第一章 第五節 鬼誕
暗い倉庫の中、心もとない電球がチカチカと点滅をしている。その反復がまるで人の心臓のように何度も何度も繰り返される。時には力なく明かりを消してしまう時間もあるのだが・・・
「くそっ、どこだよ!」
男は女子高生のバッグをあさっている。そのバッグにはキーホルダーがついており、そこには『琴子』と書かれている。
「何でないんだ!」
男はバッグを投げ捨て、頭を抱えた。
「あれが人の目についたら・・・。俺はおしまいだ!!」
近くのバケツを蹴り飛ばす。するとそこから・・・
「探し物はこれですか?」
少年が顔を出した。その手には男が探しているものが・・・
「お前は・・・高宮!なぜそれを・・・」
男、中林は驚いた顔で僕の顔を見た。そして、僕の持っているカメラを。
「先生が僕達の新聞を見ていたとき、僕は途中の先生の表情の変化を見落としませんでした。人は予想外のものを見たときに、目を丸くし、一点を見つめます。先生はこれを見たんじゃないですか?」
僕はそう言って一枚の写真を持ち上げた。そこにはたくさんの警察、の中に警察の格好をした中林の姿があった。
「僕は探偵ではないので、先生が現場で何をしていたか分かりません。が、恐らく証拠となりうるものをなくしたと言った感じでしょう。それ以外、殺人事件があった場所に殺人が嫌いな先生がわざわざ警察の格好をして行くわけないでしょうからね。恐らくは、先生が持っているカバンの不自然に切れているキーホルダーってとこでしょうか?」
中林は下を向いたまま口を閉じたままだ。口元からは泡がぶくぶくと出ている。何かを言っているみたいだ。
「俺は・・・鬼だ。」