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第37話

 先週突き付けられた突然の廃部警告から1週間が経過した。

 そして今日は部の活動内容をまとめた書類を提出する期限の日だ。提出させるということは、活動内容次第では廃部は免れるということなのだろうと勝手に考えている旅行部だ。

 ちなみに廃部警告をされてから生徒会は一度も現れていないし、ゆかり先輩も現れなかったので生徒会がなんで旅行部を廃部にしようとしているのかという状況を聞くこともできなかった。

 しかしそれ以上に旅行部の活動が今まで通りだったのには驚き、俺とベガだけが戸惑っているような気がしていた。

 桃花先輩だったらいつものように『ではこれからの旅行部の活動について会議しますわ』みたいなことを言い出すと思っていたのだが、全くそういう事をしなかったのだので、桃花先輩は警告自体を無視するのかなとも考えてしまった。それくらいに普段通りだったのだ。

 ちなみに今部室に居るのが俺と桃花先輩と美祢とベガしかいない。つまり日田先輩と小森江先輩が居ないので、あの二人が何か動いていると希望的な意味合いで思いたいが現状は全く不明だ。日田先輩に至ってはただ居ないだけの可能性が高いし小森江先輩はただの遅刻の可能性も十分にある。

 結局提出日が今日なのだがこの話題をスルーするのは嫌だったし、あれこれと頭の中だけで考えても結局それは妄想でしかなかったので聞いてみることにしたのだ。

「先輩、先日の警告ってどうなったんですか?」

 俺が言い終わるか終らないかぐらいのタイミングですぐさまベガが反応したのでやはりベガも気になっていたのだろう。

「それならもう提出してますわ。活動内容と言っても他の部活動と同じですわ。野球部もテニス部もブラスバンド部も練習ですわ。つまり旅行部のいつも通りの活動内容を書いておきましたわ」

 桃花先輩の反応は別に普通というか『あっそのことですね』くらいの軽い反応が返ってきたので拍子抜けしてしまった。廃部警告という一大事で、活動内容しだいでは廃部になってしまうという局面なのにだ。

「その練習がないうちわ……? どうなるんでしょう?」

「旅行の準備と計画ですわ!」

 桃花先輩は自信満々に、そして簡潔に答えた。確かにそうだけどそういう書き方ってマズイのではないか? もっと当たり前以外のことを書かないといけないのではないか? そういう意味で警告後に活動内容を提出しろっていう事じゃないのかな?

 考えれば考えるほど不安になってくる。

 いつもの旅行部の活動を思い返してみたが旅行の準備と計画以外の活動内容を伝えようがないのも事実だ。特に大会などあるわけもないのでそれに向けた計画や準備ということも書けないし、旅行部が修学旅行の準備をする等ということはありえない。それに俺たちはお遊びでやっているので旅行の準備や計画と言ってもちゃんとした旅行には1回も行ってないのである。ちゃんとした旅行ならば桃花先輩のプライベートの方がよっぽど行ってるだろう。

 ベガも同じようなことを考えているのかは分からないが俺と同じように首を縦に揺らしながら唸っている。

「どうして生徒会長は旅行部を承認したんだろ? そしてまた自分で承認しておいて何故潰そうとしているのか? または潰さなくちゃいけないのか? 何かあるんじゃない?」

「ひめちゃんは面白いことを考えますわね。でも確かに承認しておいて廃部にさせるなんてちょっちょ趣味が悪い……なんですのノブくん」

 俺はベガの言葉を受け止めている桃花先輩がやけに淡々としすぎていたので凝視してしまっていたようだ。まぁ凝視した理由は疑いというか、桃花先輩がお金で生徒会を買収してるようなことがありえなくないと考えてしまったからだ。

「ノブくんもしかしてわたくしがお金で解決したなんて思ってるんじゃないですの?」

「あぁ!」

 ベガがその言葉に手のひらを1回叩いて納得していた。やっぱりそう思ってしまうよな。

「あぁ! じゃありませんわ! 失礼しちゃいますわ。そういう汚いことにお金は使いませんわ。楽しいことにしか使いませんわ。今はそうじゃなくてどうして生徒会長が旅行部を承認したのに廃部にしようとしているかですわ」

 桃花先輩は旅行部の存続の為とかそういうことではなくて、普通にその事を探るのが楽しいという理由だけで考えていそうだ。

 桃花先輩もベガも自分が会長の立場だったらとか、実は黒幕がいてとか好き勝手にいろいろと想像しながら自由に喋っていたが美祢はどうしたことか何にも考えてなさそうに首を適当に縦に振りながらみんなの話を聞いてるだけだった。

 そんな美祢が急に口を開いたので何を言い出すのかと思えば、

「ゆかちゃん先輩は生徒会長さんにいっぱい怒られたのかな? 可哀想だね。今も生徒会で一緒にいるのかな? 生徒会長さんちょっと怖かったしね」

 急に真面目なことを言い始める。美祢の言葉にみんなが黙ってしまう。

 俺はゆかり先輩が生徒会に所属していることをすっかり忘れていた。ゆかり先輩がどの程度の力を使えるのか分からないが何とかならないものなのだろうかと考えてしまう。

 だがゆかり先輩も一緒につ連れて来ていたのですでにゆかり先輩が手を打った後にどうしようもなくなったから連れて来られて返事を俺たちの前でさせたのか……いろいろと考えていたらコーヒーのいい香りが部室に漂っていた。

 桃花先輩がコーヒーを丁寧に入れていたのだ。出来立てのいい香りが……ってそうじゃない!

 俺が突っ込もうと思ったら黙ってコーヒーがみんなの前に出された。

「もしかしたらこういう事もできなくなっちゃうかもしれないでしょ?」

 いつにもなく弱気で寂しそうな桃花先輩。そういう事を言う人じゃないのにこのタイミングでそんな弱音を吐くとあきらめたように聞こえてしまう。

「ゆかり先輩って生徒会にいるのに融通とか利かないのかな? もしかしてそれで旅行部が承認されたとかあるんじゃないの?」

 やはりベガも俺と同じようなことを考えていたのだが桃花先輩の寂しそうな表情が変わらないので何かを知っているんじゃないかと思ってしまう。

「もしかしてゆかり先輩が部を承認するときに生徒会長に何か条件を出したとかでその条件を知らず知らずのうちに破ってしまったとか?」

 何かの条件はわからないがこの旅行部は何かと迷惑をかけているので秘密の約束みたいなものを知らず知らずに破っているということは容易に考えることができた。

「それだったら活動内容を提出させるなんて面倒なことさせます? わたくしだったら即廃部ですわ」

 いや、今そんなことを自信満々に言わないで下さいよ。廃部になるのは旅行部なんですから。

「先輩って生徒会の人に嫌われたりしてます?」

 ベガが直球で聞いているがその方向は考えなかったがそういうことも考えられるのか。桃花先輩がいつもの感じで3年生の先輩たちに接していれば逆鱗に触れるまではなくても何か怒らせるようになってしまう可能性はありそうだ。

「失礼ですわね。嫌われてなんていませんわ。去年からちょっと旅行部のことでいろいろやってましたけど、承認されてからは何もないですわ」

 承認される前は何かやってたんじゃないですかと言いたいのだが知ってます。入学式の日から校門のところで許可されてないのにビラを配ったり部活説明会では同好会にすら認められてないのに割り込んで話し始める姿を見てきましたから。

 つまり色々と旅行部はやらかしてるんだが、承認されてからはさほど……してないとも言えないから自信がどんどんなくなっていく。

「生徒会長さんは一緒に旅行行きたかったんじゃないかな? 今度誘ってみればいいんじゃない?」

 またしても美祢がとんでも方向の考え方を繰り出してきてみんな唖然としている。

 そんな私的なことで廃部にされてはたまったもんじゃない。

 桃花先輩が手を2回叩き仕切り直して、

「もう提出してますので考えてもしょうがないですわ。もし次にこういう事になったらはっきり聞けばいいだけですわ。答えの出ない問題を考えるのは時間の無駄ですわ。もう心配しない! なるようにしかならないから楽しみますわ」

 桃花先輩はそう言うけどそんな簡単には割り切れないというか考えないのもどうかと思ってしまう。真面目に考えすぎなのだろうか?

 美祢もこんな暗い話題じゃなくて楽しいことがしたいと騒ぎ始めてしまった。かと言って何かすることといえばお喋りくらいしかないんじゃないかな。

 結局話題は次の旅行の話しになったのだが、これって一応真面目に部活やってるってことなのかな?

 桃花先輩の次は何処に行きましょうかとの質問に、

「海ー!」

 美祢の能天気な声が部室に響き渡る。だからお前はいつもピンポイントにしか言わないよな。

 次の旅行の事をみんなで話してたのだが廃部の警告がちらついて楽しめてないというか今日の部活はぎこちなくてコーヒーばかりが消化されていく日になってしまったのだった。

読んでいただいてありがとうございます。

職場でグロッキーな状態で喜んでおります。グロッキーなのか喜んでいるのかはあまり気にしないでください(笑)

軽いコメディちっくな感じじゃないのが続いているのでさくっと行きたいのですがもうちょっと軽くないお話にお付き合いください。

ではまた来週。。。

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