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第35話

ちょっぴり眺めですがお楽しみください。

 俺たちはキャンプをしている。

 そうキャンプをしているのだ。

 山や川の自然があるところにテントを立てて不便ながらも自然を楽しむということが一般的なキャンプだと思っていた。最近はちょっと炊事場があったり温泉があったりするキャンプ場もあるみたいだが基本は自然の中でだと俺は思っている。

 だがこのお嬢様はキャンプというものの本質を知らないらしい。

「バーベキューとっても美味しかったですわ。それよりもちょっと汗をかいたからお風呂入りたいのですがどうしましょう?」

 さっき桃花先輩の口から出た言葉だ。

 キャンプでお風呂ってどういうことだ。このお嬢様はとことんキャンプに向いてないと思ってしまう。

 温泉の施設があるような所ならまだしも俺たちがやっているキャプは学校の校庭だ。

 温泉どころかお風呂すらないのが現状だ。さらにどこかの私立高校ではないので運動部のシャワールームなんて洒落た設備すらもない。

 汗を流せる施設なんてないのだ。

「先輩……残念ながら学校にお風呂はないですよ」

 そっか、と言って悩み始めた。一回家に帰るなんて言い出しそうな予感がしたがそれは小森江先輩が阻止した。

「じゃあ銭湯に行こうよ。駅の方にあるから」

 結局旅行部はキャンプをしているはずなのに着替えとタオルを持って駅前の銭湯に行くことになった。

 よく考えたらバーベキューの具材を買いにスーパーに行ってたし、これはもうこのキャンプはなんでもありなんだな。考えたら負けだな。

 考えたら負けっていつもの旅行部じゃないか。

 旅行部はどこに行っても何をやっても旅行部ってことか。

 


 結局みなで駅前の銭湯に行ったのだが夏の汗を流す温泉はたまらなく気持ちよかった。

 悔しいが銭湯行って良かったと思ってしまった。

 湯上りのほてった肌にあたる風が心地いい……扇風機の風だけど。

 男チームは現在くつろぎの場で女子チームの風呂上りを待っている状況だ。

 女子はお風呂が長いというが本当にそうだったのかと体験中だ。

「お・ま・た・せ」

 美祢がセクシーポーズをしながら出てきたけど恥ずかしくて無視した。他人のフリだ。

 周りの人たちがなんだなんだと美祢を見ている。

 美祢はその視線に気がついたのか恥ずかしがりながら走ってきて無視する俺の肩を掴んで揺さぶってきた。

 美祢の後から茶山さんが可愛らしいパジャマで、ゆかり先輩は体操服で登場した。普段こういう格好してるんだと考えてしまったらちょっと顔が緩んでしまう。

 最後に桃花先輩がいかにもというフリフリの格好で登場したときはちょっとドキッとしてしまった。女子チームはみんな髪が若干濡れ気味で本当にお風呂上がりなんだということを認識させられてちょっと意識してしまう。

 女の子のお風呂上がりなんてお目にかかることなんてなかったから俺には刺激が強い。

「城野くんが私だけ無視してる気がするんだけど」

「大丈夫よ先生もきっと無視されているわ」

 へんてこセクシーポーズを取ってたりビールを飲みながら生徒の引率をする変な二人は他人のフリだ。

 駅から学校へ向かう途中に先生がビールを買い足しにコンビニに寄るついでにみんなお菓子やら本やら好き勝手に買い物を始めた。

 これキャンプじゃなくてただのお泊まり会だろ。

 それでも学校に戻ると校庭にちゃんとテントがあり一応キャンプをしてるんだと再認識する。これをキャンプとは呼びたくないのだが。

「さぁみんな荷物を置いたら早速肝試ししますわよ」

 モヤモヤとしていたが、手を叩きながらみんなに声をかける桃花先輩の声でとりあえず気持ちが切り替わる。

「ペアを作ってエッチな展開になんてさせませんわよ。みんなで一緒に夜の学校を徘徊しますわよ! 夜の学校楽しみですわ……ノブくんちょっとエッチなこと期待してました? お風呂上がりの私たちと肝試しなんてちょっとエッチですわね」

 そりゃちょっとペアになるのかななんて期待したけどそこまで露骨にエッチなことなんて考えてないのに一人名指しされてどういうふうに反応していいのかちょっと戸惑ってしまった。

「あら、そんなに残念だったら私がとなりで腕組んであげましょうか?」

 いつも美祢がやってくることを桃花先輩がするというのか……今の桃花先輩はお風呂上がりのいい匂いがするしフリフリの薄着だから……まずい変なこと考えてしまったからいつもうるさい奴が……あれ?

 美祢はなぜか一人で怖がっている。こういうことを一番楽しみにしそうな奴なのに意外とビビリなんだな。

「城野くん私にエッチなことするの?」

「しないから。なんにもしないから」

 お前はそっちでビビってたのか! いつもどおりで安心したよ本当に。

「ではよろしくお願いしますわ」

 桃花先輩が警備の人に礼儀正しく挨拶して肝試しという名の夜の学校徘徊が始まった。

 定番の理科室では人体模型に並んでみたり、音楽室ではピアノの音を鳴らしてみたり音楽家の顔が変わってない? とか一通り騒いでみたり女子トイレでトイレのなんとかさんと騒いで女子トイレに入ったのはいけないことをしてるみたいでちょっとドキドキした。 

 しかし夜とはいえやはり誰もいない静かすぎる学校はやっぱり不気味だが先輩たちは肝試しというよりも普段できないことをやっている。

 広い廊下を走り回ったり音楽室の広いスペースに寝っ転がったり理科室の広い机の下に潜り込んだり自由すぎる。

「桃花先輩、これって肝試しじゃなくて本当に夜の学校徘徊じゃないですか。何かもっと目的みたいなものがあれば面白かったんじゃないですかね?」

「なるほど……それもそうですわね。さすがノブくんですわね」

 夜の学校で何やら真面目な顔をして考え始めてしまった。終わった後に言った方が良かったかな? せっかく楽しく徘徊していたのに。

「ではそろそろ屋上に……」

 そう言ってる途中にフリフリのパジャマのいろんなところを触り始めて困り顔の桃花先輩。

「屋上への鍵を忘れてきてしまいましたわ。先に職員室に行って鍵をとってくる予定でしたがすっかり忘れてましたわ」

 ちょうど屋上の扉の前に到着したタイミングでの発言、さてどうするのだろう。

「それでは今からゲームをしますわ! どこかの教室で紙とペンを持ってくるんですの! みんな携帯電話は持ってますわね。今から10分後にまたここに集合ですわ。紙とペンが見つからなくても10分後には集合ですわ。ではスタートですわ」

 そう言われたもののみんな突然過ぎて足が動かずその場に立ったままだ。俺もこのよくわからない突如始まったゲームの意味が分からずに立ち尽くしている。

 美祢だけは嬉しそうにどこかへ走って行った。

 その美祢の行動を見てみんなゾロゾロと動き始めた。

 とりあえず紙とペンがありそうなところを探そうと階段を下りかけたら手を握られた。

 突然手を握られるとドキっとしてしまい冷静を保てないもんなんだと実感する。

「城野、ちょっと一緒に行きましょ。どこから行くの?」

 振り返ると茶山さんが俺の手を握っていたのだが、その後ろのゆかり先輩の顔が先に目が入ってしまった。とっても困ったような顔をしていたから気になってしまった。 

 静かな学校なのに美祢の雄叫びみたいなものが聞こえてちょっと不気味だ。アイツ叫ぶほど何が楽しいのか……ほんと幸せそうだな。

 結局ゆかり先輩もゆっくりと階段を下りていき俺と茶山さんだけがまだ集合場所に残っていた。

「ちょっと、時間なくなるわよ? どうするの?」

「じゃあちょっと下の階にでも行こう。もうこの階はみんな回ってそうだから」

 そう言ってもう一つ下の階まで足を伸ばし残り物のプリントや転がったペンがないか探してみようと試みたがちょと握られた手が痛い。

「茶山さん、ちょっと手が……痛いんだけど」

「あっごめ」

 とっさに手を離してその行方を失った手が彷徨っていた。

 下の階の開いている教室に入ると既に小森江先輩が散策中だったので軽く喋って教室を出たのだが、

「これはもうみんなどこかしらの教室を探し回ってるかもしれないね」

「まぁ入れる教室限られてたしね。もう上に戻ろう?」

 茶山さんは消極的な発言だったがこれ以上に下の階に行っても誰かいるだろうし時間的にも厳しいので戻ることにした。

「ねぇ、城野って何で先輩たちは下の名前で呼ぶのに私の……私たちのことは下の名前で呼んでないの?」

 余裕を持って上に戻って来たと思ったら急にこんな質問が飛んできてびっくりを通り過ぎて固まってしまった。

 きっと今俺は瞬きすらしてないかもしれない。一生懸命茶山さんが何を言ったのかを理解しようとして頭がフル回転しているし、その言葉の意味も考えていた。

「えっと、先輩たちとはまぁいろいろあって……」

 何で俺はいけないことしてるみたいな言い訳言ってるんだ? 口から出た言葉は、まだ頭の中で考えが全くまとまってないまま何故か出てきた言葉だった。

「ふーん。そうなんだ……」

「うん。そうなんだよ」

 謎の同意の後の沈黙。こういう時に限って誰も戻ってこない。

 日田先輩あたりが時間的にも戻ってきてもおかしくないのだが今日に限って戻てってこない。

 携帯電話で時間を見ようとしたら暗闇に目が慣れてしまっていたのか思いのほか眩しく感じて目がくらんでしまった。

「ねぇ城野……私のこと下の名前で呼んでみて」

 俺の目がくらんでいる間に茶山さんは突然何を言い出すんだ? 今日の茶山さんはどうしてしまったんだ? 暗いところが苦手なのか? 怖がりなのか? バーベキューの時に変なものを食べて食あたりでも起こしているのか? ちょっといつもと違う気がしなくも無いが……別に下の名前で呼ぶくらいどうってことないし……

「嫌なら別にいいけど」

「ベガ……」

 同時に声が重なってお互いがあわあわと慌ててまた変な空気になってしまうことを考えてしまっていたら、

「プッ」

 階段の下から音がした。いや、音ではなくて笑い声だ。

「ごめんなさいね。ちょっと面白くて入って行けなくて。盗み聞きするつもりはなかったんだけど。というかあなたたち何そんな面白いことやってるの?」

「先輩! 忘れてください。今聞いたこと全部忘れてください」

 茶山さんは……いや、ベガはそう言いながら階段を駆け下りて行き今にも飛びかかりそうだ。

 結局ぞろぞろとみんなが出てきて集合となった。

 どおりでみんな遅かったわけだ。いや遅いのではなくて聞かれてたってことだ。

 美祢もちゃんと聞いてた割には浮気だ浮気だとか私も下の名前で呼んでって言ってこなかったな。いつものノリなら言ってきそうだと思ったのにえらく静かだし今日はみんなどうしたんだろう。

「で、結局何するんですか?」

 ふてくされているベガが桃花先輩にキツく質問している。

「まぁまぁヒメちゃん落ち着いて。まずはゲームの結果ですわ。みなさん紙とペンはみつかりました?」

 小森江先輩とゆかり先輩は紙を見つけていたようだ。

 そして俺たちは当然何もなく……日田先輩も何も見つけられなかったようだ。きっとどこかで時間だけ潰してたのかな?

「あら、ノブくんとヒメちゃんはイチャイチャしてただけで何も見つけられませんでしたの。おほほほほ」

 ベガも言い返したいのだろうがこればっかりは何も言い返せないようだ。まぁ全然探してないのは事実だし。

「ふっふっふ。みんな書くもの無かったみたいだね。私は見つけてきたよ書くもの!」

 いつも桃花先輩がやっている腰に手を当てるポーズでチョークを掲げる美祢。

 小森江先輩が思わず感心していた。

 たしかに俺たちが入った教室に小森江先輩も居たがチョークはあった。ペンばかり頭にあってチョークは閃かなかった。

「先輩それで何をするんですか?」

「では早速やりますわよ。あみだくじをしまして2人で職員室にこの屋上への扉の鍵を取りに行きますわよ! この紙とチョークには何のしかけもありませんわ」

 そしてせっせとあみだくじを書き始める桃花先輩。

 みんなが適当に選び適当にみんなで線を引く。

「あらまぁ」

「えっ」

 あたりの二人が声を上げた。この二人が鍵を取りに行くことになりガチだったんだと思った。結果が出るまでは正直疑ってたけど。

「では行きますわよ。ベガっていたたたた」

 ベガと桃花先輩のペアが職員室に旅立っていった。

 途中階段から桃花先輩の声が響きみんなで笑っていたら、

「じゃーん」

 日田先輩あなた何やってるんですか。

 鍵をじゃらじゃらと見せびらかしそしてその鍵を扉にさして回す……すると扉が開く音がする。

「さっき紙を探しに行く間に鍵取りに行ってたんだよ。まさかこんなことになると思わなかったけど面白そうだったからな」

 二人を置いて一足早く屋上に出ると天体望遠鏡が設置されていた。疑うまでもなく桃花先輩がセットしたのだろう。

 そして美祢は楽しそうに屋上で走り回っている。

「すごーい! すごいよ城野くん!」

 何がすごいのかよくわからないがすごいを連発する美祢をほったらかして小森江先輩と天体望遠鏡の方に近づく。

 まさか本当に天体観測になるとは思わなかったしこんな本格的な天体望遠鏡があるとは思わなかった。

 きっとお昼電話してたあの時に用意したのだろう。遠賀家すごい。

「星がいっぱいー」

 さっきから美祢がすごいすごい騒いでいたが星が見えるから騒いでいたってそんなに見えないだろう。街の明かりもあるからと思い空を見上げると思ったよりも星が見えた。

「うわぁすげぇ」

 思わず声にで時に、

「ちょっと! アッキー!!」

 お怒りの桃花先輩とベガが戻ってきた途端に日田先輩を怒鳴り。みんなが桃花先輩を見るとベガの手を握り締めていた。いや、どちらが握り締めているのかわからなかったが桃花先輩が握っているように見えた。

「何かあったの?」

「まぁちょっと」

 俺はベガに聞くと曖昧に返事をされたので桃花先輩に何かあったのかなにか言われたのか、

「そのことはもういいですわ。ノブくんも楽しみますわよ。花火も持ってきてるんですのよってちょっと彩耶乃!」

 桃花先輩がそう言った時には既に美祢が花火を見つけ楽しんでいた。

 みんな負けじと花火に火をつけて楽しむ。

 学校の屋上で花火なんてそれこそ絶対にできないことだから貴重な経験してるなと感じてたら、

「花火ストップストップ! 校庭でしか花火の許可はとってないから屋上はダメよ」

 花火に火をつけて5分もしないうちに汗だくの先生が現れて息切れしながらストップを言い渡された。

 やっぱり屋上ではだめなのか。まぁ普通に屋上で花火なんてありえないしな。

 屋上の花火を片付けてテントを張った場所で花火を再開するが一回片付けたのですごくまったりと花火を楽しんでいた。

 ゆるい感じに流れる空気にまだまだ暑い夏の夜の花火。

 先生と桃花先輩とお喋りしていたがまったりしすぎたのか体が重くて瞬きが重く感じる。

「誰よ屋上に花火準備してたのは。やっぱりワンパクオジョーよね?」

「そうですけどその呼び方はやめていただきます?」

 桃花先輩と先生のやり取りが聞こえるけどどうも意識が途切れとぎれみたいになるな。

 会話も聞き取りにくい。

 どんどんぼーっとしてきて意識が完全に途切れとぎれになってくる感じがする。

「城野くんくらえー」

 美祢が何か言ってるような気がしたがよくわからなかった。

ちょっと長めになってしまいましたが読んでいただいてありがとうございます。

楽しんでいただけたら嬉しいです。

これで夏休みが終わり2学期が始まります。

いろいろと考えている2学期が始まります。

ではまた来週。。。

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