顔で迎えられる。

『まあ、いいか。私のほかにもまともに参加できていない人もいるのだから』と気持ちを切り替えて用意をする。

『んっ?ナカナカ始まらない』と思っていたら、伊藤君から「副部長!音合わせの音!」って催促されて慌ててB♭の音を出すと他の楽器も併せてチューニングを揃えた。

 もうこのチューニングのB♭を出すのも最後かと思うと、なんだか涙が出そうになってくる。

 皆の音が揃って、一瞬静まったあと甲本君がバチを鳴らして合図を送り、いよいよ最後の曲「ムーンライト・セレナーデ」が始まった。


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