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第26話

 いよいよ始まった夏休み初日。

 日差しがもういいよっていうくらい朝早くから照りつけている。

 絶好の夏休み日和に俺は制服を着て登校している。

 何故制服を着て登校しているかというと、部活だったらいいんだけど残念ながら察してくれ。

 俺は憂鬱な気分で歩き慣れた通学路を歩いているのだが、いつもよりも長く感じる。

 これは既に照りつけている太陽のせいもあるし、これから潰れていく夏休みがもったいないという気分の問題でもある。

 そういえば最近美祢があまり話しかけて来なかったな。まさかアイツに限って俺の補習を哀れに思って気を使っているとか? いや、ありえないな。

 アイツとテスト後にあまり喋ってなかったからアイツに補習があるのかどうかを聞いていなかった。

 だがそれも今日でわかる。今日は補習の説明をするみたいで補習がある生徒全員教科にかかわらず登校することになっているようだ。なので今日美祢が来てなければ補習はないということだ。人の不幸を喜ぶわけではないがドキドキしてしまうものだ。

 アイツ中間テストの時も点数教えなかったんだけどどうなってるんだろうか? テストの答案用紙にボールペンで答えを書いて怒られてたことは記憶に残っているが、そっちの記憶ばかりで点数の方は全く聞いていなかったのだ。

 茶山さんはテストが終わったあとの部活の時に大喜びで桃花先輩に飛びついていたから補習を免れたということだ。

 あの光景は物凄く珍しいものを見れた。

 テンションが振り切った茶山さんが飛びついて喜んでいるのもそうだが桃花先輩が若干引き気味に押されていたのがちょっと面白かったのだ。そのあと我を取り戻した茶山さんがモジモジしているのもまたよかったのだが俺の気分はその時既に補習が確定していたために上の空状態だった。

 一応桃花先輩にはちゃんと補習になったので部活には出れませんと伝えている。

 すぐにバレると分かっていても旅行部のメンバーに笑われるのは嫌だったから桃花先輩と二人っきりのときにちゃんと伝えたのだ。

 その時桃花先輩にも絶対笑われると思ったし、みんないれば弄られるとも思っていて笑われるのはせめて桃花先輩だけだけにしようと思って二人っきりの時に伝えたのだが、意外にも桃花先輩は『留年とかしないように補習がんばりな』と真面目に応援してくれた。

 そして『補習がちゃんと終わってからみんなで旅行の計画を立てるから焦らないで』とまで言ってくれた。最近桃花先輩が本当に頼りになるお姉さんみたいになってきた気がするんだけど何かあったのかな?

 いろんなことを考えながら無意識でいつものように教室に向かっている途中で、今日は自分の教室じゃないことに気がついて慌てて方向転換。集合する教室に向かった。

 教室のドアを開けると熱気と湿度ががすごくて不快指数がいきなりMAX。

 生徒は誰もいなくて一番乗りのようだった。慌てて全ての窓を開けて少しでも風が入るように対処する。

 適当な場所に座り、時計とにらめっこしていても誰も来ない。

 途中で集合の教室間違えたかな? と不安になったので、持ってきたプリントを引っ張り出してここであってることを確認して一人安心する。

 それから再び時計とにらめっこをしているとぞろぞろと……やってこない。

 先生に補習の人数を聞いていなかったのでここで『もしかして俺一人?』という考えが生まれた。

 入学早々だからみんな気合も入っているだろうし、まだまだ問題的には難しくなかったのかもしれないので俺一人っていうことがあり得るのか?

 そう考えだすと不安で心臓がドキドキし始めた。

 そんなドキドキと戦っていたら一番安心する顔でドキドキが一気に吹っ飛んだのだが、美祢は教室の入口のところで固まっていた。

 ここ最近話してなかったり元気が無いように見えてたのは補習のことを考えてたのかな?

 というかやっぱり美祢も補習だったのか。

 集合時間の5分前になりようやく補習の生徒がゾロゾロと入ってきた。俺一人じゃなくてちょっと安心したということもあるが、俺以外にも意外と多数の生徒が補習になっていたということで不思議な安心感を感じだ。きっとこの安心感はダメな安心感なのだろう。集団心理という奴か。

 時間になると先生が入ってきて淡々と補習の説明をした。

 説明を聞くにつれて若干安心気味だった俺のテンションがどんどんテンションが下がっていった。それは俺だけでなく教室全体のテンションが下がっていたように感じた。

 夏休みの10日ほどが補習で潰れること、補習の最後にテストがあってそこで赤点を取ると1学期の点数は赤点で確定してしまうこと、そして1年間に同じ教科で2度赤点を取ると留年が確定すること。

 留年という現実味のない言葉が俺たちをドキドキさせた。言葉では知っているが既に自分が黄色信号くらいになっている状況を確認させられた。

 そして早ければ2学期が終わった時点で留年が確定することもあるという言葉の圧力をかけられ不安は増大していく。

 夏休みの補習のテストで再び赤点を取ってしまうと留年リーチというわけだ。

 隣に座った美祢をチラッと見てみると何故かニコニコしていた。

 この状況でニコニコしているのは美祢一人だ。

 あいつのメンタルがよくわからない。もしかして何か秘策でもあるのだろうか?

 先生は言葉でプレッシャーを与えるだけではなく各教科の宿題を配り始めた。

 一人ずつ名前を呼ばれ宿題と時間割が渡された。

 その時間割を見ると意外と補習の時間が多くなくて驚いた。想像ではもっとびっちり1日中やるのかと思っていたからだ。

 それに俺の教科がない日もあった。

 今日は早々と解散を言い渡されて解放されたのだが教室を出るときには少しはテンションが回復していた。

 当たり前の流れで美祢と帰るわけだが美祢は終始ニコニコだ。補習がそんなに嬉しいのか? 本当によくわからない。

「ねぇねぇ、城野くんって国語って補習?」

「おっおう」

 俺はびっくりして返事することしかできなかったが、なぜ美祢が俺の補習教科を知っているのか。もしかして桃花先輩が既にバラしているとか?

 それに美祢の笑顔が一層嬉しそうに変わった気がした。

 今日はやけにご機嫌だけど本当にどうなってるんだ? 当たり前だが美祢以外の補習の生徒は俺も含めてなかなかのローテンションだぞ。

「私もね、国語が補習なのー。日本語なのに難しいよねー。日本語が赤点っておかしいよねー」

 なるほど! と一人で勝手に納得した。 俺と同じ教科だったから安心してニコニコしてたのか? 俺も知ってる人がいれば安心するものだ。心強くはないけど。

「帰りに宿題して行こ? どこかに寄って」

 美祢にしてはなかなかのグッドアイディアだった。

「一人でやるよりも二人でやったほうがなんとかなるかもしれないからな」

 美祢と何かすることって実はあまりなくてちょっとワクワクしていた。戦力になるかどうかはわからないのだが俺も赤点だから人のことは言えないし。

 俺の返事を聞いた美祢は嬉しそうに飛び跳ねていた。

 最近コイツのこういうところ見てなかったな。と思っていたら腕も組んで俺を引っ張る。

 入学早々の時は当たり前に腕を組まされて連れ回されていたけど久しぶりの感覚を思い出して何か懐かしい感じがした。

 最近は茶山さんに引き剥がされまくって怒られて美祢もあまりくっついてこなくなってたしな。

 でも入学したときのソワソワと落ち着きのない美祢ではなくて、何故か落ち着いてただ嬉しそうにしている普通の美祢(・・・・・)が隣にいた。

 普通ってなんだろう? でも今日の美祢はいつもと違って女らしいというか……あれ? 俺?

 結局ファミレスで美祢と二人補習の宿題をやってご飯を食べて楽しく普通にお喋りした夏休みだった。

 普通に楽しかった。

読んでいただいてありがとうございます

風邪っぴき状態で喜んでおります

おかしいな。予約したはずなのになってなかったので後書きの2回目を書いております(笑)

久しぶりに美祢とノブの二人中心のお話でしたがちょっと雰囲気が違う二人どうでしたでしょうか?

大人しい美祢は今後どうなってしまうのか

ではまた来週。。。


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