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第51話

 俺たちが自分たちに何ができるのかを模索している間に生徒会長選挙が終わった。

 結局ゆかり先輩に何もすることができなかったのだが、今全校集会で新生徒会長が全生徒の前でスピーチをしている。

 そう、生徒会長選挙の結果はインパクトの差なのか面白がっているだけなのかはわからないのだがゆかり先輩が会長の座についたのだ。

 そしてそんなゆかり先輩は生徒会長の座を争った四条さんを副会長のポジションに任命したようだ。普通じゃありえないけど最初からゆかり先輩はいろいろと考えていたのかもしれない。新会長としてのスピーチの途中に異例のお願いをしたわけだし。

 しかし今回の生徒会長選挙で驚いたことはゆかり先輩が生徒会長になったことも驚いたのだがそれ以上に驚いたことがある。生徒会役員のメンバーが壇上に上がる時にそれは起こった。

 舞台の袖から一人ずつゆかり先輩を先頭にぞろぞろと生徒会の生徒が歩いて出てきた時なのだが一番最後に入場した生徒だ。

 俺は二度見した後に目をこすってもう一度よく見てみた。

 間違いない。

 美祢が居るんだ。

 そして俺は自分のクラスの列に美祢が居るかどうかも確認するために前を見て後ろを確認した。


 居ない。


 つまりあれは美祢だ。

 それでも生徒会の中に美祢がいることが意味不明すぎたので4組の方をみるとベガがいた。ベガもびっくりしているようでキョロキョロとしていた。そして俺と目があった。

 どうやらあれは美祢で間違いないらしい。

 美祢がどうして生徒会役員のメンバーとして壇上にいるのがわけがわからなかったのだがベガもよくわからないようで首を振っていた。

 つまりベガも何も聞いてないということだ。

 まぁこれは後で問い詰めないといけないな。

 驚きの連発だったが最後は何故か美祢が持っていったような形になったが無事? 生徒会長選挙が終わったのだ。



 放課後1年2組の教室では旅行部のメンバーと1年2組のクラスメイトでゆかり先輩の新会長就任祝いが行われていた。

 とにかくうちのクラスメイトはノリがいい。まぁあれだけこの教室で部活やってるわけだから他人事ではなかったんだと思う。

 それだけ一緒になって騒いだりしてた割には誰も旅行部に入ろうとはしないのはそういうことなのだろう。ちょっと残念で寂しいけどちゃんと活動し始めて……も入部希望する人は変わってる人になっちゃうな。自分で言ってなんだけど。

 全校生徒の前ではしっかりとスピーチをしたゆかり先輩であったが、今1年2組の教室でのスピーチは俺たちがよく知っているゆかり先輩に戻っていた。

 みんなの視線を集めると顔を真っ赤にして恥かしがり、そして声が小さくなっていき時折かすれ気味になっておびえているいつものゆかり先輩。

 今この光景を見ていてふと疑問が湧いてしまった。あの全校生徒の前でのゆかり先輩のスピーチはなんだったんだろう。俺にはかなり堂々と喋っているように見えた。

 今のような怯える子犬のようにはなっていなかった。視線は今の何倍も多かったはずなのに。

「ノブくんが不思議がるのもしょうがないですわ」

 俺はよっぽどゆかり先輩をみながら疑問を浮かべている表情だったのだろう。いきなり桃花先輩が喋りかけてきてびっくりした。

「実はですね、あのスピーチにはカラクリがあったんですのよ」

「もしかして替え玉ですか?」

 桃花先輩の話を遮ってちょっとボケてみただけなのにすごい睨まれた。

「ノブくん、話は最後まで聞くんですのよ! まぁカラクリといっても全部カンペを用意しておいてそれをゆかちゃんは読むだけ。あとは顔は上げたままで目線はカンペに向けて読む練習を積んだんですわよ。これでゆかちゃんはそのことに必死になって人の視線を気にする余裕がなくなってたんですわよ。結局は意識の問題ですわ、人に見られてると緊張するっていうのはそれだけ見られてるということや緊張するっていうまだ余裕があるんですわよ」

 途中から何を言ってるのか意味不明だったけどなんとなくいろんな場面を体験してるのかなと思ってしまった。

 だから今のスピーチは想定外でなんの準備もないから全てアドリブとなるので言葉が出てこなくて恥かしがってるということか。しかし桃花先輩の言葉の通りだと恥ずかしがる余裕はあるということなのか。

 まぁ人は急に成長するなんてことはないよなと思いながらも、それでもゆかり先輩は生徒会長になると人前に出ないといけない、つまり苦手なこととわかっててもそれに挑戦するというのはすごいなと関心しっぱなしだ。

「そうですわね。ゆかちゃんは本当に頑張ってますわ。人前に出ることすら苦手なのに。そしてそれがあと1年続くわけですわよ。ゆかちゃんにとっては一番苦手なことといっても間違いじゃないことですわ。でもきっと1年後のゆかちゃんは成長してると思いますわ。わたくしも負けてられませんわ」

 ゆかり先輩の話にいつの間にかベガも加わって首を何度も縦に振っていた。

「ゆかり先輩はすごいと思うんだけどさ、あっちはどうなのよ?」

 ベガの言うあっちとはゆかり先輩の隣で何故かずっとドヤ顔をしているあいつだ。一応俺の彼女の設定になっている問題児だ。

「ねぇ、どうして城野黙ってたのよ。美祢が生徒会に入ってるならひとこと言ってくれてもよかったじゃない? 私すごいビックリしたんだけど!」

 ベガの言葉で思い出した。俺も美祢を問い詰めないといけないことを。なのでベガの言葉は訂正しないといけない部分がいくつかある。

「ちょっと待て。俺だって知らなくてビックリしたんだから」

「あーそれはわたくしもビックリでしたわ。彩耶乃がどうして生徒会役員になってるのかしらって」

 そういう桃花先輩は全然ビックリしたようには聞こえなかった。

 そして誰も知らなかったのかよと。せめて桃花先輩は知ってると思ったのだがそれも無かったようだ。

 依然教室の前ではオロオロしてるゆかり先輩の隣でニコニコしてる美祢が。

 まぁ美祢が何を思って生徒会に入ったかは大体想像が着く。おおよそゆかり先輩の手伝いやら手助けをするためにとかそんなところだろう。

 それをすぐに行動に移せるのはすごいと思う。美祢の場合は考えるよりも先に体が動いてる。

 結局新生徒会長はみんなの前で顔を真っ赤にして固まったまま動かなくなってしまった。きっと桃花先輩の言うとおり余裕がなくなった(・・・・・・・・)のだろう。これが全校生徒の前じゃなくてよかった。ちなみに美祢はそのゆかり先輩の隣でフォローしようとオロオロし始めていた。



 ゆかり先輩の生徒会長当選祝いから数日後。普通通りの旅行部の活動が続いていた。

 しかしメンバーは以前よりも寂しくなっている日々だ。

 ゆかり先輩と美祢はバイトと生徒会。小森江先輩は生徒組合に出ることが多く旅行部の活動、つまり1年2組に放課後現れることが少なくなっていた。

 そして毎日の会話には桃花先輩の口から文化祭という単語が出るようになっていた。

 さらには呪文のように、

「部活のことはゆかちゃんを信じてわたくしたちは文化祭の準備をしましょう。今年も楽しみますわよ。うんそうですわ! 楽しみますわ」

 自分に言い聞かせてるように聞こえるのはきっと気のせいではないだろう。だって普段桃花先輩ってこういうことはあまり言わないので明らかにおかしい。

「先輩、もしかして部活復活で何かうまくいってなかったりしますか?」

「ど、どうしてですの?」

 明らかだ。もうこの返事が上手くいってないと言ってるようだ。

「別に旅行部復活してもそんなに変わらないっちゃ変わらないと思うんですけどって先輩焦りすぎですよ」

「変わらないってどういうことですのよ!」

 頬を膨らませて怒ってる。全然怖くない感じで怒ってる。そうこれは桃花先輩のわたくしは怒ってますアピールの時の顔だ。

「でも変わんないよね。ここで話すか部室で話すかでしょ? たまにへんてこ旅行することができなくなってるけど」

「ま、まぁ姫ちゃんは部室で話すことになるとここのクラスの方々と喋れなくなっちゃいますしね。おほほ」

 ベガはベガで図星を指されてあからさまに動揺し始めた。なんで急にケータイをいじり始めるのか、わかりやすすぎるだろう。

「まぁ実を言うとそうですの。ゆかちゃんの話だと旅行部のメンバーが問題というようなニュアンスで言ってまして困ってましたわ」

 桃花先輩の言ってることがふわふわとしすぎて何を言いたいのかよくわからなかったのだが、桃花先輩自体もきっとそういうニュアンスで聞いてるのだろう。

「そう! メンバーが問題なんですよ」

 いつからそこにいたのか教室の入口で旧生徒会長の烏丸先輩が立っていた。

 その声を聞いた桃花先輩の顔があからさまに嫌そうな顔に変わった。敵対心丸出しだ。そう全く隠そうともしていない。

「なんでございまして?」

 そしてトゲのある言葉と友好的でないことを提示するような口調。

「まぁまぁそんなに怒んないでよ。ホントあなた達はどうしてこう裏目裏目の行動をしちゃうのかしらね? そしてこんなところで集まって無い部活をやってるんじゃないわよ」

 溜息をつきながら教室に入ってくる。

「部活じゃないですわ。ただのお喋りですわ」

 桃花先輩の精一杯の屁理屈に苦笑いの烏丸先輩。俺から見た烏丸先輩には夏のときのような嫌な感じがしないのは気のせいなのかな?

 一体旧生徒会長が現れてなんだと言うんだろう。ここに来るということは旅行部のことだろうし……

暑い中読んでいただいてありがとうございます。

ホントおかしくなるくらい暑い毎日ですよね。

湿度が高くて体がベタベタして気持ち悪いです。

あっさりと新生徒会長になっちゃったゆかり先輩ですがこれから苦難も増えそうです。

いろいろと気になる終わり方になっちゃってるつもりですがまた来週。。。

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