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第48話

 ホームルームが終わり無事放課後を迎えた。俺はどのようにゆかり先輩を応援するのかを確認しようと企画者の美祢に確認しようと席を立つ。

 だが美祢の姿はすでに席に無かったので教室を見渡して見た。しかし居ない。

 俺が美祢に声をかけようと思い席を立ったのはホームルームが終わったと同時だったはずだ。確かにホームルームに美祢は居た。ということはホームルームが終わって一瞬で姿を消したということか。

 本当に美祢は落ち着きが無いな、どうなってんだと呆れてしまうこともなく慣れてしまった。悲しいことに。

 居ない美祢に確認はできないので早く誰か来ないかと待ちながら教室をぼーっと見渡している。いつもよりもみんなの帰りが早い気がする。すでに半分以上のクラスメイトが教室から消えている。ゆかり先輩を応援しようかとそういう日に限ってだ。いつもならば部活に行く準備やらでまだクラスメイトが教室でざわついているはずだ。いつも旅行部のメンツが揃い騒ぎ出す時間になっても今の教室よりは人数的にも盛り上がってるはずだ。

 今日って何かあったかな? とちょっと頭をよぎるがみんながみんな揃いに揃って下校するような都合の良いイベントなんて無いはずだ。

 クラスメイトの数がどんどん減って心細くなって行く中でベガが当たり前のように教室に入ってきた。ちょっと、いやかなり安心した。ベガは1年2組のクラスメイトと当たり前のように挨拶を交わしている。

「すまんな。美祢がどこか行ってしまったんだ」

 俺はベガが近づいてきてすぐにこの事を知らせた。

「さっきすれ違ったけど先輩呼びに行ったんじゃない? それとなんでアンタが謝るの?」

 美祢のことで何故か謝ってしまうのは癖になっているのかもしれない。自分でも疑問にも思わなくなっているほどの現象だ。正直怖い。

 それからベガとなんでもない話をしていると日田先輩と桃花先輩も揃ってやってきた。

 少し遅れて小森江先輩も教室に入ってくる。先輩は律儀に『遅くなってごめん』と挨拶のついでに謝ってくる。

「大丈夫ですわ。まだ主役が来てないですわ」

「呼びに言ってる美祢もまだ居ないしね」

 小森江先輩の言葉に謝る必要なんてないというニュアンスを込めた二人の言葉が飛ぶ。

「えっ? 美祢ちゃんさっきすれ違ったけど一人だったよ?」

 小森江先輩の驚きの顔がだんだんみんなに呆れた表情として伝染していく。

 そんなに広くない学校だからもう連れてきてもいいくらいなのかもしれないけどどこで油を売ってるんだ。

「あいつは何やってるんだよ」

 思わず出た言葉。ホームルームが終わってから呆れっぱなしだったからついつい出てしまった。

「ほら、あんたが保護者でしょ? 連絡取りなさいよ」

「彼氏の次は保護者か。信玄も大変だな」

 ベガの言葉に日田先輩が哀れみの言葉で笑いながら心配してくれる。そんな日田先輩の言葉にどっと笑いが起こった。俺も釣られて笑う。もう呆れ笑いだ。

 俺のカラカラに乾いた笑いが響く。

 みんなが俺と美祢のことを好き勝手言ってるが、もう俺は美祢にメールを打つことに集中したので聞こえない。

 必死に打ったメールを送信して一息つくがベガがそんな俺を見て、

「メールってすぐ返事来ないよね」

 ベガの言おうとしてることはわかる。確かにおっしゃるとおりだ。

 俺は携帯の画面をジッと見つめるが何も変化は起こらずに時間だけが経過して画面が真っ暗になった。

 電話をかけろっていう意味だよな。わかってるんだけど美祢に電話するっていう行為が何か負けた気がするというかあいつが調子に乗るから正直ムカつくんだよな。

 そう思いながらも携帯電話の電話帳から美祢の名前を選択してコールする。しぶしぶだ。

 何度かコールしても出る気配がないので一旦切った。この様子だとメールも読んでないだろうな。

「出ないな。何やってんだ?」

 わざとらしく声に出した。俺の中ではみんなに助けを求める声のつもりだ。

 誰か変わりに私もかけてみようか? とか言ってくれるかななんて期待してたがこのメンツでそんな助け舟が来る訳もなく、

「そもそも彩耶乃はゆかちゃんを迎えに行ったのかしら?」

 先輩の恐ろしい言葉まで飛び出す始末だ。だが先輩の言うとおり美祢がゆかり先輩を迎えに行ったということを確認したわけではない。むしろ美祢だから全然関係のないことをしている可能性もある。

 だが、だとしたらこんな時にどこに行くっていうんだ? 美祢がゆかり先輩を応援しようと言い出したのにそんなことすら美祢は忘れてしまうというのか。ありえるから怖いのだが。

 普段からフラフラしてるしじっとしてないし何を考えているのかもよくわからないから先輩の言うとおり迎えに行ってない可能性というのも十二分に考えられるのが美祢だ。

 俺が頭を悩ませていると桃花先輩が電話で誰かと会話してる。美祢か? なんで俺の電話には出ないんだ。着信見たら俺にかけ返せと思ってしまった。

 桃花先輩は通話が終わった途端に体を仰け反らせて笑い始めてしまった。一体急にどうしてしまったというのか。まさか美祢はさっさと家に帰ってしまったとでも言うのか。

「ノブくん彩耶乃に電話ですわ」

 先輩に促されてもう一度美祢に電話をする。今桃花先輩は美祢と話してたということか? 繋がるからもう一回かけてみろということなのか。しかし美祢はやっぱり電話にでない。

 俺は訳も分からず桃花先輩に聞くしかない。

「どうしたんですか? 先輩誰と話してたんですか? 美祢じゃなかったんですか?」

「違うますわよ。ゆかちゃんと電話してましてよ。ゆかちゃんはもう家に帰っちゃったそうですわよ」

 そんな事を笑いながら言う桃花先輩。

「は?」

 そして低く怒りを隠そうともしない大きな声が出てるのはベガだ。

「美祢ちゃんはどこに行ったんだろうね」

「さすがだな」

 ベガとは対照的に落ち着いた、むしろのんびりした感じの小森江先輩に笑いを隠そうともしないむしろ笑いながらの日田先輩。

 小森江先輩の言う通りじゃあ美祢はどこに行ったんだという話になる。みんな呆れるか笑うしかできない状況だったが俺の電話が震えているのに気が付いた。

 携帯電話の画面を見ると美祢からの着信だ。なんて言ってやろうかと思いながら電話に出る。

「城野君どうしたの? 寂しくて私と会話したくなったの?」

 俺は言葉を発する気力をすべて搾り取られた気分で何も言葉は出てこない。

「どうしたのー? おーい城野くーん」

 美祢はこちらが何も反応しないから声をかけてきているのだろうが、声を出す力を奪ったのも美祢本人なのだ。

「お前今どこいるんだよ」

 落ち着いてようやく絞り出した一言。

「何? 怒ってる? 何で何で?」

 俺の言葉が強く聞こえたのか、無意識のうちに怒りの声に変わったのかはわからないが、美祢には怒ってるように聞こえたようだ。

「今はね、職員室出たところだよ。先生にすぐに来いって呼ばれてたけど遅くなっちゃった。ちゃんと勉強しろって怒られちゃったよ。慰めて城野くーん」

 そのあとの言葉を聞いて再び言葉を失ってしまう。いろんな意味でだ。

 普段通りに喋ってるのにイライラしてしまったのもあるが、美祢が勝手にゆかり先輩を迎えに行ってると思い込んでいてその通りになってなかったというだけで怒ってしまった自分に腹が立っているというのもある。ただの俺の勘違いだったのだ。美祢には悪いなと思ってしまう。

「美祢は職員室に呼ばれてたみたいでもうすぐ戻ってくるみたいです」

「どうすんのよ?」

 現状を報告するとベガがみんなが思っていることを言った。

「まぁ落ち着くんですのよ姫ちゃん。怒ってもしょうがないですわ。また日を改めるしかありませんわね」

 解散ムードが教室に漂ったところで美祢が戻ってくる。いや、まだ戻ってきていないが騒がしいから戻ってきているのがわかるだ。

「ゆかちゃん先輩頑張ってーーーーー」

 パーーーーーン!!!

 叫びながら入ってきたと思ったらなんだかよくわからない大きな音が鳴る。美祢の手元からいろいろと飛び散っているものを確認してクラッカーと認識する。

 みんなクラッカーの音にびっくりしているが美祢もびっくりしている。

「なんでアンタがびっくりしてんのよ」

「あれ? ゆかちゃん先輩は?」

 美祢は状況を知らない。ゆかり先輩をサプライズで励ましたつもりだったのだろうか?

 だがその主役(ゆかり先輩)が教室にいなくて驚いたのか? それにしては教室の中で一番驚いてるかもしれない。

「おーいなんださっきの音は? って旅行部か。集まってないで早く帰れよ。部活禁止期間なんだからな。お前たちは部じゃなくても早く帰って勉強しろよ」

「はーいですわ」

 桃花先輩が机の上に腰かけたままだが聞き分けよく手を挙げて先生の言葉に対応している。

 俺は今のやり取りで今日から部活禁止期間だったことを思い出した。だから今日はみんな帰るのが早かったわけだ。

「じゃあこのまま勉強会しようよ!」

「アンタにしてはナイスよ!」

 美祢の言葉にベガが嬉しそうにしている。

 放課後はまだまだ終わらないようだ。

読んでいただいてありがとうございます。

いつも自由な旅行部、そしていつも自由な美祢です。

今週はどんな話を書こうかなーなんて毎週考えてます。

来週も楽しいお話をかければといろいろ試行錯誤。

ではまた来週。。。

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