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第41話

 部室を取り上げられてからの旅行部の主な活動は昼飯だ。だがただ集まって食べるだけじゃないのが旅行部だ。

 プールの更衣室から始まり志井先生の使っている化学準備室や夏の深夜徘徊であみだくじをした屋上へ続く扉の前の階段、そして廃部まで一直線となってしまった原因の花火をした屋上や普通に食堂で食べることもあった。別に思い出めぐりをしたというわけではない。


 桃花先輩がただその日の気分でウロウロしていただけのようだ。


 では放課後の活動はどうかというと俺と美祢の居る1年2組の教室に先輩たちも集まってぎゃあぎゃあと騒ぐ日々が続いていた。

 そう俺たちは会長が言ったみたいにただ遊ぶだけになっていたのだ。今では遊びすぎて俺たちのクラスメイトは桃花先輩や日田先輩がやってきても普通に接している。

 もちろん最初はみんな先輩だ先輩だとビビっていたのだが、人間毎日こんな日々が続くと慣れるものらしい。そして桃花先輩も日田先輩も、もちろんベガも俺たちのクラスに溶け込んでいる。ベガに至っては自分のクラスより居心地がいいらしく休み時間毎に俺たちのクラスにやってくるくらいだった。


 そんな旅行部という存在すら薄れていく日々が続いていて秋の最初の大きなイベント体育祭が先日終了した。


 もうカレンダーは10月になっていた。

 教室では体育祭で誰が活躍したとか誰がかっこよかったとか、アイツあぁ見えて意外と運動神経いいんだなとかいう話題で盛り上がっていた。


「これじゃやっぱりツマンナイですわあああああーーーーー!」


 いきなり叫びだす桃花先輩にみんな驚きはしたが、

「あぁ桃花先輩か」

「なんだ桃っちかびっくりした」

「桃ちゃんまた変な物食べたんだねかわいそう」

 今の出来事一つで俺たちのクラスの桃花先輩に対する扱いと懐き具合が見えたと思う。

「何がつまんないの?」

 律儀にベガが桃花先輩に聞いてあげている。もう俺たちのクラスメイトは桃花先輩は見て楽しむが放っておくという技術も身に着けているようだから誰かが相手してあげないとすぐにふてくされてしまうのだ。

「さすがひめちゃんですわ。今から説明しますわ」

 この前置きだけでベガの表情はお腹いっぱい、相手したことを後悔してることを示していた。それでも相手をしてあげる桃花は優しいなと思う。

 しかしそんなお腹いっぱいのベガを差し置いて桃花先輩は続けていく。

「わたくしたち体育祭でもインチキなジュースを売ったり安っぽい焼きそばやわたあめを売るつもりでしたのよ!」

「それもう文化祭じゃないですか」

「去年も本当はそうしたかったのですわ。でも体育祭の時に思いついて旅行部を作ったので今年こそと思ってたんですのよ! 体育祭もお祭ですわ!」

「復活できなかったから仕方ないですね。それにこのままだと文化祭でも何も出来ませんよね」

「そ、それは非常にまずいですわ! 困りますわ! 面白くないですわああああああ!」

 叫ぶだけ叫んだと思ったら腕を組んで教室をぐるぐると歩き始めてしまった。とうとう壊れてしまったのだろうか?

 そんなことで桃花先輩が壊れてしまうことなどないから考え事をしているのだろう。考え事をしながら歩き回るということはよくある光景だと思う。

「おねーちゃん! 今日はスペシャルゲストだよ!」

 また教室の中に騒がしい要因がと思ったら隣には本当にスペシャルゲストがいた。最近の活動に出てなくて俺の中では元旅行部の数少ない常識人と思っている人物だ。

 美祢に引っ張られる形で無理やり連れてこられたのだろう、すごく恥ずかしそうで居心地が悪そうで困惑した形で教室の外で俯いているのはゆかり先輩だった。

「あらそうですか」

 しかしゆかり先輩が登場したというのに意外にも呆気ない反応。そのゆかり先輩の反応に俺は驚いたのだがどうやらベガも驚いているように見えた。

「それよりもわたくしは文化祭で安っぽい焼きそばを作って売りたいんですのよ!」

 話を文化祭の出店の話に戻してしまった。やや強引に見える話のもって行き方だった。

 それほど文化祭の出店にこだわっているとも思えたのだが、桃花先輩があんな風に人との交流を遮る事は見たことがない。とにかくみんなと喋ったり一緒の空間に居たりすることが好きな人だと思っていた。

 ゆかり先輩も教室に入ってくることもできずに、またどこかに行くこともできずにただ棒立ちの状況で困惑している。恥ずかしがり屋なゆかり先輩だから入ってこれないことも考えたのだがこちらを見ては視線を外して俯いている。

「じゃあゆかちゃん先輩が好きな炭酸コーヒーも売らなきゃね」

 いつの間にか教室に入ってきて桃花先輩の文化祭の話に美祢も加わっている。廊下に居るゆかり先輩は放置されているのだが別にどこかに行くこともせずどうしていいのか分からない状況の様だ。

 その言葉を聞いて桃花先輩は非常に難しい表情をしている。

 そしてゆかり先輩も自分の名前が聞こえたのかまたこちらを見てそして視線を外して俯いてしまっている。

「ねぇ城野、もしかしてさ」

「いや、俺思ったんだけどさ」

 俺とベガ、お互がお互いに向かってに囁いていた。

「なに二人でコソコソとやっているんですの? 最近二人怪しいですわね。彩耶乃も……って居ないわね」

 二人でこそこそとやっているように見えたのだろう、まぁ実際こそこそやっている形になったので桃花先輩が茶化してきたのだが。

 美祢は再びゆかり先輩のところへ行き強引に教室に連れ込もうとしている。

「ちょっとゆかり先輩と話してくる」

 そうベガにだけ言って教室の外で困惑しているゆかり先輩の元へ。

「何つまらない顔してんのよ」

 そんなベガの言葉が聞こえてきた。きっと桃花先輩に言った言葉だろう。

 教室に引きずり込もうとしていた美祢を一旦落ち着かせて再びゆかり先輩を廊下へ連れ出す。美祢も面倒だが一緒に連れ出した。

「お久しぶりですゆかり先輩。元気でしたか?」

 本当に久しぶりだったので当たり障りのない挨拶から入ってみた。なんせゆかり先輩は怯えたうさぎみたいになっていたからだ。

「うん」

 ゆかり先輩が返事はしてくれたが小さくて短い返答だった。それでも最初に会った時の警戒心マンマンの声色ではなかったので安心して続けた。

「桃花先輩と何かあったんですよね? 桃花先輩が明らかにおかしいんですけど」

 俺は確信があったのでゆかり先輩から少し事情を聞いてみようと思ったのだ。桃花先輩にも聞きたいところだが体は一つだし桃花先輩って意外と頑固っぽいからはぐらかしそうだったし、一番は久しぶりにゆかり先輩と話したかったということだ。

「まぁ……」

 短い返答だったけどこの返事は肯定ってことだろう。確信があったので俺はさほど驚かなかったが美祢の方は予想以上に騒ぎ散らしていた。何だかわざとらしくも見えた。

 美祢だから演技なのか本当なのかよくわからない。なんせ美祢だから。

「何? 何? 何? 何があったのゆかちゃん先輩! けんか? ねぇかんか? けんかはダメだよ! というかなんで城野くんは知ってるの? 私に隠し事? ふぇふぇふぇふぇー」

「お前めんどくせぇーな。一気に喋りすぎだ」

 俺は美祢のほっぺを両手で掴み喋らせないようにしてからゆかり先輩に詰め寄っていた美祢を引き離した。美祢に悪気が全くないのはわかっているので優しく引き離した。

「城野くんひどいよ! ほっぺ痛いよ! 何するの」

「ちょっと美祢は黙っててな」

 とりあえず美祢を大人しくさせる。すぐ大人しくすると思わなかったのだが意外とすぐに大人しくなってしまった。

「ちょっとだけお話いいですか?」

 桃花先輩の事を少し聞けるかなと思ってゆかり先輩に呟くとまた美祢が騒ぎ出してしまった。

「もしかしてもしかして城野くん……ゆかちゃん先輩を誘うんだ! 私という存在がありながらゆかちゃん先輩を誘うんだー」

 紛らわしいことを大声で騒ぐんじゃねぇよ。みんなが俺に疑問を持つだろう。

 ほら、廊下でそんな事を言ったからジロジロ見られてるだろ。

「あのね……わたしが悪いの」

 美祢に気を取られてたら危うく聞き逃すところだった。そのくらい小さな小さなゆかり先輩の言葉だった。

今週も読んでいただいてありがとうございます。

ゴールデンウィークってなんでしょうね。

何がゴールデンなのでしょうと。

何かが輝いているのかな(笑)

次回は今回の続きとなりますのでお楽しみに。

ではまた来週。。。



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