表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/73

第5話

ようやく動き始めました旅行部です

今回も楽しんでください

 体験入部をしてから1週間。俺は旅行部がどんな活動をしているのか結局よくわからなかった。

 昼飯をみんなで食べて、雑談する。日田先輩はよく昼寝をしてた。

 放課後もぞろぞろと集まってお菓子を食べながら喋る。たまに四辻先輩が顔を出しに来て活動内容のことを喋ってまた生徒会の方に行く。おおよその流れがこんな感じだった。

 今、何を考えているかというと、入部するかどうかだ。

 この1週間はほとんど流されるがままにすごしてきた。俺のワクワクする旅行部がなかったのが現実だった。

 悪くはないと思う。昼飯でスープが出てきたり冷たい麦茶が出てくるのは悪くないと思う。先輩もいい人たちだし……ただ俺の求めてたものとは全く違った。そこが最大に悩んでいる部分だ。


 旅行まったく関係ないし!!


 いったい何がどうなって旅行部なのか遠賀先輩に問い詰めたい。名前詐欺もいいとこだ。

 俺みたいに騙されて入った人は居ないのだろうか? 俺が犠牲者第1号だとすると第2の犠牲者を出さないためにもなんとか旅行部に間違った期待をして入る人を無くすための活動しなくてはならない。

 俺はそんなことを考えながら旅行部の部室に居る。本日一番乗りだ。一番張り切ってると言われても何も言い訳できない状況だ。ほんと、ここで何をやってるんだろう。

 この居心地のいい旅行部の部室に一人でぼーっとくつろいでいる。無駄に物があるこの部室をゆっくりと見渡す。本当にびっくりするほど何をする部室なのかがわからない。

 俺が一人でため息をついていると部室のドアが開いた。誰か来たようだ。

「あら、部室に一番乗りとは優秀ですわね。関心ですわ。しかしため息なんてついてどうしたんですの? 何かあったのかしら?」

 俺はあなたの作った旅行部が原因でため息をついているのですよ。とは言えず、なんて答えようかと悩みしばしの沈黙。そしてまた沈黙を破るのも先輩。

「後輩の悩みは先輩が聞いて解決してあげますわ。入学してそうそう、慣れない高校生活で悩んでいますのね。それとも彩耶乃のことで悩んでいるのかしら? さぁわたくしに話して見てください。相談ですわ相談」

 そうやってなぜか嬉しそうにしながらお茶の準備をする先輩。

 黙って俺の前にアイスコーヒーが出される。この部って喫茶店か何かだろうか? と勘違いするほどだ。

「お砂糖はいりますかしら? ミルクは?」

 そう質問をしてきながらテキパキとお菓子の準備も始めた。

「あっでは、ミルクだけお願いします」

 そう答えた俺は気が付いたら背筋を伸ばして座っていた。なんだ? 相談の準備みたいになってるじゃないか。

「少し待ってくださいね。最後の準備をして来ますわ。すぐ戻りますので」

 そういって一回部室の外にでると本当にすぐに戻ってきた。何をしたんだろう?

「それでは始めましょう。城野君の人生相談!」

 一人で拍手をして盛り上げる先輩。俺はどうしたらいいのだろう? このまま本当に人生相談した方がいいのかな?

 俺が頭の中でいろいろと考えている間またしても沈黙が続く。

 先輩の目がキラキラと輝いて、はやくはくと催促しているように見える。いや、この先輩は催促しているのだろう。

 しかし先輩も沈黙に耐えられなかったのか、先に口を開いた。

「緊張しちゃいますわよね。わたくし先輩だし、異性だし。彩耶乃のおねーちゃんだし!」

 若干おーちゃんの部分を強調する先輩。美祢は関係ないだろと思ったけど姉妹の設定だったな。姉に妹との恋愛を相談するのもおかしいということか。

「彩耶乃とデートどこに行くのかで悩んでいるのかしら? それとも彩耶乃がちっとも甘えてくれなくて寂しいのかしら?」

 『そうねー』とか言いながら先輩が勝手に俺の悩みを作っていく。こうなったら先輩はきっと俺のことなんて全く見えて無いんだと思う。

 可愛らしく悩んでいる先輩を眺める俺。なんだこの状況。

 いつもだったら何人かでわいわい喋ってる時間なんだけど。それに加えて今日は、授業中に騒いでた美祢が先生にこっぴどく叱られているせいで一緒に来てない。もちろんいつもは一緒だ。

 だから先輩と二人きりなんて今までなかったので俺的には結構気まずい雰囲気だ。

 さっきからこの相談ごっこ終わらせたいから誰か来ないかなと期待しているのだが、こういう日に限って誰も来ないものなんだよな。

「先輩って旅行部作って何がしたかったんですか?」

 あまりの沈黙に俺の口から本音が出ていた。なんかよくある、あっ今なら言えるタイミングみたいなやつだ。

「どうしたのかしら? 急に」

「えっ? どうしたのかしらじゃなくて相談じゃなかったんですか?」

 俺も突然真面目な質問をしてしまったので、先輩を困らせてしまったかなという気持ちはあったが、いつも困らせられてたから多少は許してくださいと思った。

「城野君って変わってるわね。そういう変なところを考えるんですのね。アッキーもカツ君も何も考えずにわたくしに着いてきてれたんですの。まぁゆかちゃんにはいつも言われてましたけど。オホホ。でも後輩である城野君がわたくしの悩んでいたところをズバっと指摘するとは思ってもいませんでしたわ。これはわたくしの相談かしらね。オホホ」

 真面目に、言葉を選びながら話し始めた先輩に正直ちょっとびっくりした。

「正直な話、わたくしはみんなとワイワイ楽しく過ごせる場所があれば嬉しいなと思っていたの。そしてその場所を旅行部という形で実現したのよ。アッキーもカツ君も何も言わずにわたくしのワガママに付き合ってくれて、ゆかちゃんはいろいろ言いながらも付き合ってくれて、感謝していますの。わたくしが作った旅行部にあななたち新入生も入ってくださってわたくしものすごく嬉しかったのと同時に、今までどおりの活動でいいのかな? とちゃんと考えましたのよ」

 まさかの先輩の悩み相談になってしまった? 俺はちょっと焦ってしまったが、遠賀先輩が抱えているものがなんとなくわかった気がした。

 勢いで作ってしまって今までは何も考えずに好き勝手やってた中に俺や美祢が入ってきてちゃんとしなきゃって考えたんだろう。

「それにね、ずっと言われてましたの、ゆかちゃんに。何をやるかもわからない部活を部にはできないし、もちろん同好会にもできませんって、はっきりと。でもねきっとゆかちゃんがいろいろ頑張ってくれて部室を分け与えてくれるようにやってくれてたんだと思うの。だってそうしないと部でも同好会でもないのに部室が与えられるわけがないから……ゆかちゃんにはもう感謝しても感謝しきれないし。だからねわたくし、新入生である城野君と彩耶乃が入部していただけたし、ちゃんと旅行部を旅行部らしくしようかなって考えてましたの。でも今までの空気を壊すのも怖くて……」

 先輩本当にいろいろ悩んでたんだ。それと同時にいつもは変な先輩だけどしっかりしてるとも感じた。

「先輩。大丈夫ですよ。今までみないな空気のまま旅行部を作っていけばいいんですよ。別に俺と美祢はまだ旅行部が何をやるかもよくわかってないので、俺は旅行っぽいことができれば個人的にはすごく楽しみです。もちろん今でも楽しいですけど名前に惹かれて入部を決めちゃったので。実は俺、旅行部が何をやってるのか本当にわからなくて、正直どうしようか悩んでました。でも今日の先輩の話聞けて俺旅行部でちゃんと楽しめそうです。これからもよろしくお願いしますね」

 先輩が首をかしげる。

 だいたいこういう時は変なことを言い出す前兆だ。きっと俺の言ったことを理解してない可能性がある。結構俺今、本音でいろいろ言ったよ。

「城野君はもう旅行部の正式部員ですわ。辞めるとかはなしですわ!」

「なんか今の感じの方がやっぱり先輩っぽいです」

 ちょっと怒り気味の口調の先輩。表情もちょっぴり怒ってるように見えなくもない。

 先輩はちょっと怒った感じも可愛らしい。

「そ、それはどういうことですの? まぁいいですわ。今日話した内容はみんなには内緒ですわ。こういうお話すると疲れますわ」

「わかりました。内緒にしておきます。桃花先輩」

 わざと下の名前で呼んでみると面白いように反応してくれた。きっと嬉しいんだろうなという感じが溢れている。ソワソワしてるけど、頑張って普通にしてますっていう変な風に見える。 

「う、うるさいですわ。ノ、ノブ君。今日からわたくしノブ君って呼びますわ! だからノブ君もわたくしのこと桃花先輩って呼ぶことですわ」

 俺は軽くハイハイと返事をすると、桃花先輩ももう相談ごっこは終わりですわと話を強引に終わらせた。

 そのあと二人でお菓子を食べたり氷も溶けきってミルクとコーヒーの部分が二層に分かれてるコーヒーを飲んだりしながら時間が刻々と経過した。

「今日ってみんななんで来ないんですか?」

 俺の一言にしまったというわかりやすい表情で桃花先輩が部室のドアを開けた。外にはみんなが立っていた。なぜ入ってこなかったんだろうと考える間もなく答えが見えた。

 どうやらドアノブに入室禁止ってぶら下げてたらしい。何故そんなものまで用意していたのか。

「頼みますよ、桃花先輩!」

 俺はさっそく言われたように名前で呼ぶと、桃花先輩は面白いように慌てている。

「何々? お前らなんかあったの?」

「ちょっと城野君どういうこと? 私というものが居ながらおねーちゃんになにしたの! しかもさっきなんでおねーちゃんのこと下の名前で呼んでるの!!」

 日田先輩の言葉に美祢が面白いように怒ってる。お前よく設定とかで本気のようになれるよな。本気? まさかね……

 何はともあれ旅行部で頑張ろうと心に決め、桃花先輩を助けようと決めた。

 新しく部活を作り上げるというのはこれはこれで面白そうだ。


役員面接なるものをしました

久しぶりに胃が痛くなるほど緊張しました

こんな下っ端を捕まえて何をするのかと思いましたよ

大好きなゲームは相変わらず祈って祈ってもう禿げそうです

ではまた次回。。。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ