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第13話

 夢の時間は終わったのだ。ゴールデンウィークという夢の時間。

 ある人はバイトに勤しみある人は海外旅行に行き、またある人は部屋でゴロゴロと過ごす。どう使ってもいいたっぷりとあった自由な時間は過ぎ去った。

 カレンダーを見ると赤い文字は日曜日だけ。夏休みまでは祝日が無い。

 さらに俺たち学生には試験という関門が待ち構えている。しかも夏休みまで2回も。そんな悲しいことを突きつけてくるゴールデンウィーク明けにもかかわらず俺はせっせと旅行部の部室に足を運んでいる。そう、各部室が並んであるプレハブ小屋の一番奥だ。

 ゴールデンウィーク明けだからかは分からないが美祢が今日一日全力全開でくっついてきていて俺はもうヘトヘトだ。久しぶりだったのでちょっと面倒くさかったのだが、ゴールデンウィークの前半の休みの後も今日みたいみくっついてきてたな。

 あいつの言う恋人ごっこっていう設定も意味わかんないな。ちなみにその張本人は掃除当番を全力でこなしているようで、最初は待ってろと言われてたが掃除しているのか散らかしているのかわからなくて時間がかかりそうだったので隙をみて先に部室へ向かっているというわけだ。後で何を言われるか分からないが別にかまわない。悲しいことにいつものことだ。


 部室に近づくと一人の女の子が旅行部の部室を見ているように俺の目には映った。うん、たぶん見ている、すごく見ていると思う。違和感があってすぐに気がついた。体育館と本校舎をつないでいる廊下の柱にしがみついてピクリとも動かないでじっと部室を見ている。きっと1年生だろう。俺たちと同じ色の上履きを履いている。

 ちなみに旅行部を見つめている女の子は見たことがない人だ。つまり旅行部の部員ではないのだが一体なんの目的であんなところから旅行部を監視しているんだろう。生徒会の回し者がちゃんと活動しているか偵察するために送り込んでいるのか、だとしたらゆかり先輩がいるから監視の必要はないと思うのだけれど……ゆかり先輩が一応旅行部の人間だから完全な第三者を監視としてつけているのか。

 周りの部活の人たちもその子のことを遠巻きに見ているがその子は他に目もくれず旅行部だけ見ている。あんなに見てるとなんか気持ち悪いな。声はかけない方良さそうだが俺はこのまままっすぐ部室に行ってもいいのだろうかと悩んでしまう。

 しばらく観察しているとその女の子はキョロキョロと周りを見渡し始め何度も首をかしげている。そしてうなだれてはいるがどこかホッとしたようにも見える表情で立ち去っていった。

 一体何がしたかったのか? この場に美祢が来てたらどうなっていたのかはちょっと見てみたかったがそれは完全に他人事としてだ。きっと俺は巻き込まれてしまうから想像だけに留めておく。遠からずその場面は来るだろう。



 そしてその女の子は次の日もその次の日も現れた。



 こんなの気になるだろうと思って先輩達にそれとなく聞きいてみたが案の定というか誰も気がついていなかった。先輩たちが周りを見ていないのか気にしないのか、それとも俺が気にしすぎなのか、もしくは俺にしか見えてないのか? そんな怖いことはやめてほしい。そういう部活じゃないですから。

 美祢には聞かなかった。聞かなかったし、あえて美祢が部室に来る前に先輩たちに聞いていた。

 言うと美祢が興味を持ってしまったらすぐに会いに行ってしまうからだ。いや、興味を持ってしまったらではなくて、『興味を持ってしまう』だった。美祢は最終手段だ。

 『なんで声をかけてあげないの? かわいそうじゃない』とでも言って怒られてしまうかもしれない。どちらかというと興味を持って本能のままに接触しそうだが。

 おそらく美祢が何も言わないというのであれば、きっと美祢は接触していないだろうしきっと見つけても気がついてもいないと思う。美祢は気がついたらすぐに皆に報告するような人間だと思うからだ。

 とりあえず暇なときにでも旧校舎を回って探してみよう。もしかしたら居るかもしれないし、通常の彼女の状態が見られるかもしれないし、なにか事情があってああなっているのかもしれないし。

「ノブくん? 何ぼーっとしてるのかしら? 次はノブくんの番ですわよ!」

「ほえ?」

 桃花先輩の声が急に脳内に響いてお決まりのようなとぼけ方だった。わざとじゃない。本当に声が出てしまった。完全に旅行部を観察している女の子のことを考えすぎていた。

 そういえば今はゴールデンウィーク中に出された宿題を各自発表している最中だった。

「オトボケボーイかな」

 先生が安そうなパイプ椅子に足を組んでセクシーに座っている姿が目に映った。今日は黒いストッキングなのか。先生の脚きれいだなとか考えると俺の席の後ろの奴みたいになってしまうので一旦部室の中を見渡した。

 俺にヘンテコニックネームをつけてそれを聞いて腹を抱えて笑う美祢に桃花先輩の隣に大人しく座っているがお菓子を頬張っているゆかり先輩にパイプ椅子を反対にして座っている日田先輩。ホワイトボードにいろいろと書いている小森江先輩は書記みたいなことをしている。小森江先輩すっごい字が綺麗だと今始めて知った。桃花先輩は司会みたいに振舞ってるけど謎の変な棒を持っているせいでバラエティ番組の司会みたいになってしまっている。よし! いつものメンツだ。落ち着いたかな。

 落ち着いてよく考えたら先生俺に付けたヘンテコニックネームってそのまんまじゃねーか! しかし俺は突っ込まない。突っ込まないぞ、突っ込んだら負けだ。ここは我慢我慢。先生はボケじゃなくてツッコミ。先生はボケじゃなくてツッコミ……

「は・や・く! 旅行部の活動をどうするかをノブくんなりの考えをお願いしますわ」

 桃花先輩に可愛く催促されたが隣でしょんぼりとしているゆかり先輩。

「城野くんはゆかちゃん先輩の話全く聞いてなかったんだね。このオトボケボーイくん! プハっ」

 最後は笑いながらになってる美祢。また腹を抱えて笑い出して止まらない。そうかまた俺はゆかり先輩との溝を深める行為をしていたわけだ。今日に限っては言い訳なしだ。誰の話も聞いてなかったから。威張れることではないのだがあの女の子のことが気になってしまっている。ほらまた頭に浮かんでいた。というか普通あんな変な子が自分の所属する部室を監視しているように見えればみんな気になるだろう。

 なのにさっき先輩たちに聞いて、『見てない』『知らない』のあとにそういう子が居るんですけどどうします? との答えは、

「気にならないですわ」

「放っておけばいいだろ」

「何かあるのであれば直接言ってくると思うけど」

「生徒会はそんな監視するようなことは聞いてないと思うんだけど……」

 とみんながみんなその女の子のことを興味持た無さすぎだろう。

「ホントにどうしちゃったのかしら? また意識がどこか遠くへ行ってますわね」

 桃花先輩が机を乗り越えて俺の体を揺らすと俺の視界がゆらゆらと揺れる。目の前で桃花先輩が左右に揺れてる。そこでまた意識がこちらに戻ってくる。今日はよく頭の中で意識が脱線している。

 結局俺がゴールデンウィーク中に一生懸命考えた旅行部の活動内容は、

「つまんない!」

「真面目か」

「それは旅行部ですることかしら?」

 圧倒的な速さで全否定のダメ出しをくらった。結構真面目に、そして一生懸命考えたのだがどうも旅行部のみんなとズレてるようでこうまでも否定されると凹む。

 志井先生はニヤニヤと笑いながら黙ってこちらを見ている。何か言いたいのだろうか、それとも何かを考えているのか。

 結局のところ、俺が例の女のことを考えて意識がどこかへ飛んでいた間におおかたの旅行部の方針は決まっていたようだ。


 

 俺は次の日の休み時間の間に旧校舎をウロウロしてみたが隣に邪魔者が常にいたせいで結局目的を果たせずに放課後を迎えた。

 今日は美祢と二人で旅行部に向かっている。部室に近づいたところで、ここ最近毎日居た今俺の中で絶賛気になる女の子は居なかった。

 今日ウロウロして思ってたことは俺と美祢が旅行部の人間だと認識があれば声をかけてくるかもしれないと思ってたが声はかけられなかった。向こうが俺たちに気がつかなかったということは十分にあり得るから数日はウロウロしてみようと思った。

 しかし次の日もその次の日もそのまた次の日も気になる女の子は現れなかった。


今週は二次創作を書いて、あっ!二次創作に制限があるんだったと投稿直前までいって気がついて別のところに慌てて登録して投稿するというあわてんぼうぶりを発揮してしまいました。

今日から日本シリーズでプロ野球は大詰め。

旅行部はようやく部活らしいことを次話からはじめると思います。もうすみませんなんだかだらだらと。それが旅行部!っていうことで

ではまた来週。。。


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