表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/73

第12話

 世間はゴールデンウィークに突入。俺たち高校生も飛び飛びながら連休となる。

 せっかく本気の活動が始まるのかと思いきや、桃花先輩は俺たち部員に宿題をぶん投げてゴールデンウィークが終わるまでは部活は休むとのことだ。部長が部が誕生していきなり1週間ほど部活を休むとはびっくりしてしまった。さすが桃花先輩だ。常識には全くとらわれない。

 その宿題とやらは、『これから旅行部でどんな活動をするか。』丸投げっていうんですよね? こういうの。桃花先輩本人が5月の頭に学校を休んで飛び飛びにならない本気のゴールデンウィークをとってヨーロッパ旅行に旅立ってしまったのだからしょうがない。もしかしてお金持ちなのかな?

 

 最初の連休で4月最終日の今日。俺は部屋で適当に旅行部の活動を考えていた。だって真面目に考えてもねぇ。考えているというかぼーっと部屋の天井を眺めているだけだけど。

 考えているだけ真面目じゃないか? きっと旅行部の連中は考えてすらいないだろうし桃花先輩に至っては本人は本当の旅行を楽しんでいるという始末だし。と頭の中でイメージして美祢はなんだかいろいろ考えてる絵が浮かんだ。明日部室に行ってみんながどんな感じなのかを探ってから休みの後半に考えればいいか……

 そういう部活だから大丈夫大丈夫。自分に言い聞かせなくても大丈夫。そんなことを一人でブツブツとつぶやきながら、ここ3日間美祢に会ってない安らぎのひとときを満喫している。

 1日中部屋に閉じこもっていた事実を思い出して自分にがっかりする。がっかりしたついでに運動がてら遠い方のコンビニにでも散歩するかと部屋を出る。これで1日中引きこもっていたという事実はなくなると自分に言い聞かせるように支度をする。

 母親に「あんた家に居たの?」なんて声を掛けられた。トイレも行ったし家の中ではウロウロしてたはずなんだけどな。確かに家の中で遭遇はしてなかったけど。そんな母親に明日の朝ごはんを頼まれた。ついでのおつかいだ。

 春の夜風にあたりながら、Tシャツだとまだ肌寒さを感じながらの散歩となってしまった。肌寒さから一回家に戻ろうかと思ったが階段を上るのが面倒くさくなってそのままコンビニに行くことにした。

 途中誰に会うこともなく、そういえばみんなどの辺に住んでいるのだろうかなんて頭に浮かんだ。通学途中に旅行部のメンバーに会ったことがなかったからふと考えてしまったのだ。

 俺の中でいつも一番に頭に浮かぶのが美祢だ。別に好きとかそういうのじゃないのだけれどいつも一緒にいるしすぐ浮かんでしまう。

 通学も美祢と一緒だったら騒がしいだろうなと想像して一人で震える。夜の肌寒さか美祢の騒がしさかどちらかは分からなかった。

 


 散歩にしては短い散歩だったし知ってる道だったし夜だったから景色も暗かったので別に目新しいものを見つけるわけもなくコンビニにたどり着いた。

「いらっしゃ……い……ま……」

 消え入りそうな声で出迎えられたのでレジの方を向くと俯いたままの女の子が一人立って

いた。

 なんだ? 新人で恥ずかしいのかな? 顔が見えないけどたまに利用する時には居なかったと思う。女の子一人だけだし、そのレジの子は俯いてるって最近は安全とは言えない治安だから大丈夫なのか? と心配してしまう。

 お菓子のコーナーやジュースのコーナーをウロウロする。特に目的がないままコンビニにやってきたので漫画でも立ち読みしようかと本のコーナーに張り付いた。お客さん誰も居ないな。

 特に読みたいものもなくもう帰ろうかなと考えながら本をペラペラとめくる。内容は全く頭に入ってきていない。ただ読んでるふり。

 入ってきてウロウロして何もせずに帰ると変な人かな? と自分で思ってしまってなぜか立ち読みのふりだ。自分でも何やってるんだと自分に突っ込む。

 散歩のついでのコンビニなのか、コンビニに行くついでも散歩なのかすでに目的がわからなくなってる状態でやって来たコンビニで物欲が全く湧かずに困り果てる。コンビニでフラフラして何もしないで本だけ読んで帰るという行為になにか罪悪感が生まれてせめてジュースでも買おうと決心する。別に大した決心じゃないのだけれど。

 コーヒーでも買うかと目に付いたコーヒーを手に取ろうとした瞬間に先日のことがフラッシュバックしてコーヒーをスルーして隣の紅茶を手に取る。

 あのコーヒーソーダは酷かったなと嫌な思い出が沸き上がってくる。そんな嫌な記憶を思い出しながらレジに向かうと知った顔が目の前に居た。そう、レジの中で俯いてなくてはっきりとこちらを見ていた。俺がレジの子に目線を向けると逸らされた。いつもの事なので慣れてきましたよ。悲しいことですけど。

「あの……」

「いらっしゃいませ」

 俺が声をかけようとしたらいらっしゃいませでかき消された。でも俺は挫けずに声をかけてみようと試みるがお辞儀をしたまま顔を上げてくれない。そんな深々なお辞儀いらないですから。

「えっと……せんぱ」

「150円になります」

 またかぶせられた。お辞儀をしたままシラを切るつもりかななんて思っていたら、急にお辞儀を終了して俺の持ってた紅茶をものすごい勢いで掴みバーコードを通して会計に言った。

 もしかして俺が入店した時から気がつかれてたのかな。だから俯いてたのか。

「あの先輩?」

「……温めます!」

 急に大きな声で遮られたがおかしい事を言い始めた。

「いや、先輩温めますじゃないですよ。それ冷えてる飲み物ですから。どうしちゃったんですか?」

 慌てて先輩の手を掴んでしまった。細い腕。

 四辻先輩がレンジの方を向いたまま固まった。俺が手を離しても固まったままだ。

「せんぱーい。どうしました?」

 反応はない。固まったまま全く動かない。綺麗なストレートの黒髪の髪の毛1本すらピクリとも動かないほどの完全停止だ。

 ゆっくりと、ねじ巻き式のおもちゃのようにギギギなんて音がしそうな感じでカクカクとこちらに向いてくる。

 先輩なんで涙目になってるんですか。そんなうるうるな目でじっと見つめられると3倍増しに可愛く見えますよ。そんなことを考えてる間もいつもはすぐ目を逸らす先輩が全く目を逸らさずにこちらを見つめ続ける。まさに直視!

 無言で見つめ合う二人。コンビニのレジを挟んで。

「あの! 城野くん。私がここでバイトしてることはみんなに内緒ね! あっいや、バイトの許可はちゃんと取ってるんだけど。でもでもみんなには内緒ね絶対絶対!」

 先輩が俺に始めてちゃんと喋ってくれたと思ったらおもいっきり早口で聞き取るのがやっとでちょっと圧倒されてしまった。いつも桃花先輩達と喋ってる落ち着いた四辻先輩ではなかった。

 確かにうちの学校はバイトは基本的には禁止だけど許可をもらってるのであれば別に隠す必要もないし何故だろう? それよりも慌ててる先輩がとっても可愛い。あわあわしてる。

「城野くんなんで黙っちゃったの? ねぇなんで黙っちゃったの? 内緒にしないと城野くんがコンビニでエッチな本を読んでたって美祢ちゃんに言っちゃうよ」

「いやいやちょっと待ってください。エッチな本なんて読んでないですから。先輩落ち着いてくださいよ」

 相変わらずとっても早口だったが内容はとんでもないことを言い出した。先輩テンパってるのか?

 俺の後ろで困ってたお客さんを先に会計してもらう。先輩はあきらかにおかしい接客になっていてがお客さんはいい人だったみたいで笑っていた。

「恋バナかい?」

 おじさんが帰り際にさりげない感じは一切無く、あからさまに笑いながら言って帰って言った。手を振るというおまけ付きで。

 おじさんが変なこと言うからまた空気が変な感じになっちゃったじゃないか。もう店の中にはお客さんいないよな? 見渡すと誰もいなかった。この時間に人が居ないってたまたまか? たまたまじゃなかったらあんまり繁盛してないと思ってしまう。時間帯はまだ夜の8時を過ぎた頃だから割とお客さんがいるイメージだし。

「別に先輩が内緒っていうなら言いふらさないから大丈夫ですって。その代わりもうちょっと俺と喋ってくださいね。旅行部の中でちゃんとしてるの先輩だけなんですから」

 俺はそう言って帰ろうと自動ドアに向かい歩き出したところで手にしている紅茶を万引きしそうになっていることに気がついて回れ右をしてまたレジに戻る。まだ会計を終わらせてなかった。

 さらりと決めたつもりが物凄くダサかった。

「それは取引? ……頑張って……もうちょっとお話する。シン……くん」

 いつもの先輩に戻ってるようだった。ボソボソと俺の聞き間違いかジョウノくんっていったのかな?

 よくわかんなかったけど先輩が頑張って喋ってくれるなら……頑張って? 頑張らないと俺と喋れないのか。それは地味にショックだな。あとシンくんって言ったような気がしたけどちょっと意味が分からなかった。

 会計を終わらせて帰るときにすごくダサかったので最後に思い切って先輩を呼んで手を振ってバイバイした。

「ゆかり先輩! また明日」

 顔を真っ赤にして先輩は俯いてしまったけどその反応がまた可愛かった。これからはこっちのコンビニを使おうかな。部室で喋れなくてもこっちだったら少し喋れるかもしれないし。そんなゆかり先輩の秘密をちょっぴり知ってなんだか俺しか知らないことなのかな? なんて変なことを考えてしまった。

 家までの散歩も夜風が気持ちよかったのは気のせいじゃなかったが、母親の朝ごはんのおつかいをこなせてなかった。

布団大好き人間からすると厳しい季節がやってきます。

基本的に寒がりなのですでに朝晩が寒いです。

先日会社の飲み会で久しぶりに酔っ払いました。

最近はお酒よりもコーヒーが大好きです。

コーヒーソーダはちょっと嫌な思い出があります。。。

ではまた来週。。。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ