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第52話

今回ちょっとセリフが多いです。

 教室の中に一歩一歩ゆっくりと入ってくる烏丸先輩の存在に1年2組のクラスメイトも気がついたようだが状況はよくわかってない。俺も今なぜ前生徒会長である烏丸先輩がこの教室の中に入ってきているのかわからない。

 旅行部メンバーと烏丸先輩の間の空気が明らかに他の教室の生徒の空気と違う。いや、どちらかというと旅行部側の歓迎してない空気を烏丸先輩は笑顔で受け止めている。そんな感じの状況だ。だが冷静に分析しても意味がわからないものはわからない。

「もう、そんなに怖い顔しないでって言うのも無理があるわよね」

 そんな事を話しながらゆっくりと近づき桃花先輩の向かいの椅子に腰掛ける。

 桃花先輩はこの状況をもちろん歓迎できないようで、あからさまに嫌そうな顔をして正面に座り見上げる形の烏丸先輩から顔を背ける。

 その顔を背けたままの状態で物凄く低いテンションでボソボソと喋り始めた。

「で、なんですの? あなたが暇を持て余してここに来るようなことなんてないでしょう? さっさと終わらせてくれませんこと? わたくしはあなたと友好的な関係ではございませんでしてよ」

 桃花先輩直球だなというのが率直な感想で全く嫌そうなこところを隠そうとしない。いや、苦手なんだな。いつもの余裕が全く見当たらない。

「まぁまぁ焦らないで。ちょっとお話しようと思ってね」

 烏丸先輩の言葉に思いっきりため息で返事をする桃花先輩はさらに、

「わたくしはセンパイとお話することはありませんわ」

「まぁそういうことならしかたありません。独り言でもつぶやくとしましょう」

 桃花先輩からその手の言葉が来ることを読んでいたような間髪入れない返事。まぁ予想することは難しいことではなさそうだ。だって俺でも予想できそうな言葉だし。

 烏丸先輩はそう言うと席を立ち腕を後ろに組みゆっくりと教室の中を歩き始めた。

 桃花先輩は面白くなさそうに机に腰掛ける状態から椅子に座り直して頬杖をつく。しかし目線は烏丸先輩を追っているようでやっぱり気になるのだろう。当たり前だ。この状況で烏丸先輩が気にならないのは美祢くらいだろう。

「さて、どこから話し始めましょうかね」

 ゆっくりと歩いていた動きを一度止め、後ろに回していた手を今度は頭に当てて思い出すような仕草に変えて再びゆっくりと歩き出す。

「色々とあるのだけれど、まずは直接的な所から話しましょうかね。旅行部の廃部についてですね」

 いったん間を取ってそして続ける。

「あなた達も仰ってたとおりいきなり即廃部ということなんですが最初はもちろん廃部じゃなかったんですよ。先生方と組合と生徒会での話し合いで今年中を目処に休部という形をとろうという方向で話は進んでいたんですがいくつか別の意見ももちろん出ました。まず一つ目ですが休部になっても創部前にいろいろとやらかしていた旅行部が休部という形になって果たして意味があるのかという意見。ですがそこは部室を使用禁止にすればというとりあえずの意見でまとまりかけていました。まぁ今現状こういう形になっているのでそうなっててもあまり意味が無かったかもしれませんね」

 その言葉に黙るしかない俺とベガと面白くなさそうな桃花先輩。話すことなんて無いといいつつも話はやっぱり気になるのかちゃんとしっかり聴いてるようだ。

「二つ目の意見がわたしも驚いたのですが、まず最初に投票箱に旅行部についてという形で入ってた誰が意見したのかがわからないものだったのです。そしてその意見について話し合いをするときに2名席をわざと外していただいたのです。それは四辻さんと小森江君です。意見の内容は新たに旅行部が創部されましたが生徒会と組合のどちらも居る部活は大丈夫なのでしょうか? そういう形だから好き勝手やっていたのでしょうか? そしてこれからはもっと好きなように出来るでしょうか? というような感じの内容の意見書でした」

「ちょっと! それはどういうことですの!?」

 桃花先輩が大きな声で発言しながら机を叩いて立ち上がる。いきなり大きな音が出て教室が静まり返る。

「私の独り言です。とりあえず最後まで聞いて下さる?」

 その一言で桃花先輩が制されて席に着きなおす。

「実は生徒会と組合の生徒が同じ部活にいるということは別に前例がないことはないんですが、創部前から旅行部の評判が評判だったので……そういう意見が……」

 桃花先輩が再び立ち上がりそうなくらいの感じで唸っている。

「まぁ私はこの意見に対して旅行部がそこまで考えてるとは思わなかったので……だから四辻さんと小森江君を話合いの席から外れてもらいました。変に意識して欲しくなかったですし、すでに小森江くんは組合長になってましたから」

「ちょっと待って! じゃあ今!」

 黙って聞いていたベガも桃花先輩と同じように立ち上がったがやっぱり烏丸先輩に無言で制されて再び椅子に座らされた。

「そう。実は今想定外のことが起こってるの色々と。わかりますよね? 生徒会は四辻さんを副会長からの構想を外そうとしていたのだけれどまさか四辻さんが会長に立候補しちゃうとは思わなかったし当選しちゃうとも思わなかったのよ。そして美祢さんよ。また旅行部から生徒会メンバーが誕生しちゃったわけ」

 その言葉を聞いて俺は自然と頭を抱えてしまいベガも首を振っている。そして桃花先輩は苦笑いを浮かべている。

 話の途中だが俺も気になったことが、今の先輩の話だとどうして廃部になるんだと。その疑問をぶつけてみた。

「先輩、じゃあどうして廃部という流れになったんですか?」

 俺は桃花先輩やベガと同じように話を最後まで聞けと無言の圧力を喰らうかと思ったのだがそうはならなかった。

「そこはね……」

 ひとこと言って烏丸先輩は何故か桃花先輩をジッと見た。どういうことか意味がわからない。桃花先輩も意味がわからなかったようで機嫌の悪いまま視線を跳ね返している。

「提出してもらった部活動計画書で旧組合長や一部の先生が休部にしても廃部にしても変わらないのではないか? という意見がでたの。

 その言葉を聞いて俺は桃花先輩を見るとさっきまでの怒りモードは何処へやら。

「先輩、何て書いたんですか?」

「え? えっと……嘘は……書けないですわ」

 どうしてそういうところで真面目になっちゃうんですか。廃部がかかってるんなら嘘でも何か活動書いてくださいよ。もう今言っても仕方がないですけど。

「まぁまぁ、そこは私も嘘でもいいからもっと書いてよとは思いまし、四辻さんに書き直してと言ったけど四辻さんはこれが旅行部だからって断られちゃってね。それが結局廃部ということになっちゃったんだけどね、ただ廃部になるんだったら生徒会の意見として廃部にすることにしたわけ。これは私がねそうしたの。この学校って変わってて生徒会って他の学校みたいに責任みたいなのがあんまり無かったりすのね。まぁ他の学校のことはそんなに詳しくはないんだけど、実は組合の方が普通の学校の生徒会みたいな事をしてるの。だから私はこの学校の生徒会もちゃんと学校に意見するし組合の言いなりみないなところが実はあるんだけどそうじゃないっていう事を後輩に見せるために私が廃部っていう宣言をして受け入れてもらったっていうことなのよ。ここまで喋っててあれだけど今四辻さんと小森江君は旅行部に組合長と生徒会長がいるっていう形になっちゃってるよろしくない状況を知らなくて旅行部を復活させようと話し合いを重ねてるのよ」

 本当に独り言のように淡々としゃべり続ける烏丸先輩。

「恐らく新生旅行部は復活できるでしょうから……」

 この言葉を聞いた桃花先輩は思わず聞き返していた。

「どうしてそんな事がわかるんですの?」

「だってその二人が全く何も知らない状況で必死に旅行部を戻そうと部活動計画書を書いて先生たちと話し合いに参加してるのよ。組合長と生徒会長が協力してるのよ、部活は全く別物と言わんばかりに……そんな姿先生たちも見てたら最初から廃部はやりすぎっていう意見があったぐらいだから。それに私は先生にはきっと旅行部は復活させようとしてくるから、ちゃんと部活動計画書も立て直すはずだからちゃんと見てあげてくださいとは言ってますから」

 烏丸先輩の言葉を聞き逃さないように真剣に聞く。自分は喋ってるわけじゃないのに喉がカラカラになっていることに気がついてつばを飲み込んだ。

「あーたくさん喋ったら喉が渇いちゃった。じゃあ私の独り言はおしまい。お邪魔したわね」

 そう言って教室を出ていこうとする烏丸先輩。手なんか振っちゃってる。

 相変わらず桃花先輩は面白くなさそうに頬を膨らませたままだ。

 先輩が帰ってしまう前に俺は一つ聞いてみる。よくわからないことが。

「あの、先輩って結局何がしたかったんですか?」

 教室を出る前に俺の言葉が届いたのか振っている手もピタリと止まった。

「そうね。まぁ生徒会にも昔色々あったっていうことと、旅行部が楽しそうだったっ所を見てたってことかな」

 それだけ言うとこちらを向かずに教室を出て行った。



 そして次の日烏丸先輩の言ったとおり本当に旅行部の復活が正式に決まり以前と同じ部室を使えるようになった。

 烏丸先輩が何をしたかったのかは結局わからないままだ。

 復活翌日にはさっそく部室にゆかり先輩以外が集合している。ゆかり先輩も後で部室にはやってくるとのことなので久しぶりにみんな集合だ。

 以前と違うのは部室にまだ物が全然何もないのだ。

 俺とゆかり先輩が一度立ち入ったきりずっと放置されていたプレハブ小屋は埃っぽくなっていたのでみんなで掃除をしていると丁寧にノックされる。

 きっとゆかり先輩だろう。

 こちらの返事を待つ前にドアが開くとやっぱりゆかり先輩の顔が見えるが何故か困り顔だ。しかもすぐに入ってこない。

 まだ何か問題ごとでも起きたのだろうか?

「あのー」

 いつもどおりの小さな声だけど物凄く困った感じだ。

「新入部員を連れてきたんですが……」

 ゆかり先輩の言葉を聞き間違えることはないのだがどうして今この時期に新入部員? まさか1年2組のクラスメイトかな? 何て考えていたらひょっこりとゆかり先輩の後ろから知ってる顔が。

烏丸 里沙(からすま りさ)3年生だけど卒業までよろしくね」

 部室にいる全員が固まっていた。

今回も読んでいただいてありがとうございます

初作品を初投稿してから1年たって自分でもびっくりです

毎週土曜日に更新してましたがちょっと無理やりな時もあったので自分のペースの更新にしようかと思います。

不定期になりますがまぁ気長にお付き合いください。目安としては月に1、2話くらい書くつもりですがクオリティは今より上がるように楽しく書くつもりですので

そして旅行部はまだまだ続きますので

ではまた次回。。。

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