第34話
寝起きはいい方なのだがかなりバッチリと目が覚めてしまい、ケータイの時刻を見ると目覚ましが鳴るにはまだ大分早い時間だった。
再び目を閉じて二度寝を試みたが思ったよりも頭が覚醒していたので起きることにした。
今日の集合は学校に昼過ぎということなのでゆっくりで良かったのだが目が覚めてしまってはしょうがない。
さっそくキャンプの準備をしようと張り切るも前日も寝坊したら大変だと思いある程度の準備はしていたのであっさりと準備は終わってしまった。
入学式の日を思い出してしまいちょっと自分のことを笑ってしまう。
夏休み中の身としてはかなり早めの朝食を取りに行くと母親はご機嫌で料理をしていた。
「あら? 今日は早いわね。今日は美祢ちゃんの家にお泊まりだから早く覚めちゃった?」
俺がキッチンに入るなりすぐに茶化されてしまった。
「美祢の家じゃねーよ。キャンプ! キャンプに行くの」
「だってキャンプしか言わないでどこに行くか言わないじゃない。ホントは美祢ちゃんの家なんでしょ? それともモカちゃんの家なのかしら? それだったらお母さんも行きたいわ。まぁ美祢ちゃんの家でも行ってみたけど」
俺も場所を知りたくて気になっているのだが今日まで桃花先輩は隠し通している。本人に隠すつもりがあるかどうかはわからないが。
そのあとも朝食をとる間ずっと母親に茶化され続けて疲れてきたので早々と家を出ることになってしまった。
家に居てもゆっくりできないしストレスがどんどん溜まってしまうからという理由で家を出たはいいのだが、行くあてもないのでちょっと遠目のコンビニに寄ってお菓子でも買っていこうと閃いたのだ。
そのちょっと遠目のコンビニ行くと今日はさすがに居るはずないだろうと思っていた人物が普通に品出しをしていて、その居るはずのないと思っていた人物は商品を持ったままあわあわと焦っていた。
「先輩なにやってんすか? 今日キャンプっすよ」
俺の言葉にさらに慌てるゆかり先輩。
その後12時にゆかり先輩のバイトが終わるらしいので一緒に学校に行くことになり外で待つ。
コンビニの前でお菓子を食べながらジリジリと照りつける太陽の日を浴びながら待っていたのだが夏って暑いよな。
その後ゆかり先輩と学校へ一緒に向かったのだが先輩に聞いてもやはりキャンプの場所は知らされていなかった。
学校に向かう間は先輩と、どこにキャンプは行くんだろうというワクワクの妄想話に花が咲いたのだった。
そんな楽しい雰囲気で学校に着いたのだがゆかり先輩の顔色が変わった。
どうしたのかと思ったが理由はすぐにわかってしまった。
部室の方を見ると二名がものすごいこちらを見ていた。近づくにつれて表情もよく見えてきたので面倒くさいなと思ってしまった。
あの二人あきらかにふてくされているように見えるので絶対に何か言われる。いや、何かではなくゆかり先輩と一緒に来ていることを言われるだろう。
「どうして二人一緒に来てるんですの?」
「浮気よ浮気ー」
もういろいろと言われ慣れているから面倒くさいで済むんだけどゆかり先輩にはその免疫がないみたいであわあわと取り乱している。
ふてくされている桃花先輩の後ろにはすごい量の荷物が置かれている。旅行部の部室の前が荷物でいっぱいだ。きっとあれはキャンプに持っていく荷物なのだろう。
桃花先輩なら持っていくことは可能だろうが、あの荷物の量だとキャンプがキャンプにならない気がする。
俺たちよりも後に来た茶山さんにも美祢が、俺とゆかり先輩が一緒に来たことを言いふらかしていたのだが、美祢みたいに浮気だーというノリにはならなかった。だがその話している間もゆかり先輩はオロオロと落ち着きがなかった。
「ヒメちゃんはきっと余裕なのかしらね」
そう言って楽しそうに笑う桃花先輩を見ながら、
「先輩そこ余裕ですね」
「もちろんですわ」
えっ何々? この二人っていつからこういうこと言い合う関係になってたの? 冗談? なのこれ?
二人のよくわからない関係に驚くことしかできない俺は、表面上では冷静を保ったように見せるように必死に努めたのだが、内心はゆかり先輩と同じくらいかなりオロオロとしてしまった。
カツくんはまだですの? と話を変えいつも通り? の旅行部に戻ってしまった。さっきのあれは何だったんだろう?
結局小森江先輩はいつも通りの遅刻とみなされ勝手にキャンプの説明が始まってしまったので桃花先輩以外は驚きと小森江先輩はおいていくの? という疑問でざわついていた。
俺たち4人の驚きの反応を見て何故? という疑問が桃花先輩は浮かんでいるようだ。
そんなやり取りの中部室のドアが開き眠そうに出てくる日田先輩は汗でびしょびしょになっている。
部室から出てきた日田先輩を見て明らかに閃いたような顔をして手をポンとたたいた桃花先輩を見て、
「違います」
「まだ何も言ってませんわ!」
桃花先輩が言う前に否定したのでちょっぴり怒り気味の桃花先輩は頬をぷくっと膨らませている。
きっと日田先輩を忘れていたからみんな驚いたわけではないのだ。少なくとも俺は日田先輩のことは頭になかったからごめんなさい。小森江先輩をおいていこうとしていることに驚いているだけだったから。
そんなことよりも驚きなのは日田先輩だ。あんなサウナみたいな状態の部室でよく眠れるなと本当に感心する。日田先輩は熱中症という言葉を知らないのかな? いつか部室で干からびて死んでしまったとかならないように言っとかないといけないな。
桃花先輩はさっきの俺たちとのやり取りを日田先輩に話していたようだが、いろいろ日田先輩にも言われているようでちょっぴりご立腹の様子だ。
そして桃花先輩はみんなの前で咳払いをして仕切り直してもう一度話し始めようとする。
「おはよー」
仕切りなおした途端に邪魔される桃花先輩はふてくされたのか部室に入ってしまった。
「モモちゃんどしたの?」
「いや、お前のタイミングが最高だっただけだ」
日田先輩は笑いながら説明している途中に部室から汗だくの桃花先輩がすぐに出てきてしまった。時間にして1分経ってなかったと思う。
「この部室暑くてどうしようもありませんわね」
今度は部室の文句を言い始めてしまった。きっとふてくされて部室に入ったはいいが暑さに耐えきれなくなって出てきたのだろう。
「じゃあ説明しますわよ。もう邪魔しないことですわ」
そういって説明を始めた桃花先輩の口から出た言葉は学校でキャンプをするので裏庭にテントを立てる事や運動部がみんな帰った後にバーベキューをしていいと許可を取っている事などを当たり前のようにしゃべり始めてみんな呆気に取られている状態だ。
ちょっと待て! 俺は海か山かとゆかり先輩とワクワクしてたのに部室の擬似旅行じゃないにしろ学校でテント張ってキャンプって桃花先輩はどんだけ学校が好きなんだと問い詰めたい。
だが俺のそんな思いは関係なくテキパキと説明を終え裏庭の方にテントと大荷物を運び始めた。
あぁ本当に裏庭でキャンプするんだ……海とか山とか大自然の中でのキャンプ結構楽しみにしていたのに……これが旅行部初めての本当の旅行だと思っていたのに何かがっかりだ。
それでもみんなが楽しそうにしているのはすごいなと感心してしまう。特に美祢とゆかり先輩は大はしゃぎでテントを設営している。ゆかり先輩、海とか山とか想像しててすごく楽しそうだったじゃないですか……学校でも良かったんですか?
「先輩、別にどこに行くわけでもないのにこんなに早く集合して何するの? テント作り終わって真夏の真昼間にテントの中で過ごすんだったら死んじゃうよ? 日田先輩くらいしか昼寝できないよ?」
さらっと茶山さんが日田先輩をディスってるのがびっくりしたがこんなに早くから集まってテントを立てるいみはたしかにわからない。
俺はてっきりどこかに行くからこの時間に集合だと思っていた。
「もちろんバーベキューの買い出しにいくわよ!」
出た、手を腰に当てたポーズでドヤ顔。
「そして夜は肝試しと花火をするわよ! だからいろいろと準備が必要なのよ」
ドヤ顔ポーズのままでまた何か言ってると思ったがちょっと面白そうなことを言ってるではないか。
学校で肝試しなんてしたくてもできないものだと思っていたからだ。まさか学校でリアルに肝試しが出来る日が来るとは思わなかった。
ゆかり先輩あたりがビクビクして、もしかしてドキドキの展開があるかななんて妄想をしてしまうではないか。
「おねーちゃん。肝試しが終わった後に屋上で星がみたーい」
「ふむふむ」
美祢の思いつき発想の発言に桃花先輩がなぜか真剣な顔をして何か考えている。
こんなところで星を見ても街の明かりがあるからそんなに見れないだろう。それこそ山でキャンプやってたら綺麗な星が見れただろうに……
桃花先輩はどこかに電話をしているようだ。何を考えているのやら。
場所は学校だけどバーベキューやら肝試しやら花火やらいろいろ先輩も考えているみたいでちょっと楽しくなりそうだ。
真夏の直射日光を浴びながらのテント設営はとんでもなく暑いし頭がフラフラしてきそうだ。いやこれはフラフラしているのか?
なんたって裏庭には太陽の光を遮るものが全くない。つまり日陰が全くないのでみんな汗びっしょりになっている。
「水飲む?」
どうやら本当にぼーっとしていたようでゆかり先輩に心配をされてしまった。
そして何やら嫌な視線を感じる。
「やっぱり浮気だー! いや、本気だあああああ」
あぁ美祢がうるさい。
夏休み終盤でのキャンプのお話。楽しんでいただけたでしょうか?
私は楽しく書いております。
来週もキャンプのお話を書かせていただこうと思います。
ではまた来週。。。




