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第66話

 濡れたテーブルの上には無残にもゲテモノ炭酸が入った紙コップが並んでいる。部室の床には無残に転がる部員数名。俺も転がる部員の一員だ。

 その中で以前生き残っている烏丸先輩とゆかり先輩の二人が元気に文化祭の打ち上げを今なおも行っている。いや、元気なのはゆかり先輩だけかもしれない。烏丸先輩の目に力は無いようにも見えてしまっている。

 ゆかり先輩はというといつもの味音痴具合を炸裂させ、美味しそうにゲテモノ炭酸を飲み続けている。その光景を見て気が付いた。烏丸先輩の目に力がないのではい。差し出したゲテモノ炭酸を次々と飲み干していくゆかり先輩に烏丸先輩はただ唖然としているだけなのかもしれない。

 そんな状況の中ゆっくりと部室のドアが開かれた。

 遅すぎる救世主の登場だ。もう遅すぎるので救世主でも何でもないのだが。

 救世主になれなかった桃花先輩は扉を開けたまま固まっている。どうやら部室の中の状況をうまく呑み込めていないようだ。

「お帰りなさい。桃花」

「えっ? えっ? 一体これは何があったのかしら?」

「うふふふふ。打ち上げよ、桃花。何かおかしい? あなたが出ていく前から打ち上げしてたじゃない。何を戸惑っているの?」

 戸惑い続ける桃花先輩に当たり前のように烏丸先輩が語り掛け続ける。しばしの無言タイムの後にうつむいたままの桃花先輩の肩が震えている事に気が付いた。とうとう壊れてしまったのか? いや、壊れているのは通常営業か? となるとマズい展開か? 冷静に考えてしまい俺の背筋に嫌な汗が流れ落ち、本能が警報を鳴らし始めてしまった。

 桃花先輩の顔が上がった瞬間の表情を見て俺は終わったと感じた。さっきまでの戸惑いの表情とは大違いで、まさにいたずらっ子の様でいて、楽しそうな表情をしていた。

「こうなったらやりますわよ!」

 そう一言いうと机の上にあった誰かの飲みかけの炭酸……? 茶色の炭酸? こんな飲み物あったっけ? という謎の炭酸を飲み干し……切る前にすでに噴き出していた。

 黒っぽいぬめぬめしたものが机の上にへばりついていた。なんだあれは?

 机の上に噴き出された茶色の液体と黒い物体に炭酸が混じってシュワシュワいってた。まさにカオスだ。

「なんですのこれは! こんなもの作った覚えはありませんわ!」

 いきなり飲んだ炭酸が謎の炭酸だったようでご立腹だ。しかしあの炭酸は何なのだろう? 俺も記憶がない……が状況を見て作った犯人はすぐに分かった。

 悲しそうに座っているゆかり先輩だろう。

「もう、ももちゃんそれ私が飲んでたコップだよ。ちゃんとももちゃんの分は今から作るから」

「作らなくていいですわ!」

 即否定。圧倒的拒否だった。

 相変わらずのゆかり先輩はどうして? みたいな表情をしている。

「ゆ、ゆかり先輩。ちなみにこれって何の炭酸なんです?」

「えっ? ノブくんも飲む? 味噌汁炭酸だよ?」

「結構です」

 少し悲しそうな表情をしていたが俺の心はなんて物を作ってるんだこの人はという気持ちでいっぱいだった。

 炭酸味噌汁と聞いて烏丸先輩も桃花先輩も大笑いしている。

 味噌汁まで炭酸にすることはないだろうに。俺は呆れるしかなかった。

 呆れていたのにさらに呆れた。味噌汁炭酸を美味しそうに飲んでいるのだ。

「た、ただいまぁ」

 と、同時に部室のドアが開き、このカオス空間にようやく美祢が戻ってきた。やっぱり元気がないように見える。体調の悪そうな美祢に味噌汁炭酸はきついだろう。

「体調は大丈夫か? 何かあったのか?」

 俺は美祢を気遣って声をかけたのだが、残念ながら俺の声は美祢に届くことはなかった。

 桃花先輩と烏丸先輩の異様なテンションと騒ぎ方で俺の声はかき消されていた。

「このゲテモノ炭酸、アルコール入ってるものなんてないですよね?」

 これまた俺の声はかき消された。というよりも届かないのか聞いてないのか。

 まぁアルコールが入っていれば今度は正真正銘の廃部だ。なんせ法律違反だからな。

 そんなことを考えながら騒ぐ二人を見ているとどうも桃花先輩は無理しているようにしか見えない。いや、炭酸パーティーは無理しないとゆかり先輩以外は楽しめない苦行だ。

 先輩に近づいて声をかけてみることにした。近づかないと声がかき消されてしまう。

「桃花先輩、何か無理して騒いでないですか?」

「無理してますわよ! そうですわよ! 動揺してますわよ!」

「なんの開き直りなんですか?。びっくりするじゃないですか。というかちょっと落ち着いてくださいよ。動揺してるってテンションじゃないですよ。この炭酸アルコール入ってますよね? これおかしいですよね?」

「あなた達何をコソコソとやってるの? やっぱりあなたたち怪しいわね。それにこの私が作ってる飲み物なのにアルコールが入ってるわけないでしょ? こう見えて私、元生徒会長よ?」

「先輩もいつも通りに戻ってくださいよ。絶対これアルコール入ってますよね? 烏丸先輩が元生徒会長だって知ってますよ。旅行部を廃部にした張本人じゃないですか」

「ちょっと城野くん。あなたいつも通りの私って。あなたが烏丸理沙をどの程度知ってるって言うの? 私たちそういう関係じゃないわよね? 何だったらそういう関係になってみる?」

 烏丸先輩がぐいぐいと近づいて迫ってくる。


 面倒くさいただの酔っ払いじゃないか。


「ちょっと何やってんですか!」

 そのセリフとともに迫ってきた烏丸先輩を俺から引きはがしてくれたのはベガだ。

「あらら。ごめんなさい。別にあなたたちみんなが仲良くお手てつないで誰も前へ出ようとしてないから私が出てみただけよ。私は別にそういうことを望んでいるつもりはないと思うわ。これから先どうなるかわからないけどね」

「私も楽しむーーーーー!」

 突然美祢が叫んだ。このテンションに乗り遅れていたのでとりあえず叫んだというところか。

 目の前にあった……味噌汁炭酸を一気に飲み干した。

 桃花先輩と美祢って本当に姉妹なのかって言うほど行動がリンクしている。

 美祢は相変わらずカラ元気に見えてしまうのだけれど部室に戻ってきた時よりは元気に見える。体調が悪いわけではないのかな?

 美祢が桃花先輩に飛びつき抱き着いている。なんだか本当に妹が姉に甘えているように見えてしまう。

 桃花先輩も困った顔をしながら美祢の頭をなでているので余計にそういう風に見えてきた。

「私はどうしたらいいって言うんですのおおーーーーーー」

 美祢の頭をなでながら突然叫び始めた。

 一体何がどうなってるんだと。もうわけがわからない。

「ごめんねおねーちゃん」

「いいんですわよ」

 本当の姉妹のような言葉の掛け合いなのにこちらには一体何のことやら意味不明だ。

「あなたも素直になるべきじゃないの?」

「もう! どうしてあなたはいつも急にそういう風にテンションを戻すのかしら?」

「桃花先輩はいつも感情のままじゃないの?」

 桃花先輩と烏丸先輩の謎のやり取りにベガも加わった。どうしてかよくこの3人は絡んでいるように見える。きっといろんな波長が合うのだろうか。

「あら? あなたも素直にならないとね。みんな欲しいものが同じかもしれないから」

「な、なによ突然!」

 いつもベガは烏丸先輩に突っかかっていっては言い返されててる光景。あぁいつも通りだ。

「本当に旅行部面白いわね。ゆかり」

 話を急にふられたゆかり先輩は夢中でお菓子をぼおばっていた途中だったようで驚きのあまりのどに詰まらせて苦しそうにしていた。そしてゲテモノ炭酸で無理やり流し込んでいた。

 一人だけ当たり前のように美味しそうにゲテモノ炭酸を飲み続けるゆかり先輩。やはり旅行部には変な人しかいない。

 涙目のゆかり先輩は話を聞いてなかったようで烏丸先輩の方だけを見て困惑している。

 話をかけられたことだけは辛うじて理解しているようだ。

「うふふ。本当に面白いわ」

 そういいながら一人で嬉しそうにちびちびと炭酸を飲んでいた。

「ま、あなた次第って事かしら?」

 明らかに俺を見ながら言った言葉だった。全く持って意味が分からなかったし、桃花先輩が俺を見てから頭を抱えて首を振る意味も全く分からなかった。

 そしてもう一度思った。あの炭酸アルコール入ってないよな?

読んでいただいてありがとうございます。

こういう話の時はポンポンと書きたかったのですが時間がかかってしまいました。

読みたい本がたまって来て買うだけ買っちゃう状況になり、円盤がたまりにたまるなかゲームやっちゃうというね。

この時期は送別会の時期ですよね。もう送別会だらけです。

休みの日に送別会を入れられて会社の近くにホテルをとるというへんてこりんな日々を送ってます。

これで一応文化祭終わって通常の旅行部のだらだらに戻りそうな感じです。早く旅行しろよって方。そろそろ旅行しますのでお楽しみ?に。

ではまた次回。。。

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