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第44話

 『桃花先輩とは二人で話したほうが真面目モードでちゃんと話しをしてくれるから』これがゆかり先輩からいただいたアドバイスなのだが、思い返して見るとそんな気がしないことも無い。だが二人きりでもふざけている桃花先輩の光景も浮かんでしまうのでこのアドバイスを『はいそうですか』と聞き入れることは少し考えないといけないかもしれない。

 それでも人数が多ければ多いほどふざけると言うよりも楽しそうにする桃花先輩の光景が簡単に想像できてしまったので二人きりになることがいいのかもしれない。

 そう考えると真面目な話は二人きりの時にしたほうがいいのだろうと考えるのが一番だろう。普通に考えて真面目な話をみんなの前で、しかも騒いでいるような時にするよりも静かに二人で話すほうが言いに決まってる。

 だがここで問題もある。今、絶賛廃部中の旅行部は部室がない。つまり二人きりになることが全くと言っていいほどなくなったのだ。

 以前は部室で二人っきりになることが多々あったのだが、今は1年2組の教室に集まっているから美祢が常に居るし、ベガも放課後すぐに集まってくる。それに1年2組のクラスメイトが常にいる状態だ。

 二人きりで話したほうがいいことは十分承知なのだがその状況が作れないことに気がついたのだ。

 選挙まで日数はまだあるといえばある。余裕があるけれど誰が出るのかとかどうするのかを決めるのは早く決めたほうがいいという気持ちがある。それにまずこの話を桃花先輩に早くしたいという焦りが生まれているのだ。

 そんな時にということはないのだが美祢は通常運転。

「ねぇねぇスーパーのレジってどう思う?」

「ねぇねぇ答えてよーレジだよレジ」

 焦っている時というのは心に余裕が無くて美祢の謎の行動や言動にいちいちイライラしてしまってついキツくあたってしまった。

「ちょっと美祢うるさい。レジがなんだってんだよ。レジがどうしたんだよ」

 珍しく美祢がオロオロとしてそしてみるみる小さくしぼんでしまった。

「ちょっと聞いただけなのに……」

 小さな声でつぶやいて明らかに落ち込んでいるように見える。

「城野! 急に大きな声でどうしたの? 美祢がビックリしちゃってるじゃん」

 きっと美祢はビックリじゃなくて落ち込んでいる。今は無理やり笑ってるけど目が泳いでしまっているのですぐにわかってしまった。

 美祢にあたるとか何やってるんだよ俺。っていうか何がしたいんだよ俺。

 ベガも心配なのか声をかけてくれてようやく少し落ち着いて自分を取り戻すけど今の状況が見えて凹んでしまう。これ俺が作った重い空気だよな。

 俺は何一人で空回りしてるんだよ。

 焦ってばかりで自分をちっともコントロールできてない。そんな自分に凹んでしまう。

 美祢は怯えてしまってるように見え、俺は一人で凹んで、そんなふたりの作る空気にベガも落ち込んでいるように見える。



 次の日の放課後、美祢が珍しくすぐに帰ってしまった。

 ベガが教室にやって来る前にはすでに姿がなかったのでいつもどおりやってきたベガが美祢を心配していた。

 俺には『あの子もたまには用事があるのよ』とか言ってたがどう考えても俺を慰めているようにしか聞こえなかった。

 この日は結局桃花先輩も来なくてベガとずっと二人で過ごすだけだった。



 そして美祢は次の日の放課後も早々と教室から姿を消していた。



 俺はずっと考えていた。どうして美祢はすぐ帰ってしまったのだろう? ベガが言ったとおり用事があったのだろうか?

 しかもタイミングよく2日連続で?

 結論はこの結論にしか達しない。


 俺が八つ当たりしたから美祢は怒ってる。


 当たり前だ。美祢は普段から意味不明なことを言ってるけど、俺の気分がちょっと焦ってイライラしてたから八つ当たりという形で美祢にあたってしまったのだから。そりゃ普段ほとんど怒ったりしない美祢も怒るだろう。もしくは悲しむだろう。

 俺の頭の中では桃花先輩と二人っきりで話すのにどうしようっていうことだけ考えててただ一人焦って空回りしてるだけ。

 ホント何やってんだよ俺。

 こうしてまた凹んでしまって重い空気を漂わせてしまう。

 やっぱり謝らないといけないよな。でもこの2日間放課後すぐに姿を消している美祢だけど休み時間や昼休みには普通に会話してくれるのがよくわからない。本当に俺から見たら普通の美祢なんだ。

 だからあれ? 怒ってない? って思ってしまう。今日もそうだったんだけどやっぱり放課後には早々と姿を消してしまったのだ。

 もしかしたら美祢は気分屋っぽいところがあるから旅行部のことが飽きちゃったのかな? なんて考えたりもした。あんなに入学してすぐの時は旅行部旅行部言ってた割には廃部になっても特に反応はなく普通だったし。

 それに最近はカップル設定も微妙だしね……って何考えてるんだよ俺。別にカップル設定は無くなっていいことだよな。この設定のせいで全校生徒にもわりと名前が知れ渡ってるどころか先生たちにも覚えられてるくらいだ。一度も授業を受けたこともない先生もだ。

 それでも、それでも美祢が居ない放課後に物足りなさを感じてる自分がいることも本当のことだ。自分の気持ちなのに複雑な気持ちになってしまう。



 俺って美祢が好きになってしまってたりするのか?



 こんなことを自問自答して頭の中に『ありえないありえない』という言葉を埋め尽くしていく。

 そして今はこんなことを考えてる暇はないと無理やり切り替える。

 いろんなことを考えてたけれど今日はベガも来なくて誰一人として教室に来ていない。

 入学してすぐの旅行部に驚いたし、こんなの旅行部じゃないと思ってギャップに苦しんだのに今では毎日毎日旅行部がなくなっても活動に参加してて俺が一番参加してるかもしれないと思ってしまったりした。

 このタイミングで桃花先輩が来てくれたら最高なのになって考えてたのだだそんなに事は上手くいくはずもなく、またそんな事を期待してたからいつもより遅くまで教室に残ってたんだけど誰も来なかった。



 今日も休み時間には普通に接してくれた美祢。でも昨日までさっさと帰っていた美祢のことがやっぱり気になってた。

「なぁ美祢、お前最近部活来てないけど忙しいのか?」

 一応冷静に普通を装っていつもどおりの感じで声をかけた。

 美祢はこちらを向いて何やらイライラとするくらいニタニタとした顔をこちらに向けている。

「どうしたの? もしかして私が居ないから寂しいの?」

 物凄く声のトーンが嬉しそう。そして笑顔が弾けている美祢がいる。別に怒ってる様子には見えないからやっぱりよくわからない。

「私のことが気になって気になってしょうがないんだね。もうしょうがないなー城野くんは」

 またそんな事を一人でつぶやきながらも嬉しそうに教室の後ろをスキップしている。まさに上機嫌という感じだ。

 負けた気がしているのは俺だけだろうか? 物凄く複雑な気分だ。

 すでに美祢のペースで話が進んでいる。あぁ何だかいつも通りなだと嬉しく思う自分に悲しくなるという忙しい俺の感情が今の正直な状態だ。

「でも今日も忙しいから私は帰るねー明日は大丈夫だから!」

 元気いっぱいそんな事を言いながらカバンを持って教室の後ろの扉から颯爽とスキップをしながら帰ってしまった。

 俺は美祢も旅行部復活の為に何かやっているのか? なんて考えて一瞬でそんなわけないよなと否定した。

 でも今日の感じだと別に怒ってるわけじゃないから何かやってるのか? 気になってしまう。そしてそんな自分が悔しい。

 今日はベガも来て桃花先輩も来てと来る人を毎日確認して……毎日居るのはやっぱり俺だななんて考えて俺はもしかして暇人、すごく暇人なのか? なんて考えてしまった。

「ノブくんが変な顔してますわ。 彩耶乃が居ないからって悲しまないで大丈夫よ。だって私がいるじゃない」

 そんな事を言って何故かポーズを決めた桃花先輩に1年2組のクラスメイトが拍手している。そして拍手を送ってくれているクラスメイトに手を振って答えている。なんだこの風景。

「お前だけずるいぞー」

 なんてヤジが俺に飛んでいるし桃花先輩のおふざけトークで盛り上がっているのだが、実は俺の耳にはあまり届いてなくずっと上の空だ。

 今日の部活はずっとぼーっとしてたら終わってた。

「ねぇノブくん。この前からどうしたのかしら? お姉さんに相談してみていいのよ?」

 突然の言葉だった。

 そう言われてベガを教室に残したまま桃花先輩に手を取られそのまま連れ去られてしまった。

ありがとうございますありがとうございます。

読んでいただいてありがとうございます。

ちょっとノブがうじうじしてますがなんとか、もうすぐ楽しい活発な旅行部が戻ってくる……はず!

そして美祢の謎の行動はなんなんでしょうね。

そしてゆかり視点の話だけ書いてましたがなんとか他のみんなのあの時の視点を書きたいです。

ではまた来週。。。

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