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第27話

 補習は意外と楽しく頑張れた。それは悔しいけど美祢が居たからかもしれない……いや、かもじゃなくて美祢がいたから楽しかった。そう、二人で一生懸命にあーでもないこーでもないといいながら問題を解いていたし普通の楽しい会話もしていたし。

 その努力の成果か、補習のテストの結果もなんとかいい点が取れた。その良い結果が楽しかったと思える理由かもしれないが、美祢が居たから楽しかったのは間違いないわけだ。

 そう、俺は何とか補習で赤点という最悪の事態を免れて1学期の赤点は無事ゼロとなったわけだ。

 危うく留年リーチなんてことにならなくて助かったのだが、美祢がちょっと問題なんだ。

 まず驚いたことが補習の教科が4教科もあったことだ。俺はてっきり俺と同じ国語だけの1教科だと思っていたんだがそうではなかったらしい。だからアイツが試験の後に無口になってたのは普通に点数が悪かったからだったんだろう。4つも補習があれば俺ならば立ち直るのにすごく時間がかかってしまうだろうが、アイツだから無口になるくらいですんでいたのかもしれないのだが本当のところはわからないよな。アイツなりに思いっきり落ち込んでいるのかもしれないし無理してるのかもしれない。

 補習の授業が2教科入っている日で、とびとびの時間になっているときは時間潰しに付き合わされて国語の勉強をしていたのだ。

 そういうわけなのか俺も美祢もたっぷり国語の勉強だけはしたのだ。だから俺は赤点を回避、美祢も国語の赤点は回避できたのだが……美祢は国語以外が赤点を回復できなかったのだ。もしかして俺がずっと国語の勉強をしていたせいなのか? ちょっと罪悪感が……

 つまり美祢はに留年リーチの教科が3教科もあるわけだ。リアルで留年が現実味を帯びてきている状況なのだが本人はあまり気にしてないように見える。いや、壊れているだけか、やはり焦っているのだろう。意外と美祢も繊細なんだろう。

「城野くんの後輩になるなんて嫌だよーーーーーー」

 いきなり部室で叫ばれてもわけがわからない。

 いや意味はわかるんだが、叫んだこととか内容とかが突然過ぎてびっくりしたということだ。

 そう言った美祢は体をクネクネとくねらせて俺をじっと見ている。こういう時って俺はどういうふうに接したらいいかよくわからなかった。このまま無視していいのか?

 後輩になるっていうことは留年するっていうことだけど、そんな冗談を言えるってまだ余裕じゃないか。それに結構ノリノリに見える。

 クネクネとくねらせていた体をぴたりと止めたのでまた何か発言するのだろう。

「過ぎてしまったものはしょうがないから2学期頑張ります!」

 美祢が手を上げて高らかに宣言した。

 切り替えが早すぎると思うのだが、まぁ美祢だし引きずってしまっても過去の結果が変わることはもうないから悪いことではないと思うのだが、こうも軽い感じに見えてしまうと心配になってしまう。

 俺の思っている心配は桃花先輩も同じように感じているらしく深刻そうな顔で美祢を見ていた。ちゃんと美祢のことを考えてのその顔ですよね? 全然関係ない事考えてないですよね?

「まぁ彩耶乃は残念だったけど夏の旅行を計画を立てますわ」

 手を一回叩いて仕切り直す。美祢が作った変な空気を区切ろうとしたのだろうけど、桃花先輩の発言がもう美祢は留年しましたみたいに聞こえてしまった。

 茶山さんも俺と同じように聞こえてしまったのか苦笑いをしていた。

「はいはい! じゃあ今日はゆかちゃんは欠席ですが、あらかた決めてしまおうと思いますのでよろしくお願いしますわ」

 桃花先輩の仕切りで始まった旅行計画。あらかじめ今日決めることを聞いていたのだが特に何も考えずにこの場に居るわけだが急に解答権が与えられた。

「ではノブくんはどこに行きたいですか?」

 別に手を挙げたわけでもなく突然の指名だった。

 何も考えていなかった俺は考え込んでしまう。突然どこに行こうと言われてもこの間のような擬似旅行だからいいアイディアが浮かばない。どうせならあの疑似旅行の形で映える旅行の方が良いよな、と何も考えてなかったくせに欲張ろうとして、自分が今何を考えているのか分からなくなっていった。

 普通に行きたい旅行だったら大阪とか東京とか沖縄とか浮かぶわけだけど何かが違うというか定番すぎるから嫌だなと勝手に思っているだけなのだが。

 それに茶山さんに聞いたところによると、ある程度俺と美祢が補習で居ない間に先輩達と話したとか言ってた。ついでに茶山さんが先輩達に囲まれて大変だったということも聞かされてしまった。ちょっとその光景は見てみたかったと思ってしまった。

 考え込んでいた俺の解答権が美祢にわたってしまう。考え込んでしまっていたがそんなに時間は経ってなかったと思うのだがいいアイディアが出そうかと言われれば全くと言っていいほど出そうになかったので、別の人の意見を聞いてみると何か浮かぶかも知れない。あとでまた解答権が回ってくることを言われたのでそれまでには考えておかないといけない。

「はーい! 私キャンプしたい!」

 何処に行きたいかという質問に解答権が回ってきた美祢が堂々とやりたいことを速攻で答えた。これだから国語が赤点になるんだよ。俺も人のこと言えないけど。

「いいわねぇキャンプ」

 頷きながら感心している桃花先輩。やることじゃなくて行くとこを決めるんじゃなかったんでしたっけ? 違いますかー?

「おぉキャンプいいな。楽しそうだな」

 まさかの日田先輩までノってきた。基本的に日田先輩ってずっと漫画読んでてこういう会話にノってこないイメージだったからビックリした。

 記録係なのか小森江先輩もキャンプとメモをし始めた。

「どこに行くかの話じゃなかったっけ?」

 思わず声に出してしまった。頭の中では何度もツッコんでいたのだが無意識で声が出ていたのだ。キャンプに話が傾いている感じだったのでちょっと美祢に質問する形にはなってしまったが、どこに行くっていうのは考えてないんだろうなということまでは想定してたのだが、

「どこに行くって? キャンプだって!」

 美祢はちょっと大きな声になっていたが本気で行く場所がキャンプ(・・・・)っていうことらしい。

「じゃあどこの場所のキャンプにしようか?」

 小森江先輩が優しく質問を変えてくれた。美祢にはそういう質問の仕方をすればよかったのかと感心する。俺には思い浮かばない質問の仕方だった。

 しかし美祢は小森江先輩の質問で混乱したのか顔をしかめて悩み始めてしまった。

「それでは再びノブくんですわ」

 また俺に解答権が帰ってきてしまった。ちょっと待ってくださいよ、全然さっきから時間経ってないというか美祢しか答えてないじゃないですか。これはおかしい。

「じゃあ桃花先輩はどこかに行きたいところはあるんですか?」

 俺は全くまだ頭に何も浮かんでなかったので桃花先輩の意見を聞くべく質問をしたのだがこれは失敗だったのかもしれない。いや、失敗でなく仕組まれていたのか。

 桃花先輩の顔はニヤけていて笑いを堪えきれていない。これはきっと何か考えているんだ。

「そうねぇ……もうノブくんはしょうがないですわね」

 一瞬考えるフリをして、ちょっと溜めたように見せたかったようだが全く間は取れていなく、さらにセリフっぽく言っているが実にわざとらしく棒読みで、言いたくてしょうがないというのが溢れ出ている。大根女優も真っ青の棒読み演技だ。

「わたくしはですね、スキーがしたいですわ。北海道がいいですわね」

 またこの人はこれだけ溜めてこの答えですか。ちょっと呆れてしまった。

「先輩、夏にスキーってどうやるんですか。北海道って言ってもさすがに夏に雪は降ってないですし、もちろん積もってもいませんよ」

 俺が当たり前のことをいうとまたあからさまな演技が始まった。

「チッチッチ、夏でもスキーができるんだよノブくん」

 淡いピンクのネイルをした人差し指を左右に揺らした。夏休みだからネイルをしているようだけどよく気がついたな俺。

「きっとカツくんが雪山の映像とか雪小屋とかゲレンデとか準備してくれますわ」

 今にもオーッホッホと言い出しそうな桃花先輩だったが映像でスキーって楽しくなさそうだしやっぱり他力本願じゃないですかと。

 まぁ最初から擬似旅行ってわかってたけど、もうちょっとこの旅行で楽しめそうなことをしたかったなと思ってしまう。アクティブ系はこの旅行部の旅行活動に向かないと思うけど固定概念を持つのは良くないよな。当たり前の事として否定するとこの旅行部の活動自体がヘンテコ活動になってしまう。

「ねぇねぇキャンプは?」

 今の話の流れでまだキャンプを引っ張り出す美祢は人の話を聞いていたのかと問い詰めたい。

 人の話を聞かないと本当に留年してしまうぞと警告してやらなければならないな。

「はいはい。今度キャンプ行きますわよ」

 桃花先輩の言葉に一人でわーいと両手をあげて小学生のようなはしゃぎっぷりを見せる美祢。

 そんな美祢を桃花先輩以外が哀れな目を向けていた。

 次の旅行は北海道でスキーをすることに決まったのだった。

 あれ? 俺何も答えてないぞ?

読んでいただきありがとうございます。

朝寒くて出られない布団の中で喜んでおります。

予約がうまくいってなかったようで遅れました。

今週もあとがき2回目書いております。おかしいなー

久しぶり?に桃花先輩のセリフを書くとお嬢様口調を忘れていて読み返して思わずしまったしまったとなってしまうことが多いです。

楽しい夏休みはまだまだ色々起こります

ではまた来週。。。

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