第11話
いつものプレハブ小屋の部室。
しかし今日は音一つしないほど静まり返ったプレハブ小屋の部室。
誰もいないわけじゃない。俺に、美祢、桃花先輩に日田先輩と小森江先輩そして四辻先輩。最後に顧問となった志井先生。
全員が入ると物だらけの旅行部の部室はちょっと狭くて椅子を畳んでスペースを確保している。そしてテーブルを中心において皆立ったまま。まさに立食パーティのような感じになっている。そう! ちゃんとテーブルの上には紙コップだがジュースが注がれた飲み物がまさに立食パーティの様に並んでいる。
いつもの騒がしい旅行部が周りの部室の音が聞こえるくらい静まり返っている。テニス部の女子の声がキャッキャキャッキャと聞こえてくる。今まで一度も聞いたことがなかった。それほど旅行部が騒がしかったのだろう。
なぜこんな珍しい雰囲気になっているかというと、ついに旅行部が部として認められ皆で部室に集まり記念の会が実行されているからだ。言いだしっぺはもちろん桃花先輩だ。
「では4月28日、本日が旅行部の誕生日となりますわ。最初の頃はただ集まれるだけでいいと思っていたり、やっぱり部になったほうがいいなとかやっぱり面倒くさいからいいやとかフラフラしてたけれども、後輩のノブくんと沙耶乃が入ってきてわたくしたちだけの集まりじゃなくなったんだなって意識したりワクワクしたりしましたわ」
「モモ!真面目な話はにあってないぞ。もういいだろ」
桃花先輩が真面目に話している途中に、田先輩が横槍を入れて邪魔をした。でもみんなニコニコ笑ってる。こういう感じがいつもの旅行部だ。
大真面目な旅行部なんて似合ってない。正式な部になったからといって明日から真面目に活動が変わるとかじゃないんだ。
桃花先輩は真面目に喋ってるんだから邪魔しないでって日田先輩を怒ってる。それをニコニコと見つめる四辻先輩。その横でテーブルの上に置かれた飲み物をフライングして飲み始めている小森江先輩。
なんだか俺と美祢だけがソワソワしているようだ。
先輩たちの一体感が改めてすごいと感じている。
「じゃあカンパーイ!」
俺がいろんなことを考えている間に桃花先輩のありがたいお話はおわったようで一気に部室が騒がしくなる。
俺も今日くらいは先輩たちに負けじと騒いで、あわよくば四辻先輩とお話できればと思い紙コップに入ってる飲み物を最初くらい一気に飲み干そうと口の中に流し込む。
流し込まれた飲み物は俺の体が反射的に吐き出してしまった。そしてみなさんのご想像通り四辻先輩にかかってしまった。
俺は起こっていることがよく分からずに未だパニック状態。
「さすがハリキリボーイくん。盛り上げてくれるけどちょっと盛り上げすぎじゃない?」
先生が落ち着いた口調でツッコミを入れる。先生はツッコミもできるんですねなどと俺は意外にも冷静なパニック状態。
日田先輩と桃花先輩が大盛り上がりなのをみて俺の飲み物になにかされていたのかと気がついた。
冷静さを取り戻した俺は冷静に今の状況を理解しようとしたところで隣にいた美祢が俺と同じように飲み物を噴き出した。
しかし美祢はさっき自分の飲み物を美味しそうに騒ぎながら飲んで……俺の飲み物を飲んだようだ。美祢の好奇心って怖いもの知らずだな。
「うわーなにこれまずーい。やばいやばいやばい」
美祢がパニックに騒ぎ始めて日田先輩と桃花先輩はさらにお腹を抱えて笑っている。この二人完全にただのいたずらっ子状態である。
ヴェーという変な音が聞こえた。
変な音の方を見ると先生までもが謎の飲み物を吹き出している。先生何やってるんですか? 二人も同じようになってるのに頭おかしいんですか?
「これなに? まっずい! 世の中にこんなものが存在するの? というかこれ体内に入れて大丈夫なものなの? 私の体変になったらワンパクオジョーが責任とってよね」
責任とってとかいいつつ先生自分で飲みましたよね?
俺の些細な疑問はまたあだ唖然とすることだけになった。なんで小森江先輩も飲んでるんですか? そしてこっそり吐き出さないでください。音もなく吐き出そうとしても音が出てますから。
小森江先輩は何も言わずにただひたすらにまばたきをしていた。
「えっそんなにまずいの? ちょっと俺気になってきた」
「え? アッキーも飲むのかしら? じゃあわたくしも飲んでみようかしら」
そう言いながら俺の紙コップに入れられていた飲み物の正体の本体が出てきた。
コーヒーソーダ? と書かれたペットボトル。一体どこでそんなものが売られているのだ。きっと見つけた時に大はしゃぎで買うふたりの姿は容易に想像できた。
仲良く紙コップに入れてせーので飲んだ。そして二人同時に吐き出した。吐き出すときはせーのって言ってないけど同時にそして豪快に。
四辻先輩以外全員コーヒーソーダを一口飲んで吐き出している。なんだこの部活ゲテモノ飲食部か?
床はベチャベチャになって汚れているし四辻先輩は俺が噴き出したコーヒー浴びたまま呆然と立ち尽くしたままだしみんな大笑いだし俺も楽しくなってきて笑うしかないし。
みんなで笑って盛り上がっていたら最後に四辻先輩もコーヒーソーダを口に入れた。四辻先輩まで何やってるんですかと思ったら飲み込んだ。
唯一飲み込んだ。吐き出すのが恥ずかしかったのか、でもよくあの変な飲み物を飲み込めたなと感心しているとコーヒーソーダの本体を紙コップに注いでいる。
全員の目が『えっ』と固まった。
四辻先輩も首をかしげて頭にハテナマーク。
今部室に居る全員が固まった状態。
「あっ! お、美味しいかも」
ありえない言葉が四辻先輩の口から出てみんなまた大盛り上がり。俺も勢い余って四辻先輩と言葉をかわそうと声をかけてみた。
「いやいや美味しいとかありえないっすよ。みんな吹き出すくらいマズイっすよ」
飲み物吹きかけちゃってごめんなさいのついでにちょっと? おちゃらけて見たがどうでるかドキドキしながら自信なさげに先輩を見た。
「わ、私……味オンチ……なの。知ってるから」
ああああもう俺はだめだ。四辻先輩とは全く噛み合う気がしない。どうしてこうも裏目裏目裏目に出るんだ。わかってたけど四辻先輩と会話しようとすればするほど溝が深まっていく。
吹きかけちゃったのは俺が悪かったけど味オンチはわかんなかった。でも冷静に考えればあの飲み物を美味しいというのだから味オンチは確かに想像できた。
先輩は制服どうしようなんて言って困ってるけど助けてあげられないし俺は何がしたかったんだ。
「でも先輩と会話できたじゃん」
冷静に美祢が教えてくれた。そういえば今までは会話もできてなかったから一応一歩前進? と言っていいのか分からないが進んだのか? 正直微妙すぎる。
みんな盛り上がりすぎて非常に騒がしくなっていることに気がついて、小森江先輩の顔が浮かんだ。いつも騒がしいと怒られた時に謝りに行っているから自然と探してしまったが部室に見当たらない。さっきから騒いでる割にはスペースが増えた気がしてたが気のせいじゃなかったようだ。
居ない。
小森江先輩どこいったのかなと部室の外に出てみるといつの間にか部室の外でコーヒーソーダをテニス部に振舞っていた。
テニス部員も見事なまでに吹き出していた。そりゃそうなるよね。だって口の中に入れた瞬間に体が拒否するんだから。
そして旅行部は誕生したその日に志井先生まで含めて部員と顧問全員で怒られて、さらには夜遅くまで部室の掃除をするハメとなり、お約束のように掃除中に騒いでまた怒られた。
旅行部らしいといえばらしい船出となった。
始めて自動投稿というシステムを使ってみました。ちゃんと投稿されてるかな?笑
夏アニメが終わって久しぶりに寂しい感じです。
あのゲームを作るやつが大好きすぎてで全巻予約してしまいました。
また秋アニメはあのテニスのアニメが始まりますのでワクワクです。
今週はF1も日本グランプリでもう木曜日からソワソワしてます。
旅行部もいよいよ本格活動していきそうな感じです。ちょっとずつですが進んでまいりますのでよろしくお願いします。ではまた。。。




