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第6話

 俺と美祢が体験入部状態から正式に旅行部の部員となり、部としても正式に活動をすると一応俺だけに宣言した桃花先輩も張り切っていたあの日から数日。旅行部は相変わらずの旅行部だった。


 そう、ほとんど変わっていない旅行部だ。


 そんなある日の放課後、何度も聞いた四辻先輩のため息が目の前で聞こえている。

「あのね桃花、旅行部をちゃんと部活にしようとする気持ちはわかったんだけどね……」

 と、言いつつ四辻先輩がなにやら書類を困り果てた感じで桃花先輩の目の前にそっとさし出した。

 どうしたんだ? と、興味を持って俺は四辻先輩の方を見たのだが目を逸らされてしまった。

 あきらかに嫌われてるように見える。

 なかなか四辻先輩と話す機会もなかったし、このあたりで少しでも喋って仲良くなっておきたかった。俺としては唯一といっていいほどのまともな人なのに……

 目をそらされるというのは、俺が一体何かしてしまったのかな? と自分を疑ってしまう。

「ねぇねぇおねーちゃん達どうしたの? 何かあったの?」

 先輩たちのやり取りがずっと聞こえてたのだろう。みるからに首を突っ込みたくてソワソワしているのが俺からはずっと見えてた。満を持して美祢が首を突っ込む。ろくなことにならない可能性が高いが、俺は目をそらされてしまったので隣で大人しく聞きながら様子をみてみる。

「じゃあ美祢ちゃんも一緒に聞いてね。桃花は旅行部を部としてちゃんとしようと頑張ろうとしてるの。そして部を新しく作る申請の用紙を書いたみたいなの。だけどね……」

「わお!」

 珍しく美祢が、大人しく相槌を打ちながら話を聞いていたら、申請用紙をそっと目の前に出されて驚いている。

「桃花、なんで顧問の先生のところの名前に自分の名前を書いてるの? 普通に考えておかしいと思うんだけど……」

 どんどん声のトーンが弱くなっていく四辻先輩。

「だってだって! 旅行部の顧問の先生って今誰なの?」

 頭が痛くなるような言葉が聞こえた。俺の聞き間違えだったらよかったんだろうがきっと間違えて無いと思う。はっきりと聞こえたから。

「顧問の先生誰って……どうゆうことです?」

 さすがの美祢も状況がわからないというか明らかに素になってる。美祢、お前も多少普通の思考を持ってるようで俺は安心したよ。

「だから……あっ」

 四辻先輩が何かを口にしようとしたところを自分で遮った。どうしたのだろう?

 そうすると頭を抱え始めた。また新たな問題を思い出したのだろうか?

 本当に大丈夫なのか旅行部? 俺いつも旅行部の心配しかしてないな。旅行部って部の心配をする部が主な活動なのか?

「だっておじいちゃん先生退職しちゃったじゃん」

 桃花先輩の言葉に四辻先輩が小さくそうだったと呟いた。

 名義だけっていうことを聞いたことがあるがまさにそうだったんだろう。そして3月で退職されて、4月からは顧問の先生が誰もいない状況にも拘わらず誰も気が付かなかったと。

「それって部としてどうなんですか?」

 俺が突っ込みを入れると四辻先輩はビクッと驚き小さくゴニョゴニョと語り始めた。

「部としては存在してないことになってるけど、みんな部の存在は知ってるし、非公認みたいな形でこの部室使ってるだけだから……だから部の申請書なんてなかったから……」

 別に俺は四辻先輩を怒ってるわけではないのだが、見た目は俺が四つ辻先輩を追いつめてるようになってしまっている。先輩完全におびえてるし。

「だから申請書を書いて、ちゃんとした部になろうとおもったんじゃん!」

 桃花先輩の謎のドヤ顔。そんな自信満々な顔をしても何も解決しないですけどね。

 美祢が一人で拍手してるだけだ。むなしい拍手が部室に響いてる。

「どうしよう……私も桃花がちゃんと部にするって言ってたからその方向で堂々と部にするつもりで動いてたけど……おじーちゃん先生居ないんだった……どうしよう……」

 何度も呪文のようにどうしようどうしようとつぶやき頭を抱えて悩む四辻先輩。

「甘いものを食べると頭が働くらしいですよ」

 そんなことを言いながらお菓子を四辻先輩に差し出す美祢。それを黙って受け取りポケットに入れる先輩。

「今食べないのかよ!」

 また俺の突っ込みにビクッとおびえた先輩。人間、相性というものがあるらしいがどうも合わないらしい。

 俺が喋るといつもビクッと驚いたり、目をそらしてため息ついてたりする。

「先生っていないとダメなの~?」

「ダメ……だと思う」

 お菓子を口の中に頬張りながら、間抜けな声で桃花先輩が口にして、自信なさげに否定する四辻先輩。四辻先輩は間違ってないと思うので自信もって否定してもいいんだけどなと思う。

「なんだ! そんなことなら顧問の先生探せばいいだけじゃん!」

 今閃いたといわんばかりにいきなり立ち上がった美祢。

「いや、だからさ。さっきからそのことを先輩は悩んでたんだよ」

「そうなの?」

 真顔で聞いてくるな! まさかコイツ本当に今までのやり取りの内容をわかってなかったのか? コイツ本当にバカなんじゃないのか? コイツはどうやってこの学校に入学したんだ?

 俺の中から色んな疑問があふれ出てきて止まらない。どうしよう。

 そんなあふれ出てくる疑問を強制的に停止させられた。

「おねーちゃん! ちょっと先生探してくる!!」

 そう言いながら部室を飛び出る美祢。しっかりと俺の手を掴んで、俺は引っ張られるように部室から退場した。



 先生を探してくるってどういうことなのか全く意味がわからなかった。

 美祢はもしかしておじーちゃん先生と言われる人を探すとか言い出すんじゃないだろうな? 話の流れではおじーちゃん先生は退職してるはずだな。

 だから先輩達も困ってたわけで……

「なぁ美祢、お前なんかアテみたいなのがあるのか?」

「そんなのあるわけないじゃん。だから探しに行くのよ」

 今日は胃薬も頭痛薬も持ってるんだ。俺、準備がいいだろ。

 まぁ薬を持ってても何も解決にはならないのだが。

 しかし、美祢のやつアテがないと言ってる割には一直線にどこかへ向かっているようだ。

 アテがないと言いつつもなにかあるのではないのか? と微かに期待する。

 これまでも美祢の積極性は感心するもがあったし、美祢のセンサーに何か引っかかってるものがあるのかもしれない。

「お前……ここって」

「職員室でしょ?」

 期待した俺が馬鹿だった。まさかど直球の作戦に出るとは。

 こんな部の顧問になってくれる先生がいないから先輩達も困ってるのだろう。美祢は本当に何も考えてないのか、怖いものなしだな。

 勢いよく職員室のドアを開けて丁寧に自己紹介をしている美祢。その横で引っ張られるようにして俺も職員室に突入。

「1年2組の美祢彩耶乃です! どなたか旅行部の顧問になってくれないでしょうか? 怪しい部活ではありませんのでどうか!」

 先生たちの中では十分怪しい旅行部として認識されているだろう。さらに美祢が突入したところでやっぱり変な部活ということを再認識されたのではないだろうか? ついでに俺たちも変なやつだと思われるのではないだろうか? 俺が先生の立場ならコイツら大丈夫か? くらい感じてしまうかもしれない。

 結局職員室で大きな手応えがなかったわけだが、

「どうするんだ? 次の手は何か考えてるわけ……」

「ないわね。どうしようかしら」

 そんなあっさりと。あの勢いで出て行った割には職員室に特攻して変な人扱いされただけじゃないか。

「まぁ今日中に探さないといけないわけじゃないでしょ? 部室戻ろ」

 やけにあっさりと諦める美祢。結構がっかりしてるようにも見える。

 美祢お前結構わかりやすい……のかな?

「なに?」

「なんでも」

 なんか始めて美祢のことをちゃんと見た気がした。

 

 そのあと部室に戻ったら先輩たちがボードゲームで盛り上がってた。その中に普通に美祢も溶け込んで楽しんでいた。

 四辻先輩まで普通に馴染んで盛り上がってた。

 なんだ? 旅行部って。


ようやく8月が終わりました。今年も暑かった。

カラオケの夏休み料金がおわったのでようやくヒトカラに行けます。

ではまた次回。。。

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