戸惑いと迎え
閲覧ありがとうございます!
今回も短めですがよろしくお願いします
イケメンきたぁぁぁぁああ、なんて気分が上がる前に不意に頭が冴えた
知ってるような知らないような感覚が私を襲う
「………は?主人ってなに…っていうか、貴方…は……」
うっとりと頬を緩める軽く肩にかかるほど伸びた黒味がかった銀色の髪に青い空のような瞳の黒スーツのイケメン
どう考えても不自然で、どう見てもこんな場所とは不釣り合いで、まるで、まるで……
「人に見えない…ですか?」
「!?」
こっちを見たまま笑顔でゆっくりと首を傾げ私の思考の先の言葉を口にする
なんの音もしない筈なのにドクドクと音がする、冷や汗が止まらない
違和感を意識しないようにすればするほどはっきりと違和感が浮き出る
見たことのない黒い靄が目の前の男性に纏まりついている
どこか身体が燃えてるわけでもないし虫が飛んでいるわけでもない
無意識に一歩一歩とイケメンから距離をとろうと後ろに下がる
それに気付いたイケメンは少し悲しげな表情を浮かべると長い脚ですぐ様その距離を埋めると同時に私の右手首を掴んだ
「どうして逃げようとするんですか?私は貴女を迎えに来たのに」
「迎え…って、これ全部貴方のせいなの!頼んでないし、貴方のこと知らないのについて行くわけないじゃない!」
「…そう、ですか。……そうですね…まだ貴女はあの方ではないですから仕方ないですね。」
右腕を振りその手を振り解こうとするも力が強く一向に手を離す様子はない
悲しげな表情に何故か胸が痛むがこの変な状況の原因なら抵抗しない筈がない
拒絶の意を露わにすればよくわからない言葉を呟きながら俯いた
「わかってくれ「けれど逃がしません」…!」
手首を握る力は衰えないものの否定されないことから安堵の笑みを浮かべた瞬間、俯いていた顔を上げ仄暗い闇を宿した瞳と目が合った
私の言葉に被さるように発された言葉だけでなく逃がさないと言わんばかりの瞳に身体が動かなくなる
指先から冷たくなるのがよくわかる、心臓の音が自分の呼吸音が大きく聞こえる
嫌な予感しかない、避けなければいけないと何処からか声がする
ぐいっと急に引っ張られ抵抗する間も無く男の腕の中へと導かれる
すっと冷たく綺麗な指が私の頬を這う
「会いたかったのです、どうしても。貴女がいない世界なんて耐えられません…メリッサ様」
苦しげな声に動かない身体を必死に動かそうとし口を開ける
が、私の言葉は音として出ることなくほんの少し硬く手をよりも熱い唇に飲み込まれた
「ん…っ、んんーっ!!」
なんでどうしてそうなった!口付けられる意味がわからん!
混乱する私は置いていかれ空いた唇の隙間から暖かな何かが中に入ってくる
動くようになった左腕で男の胸を叩くも意味はなくあっという間に右手首同様捕まった…ちくしょう!
「…は、…ふぅ…っ」
「可愛らしいですね、メリッサ様…いえ、朝霧千萱…さん」
「な…わた、…の、なま、え…んぐっ」
ぼぅっとするしてきた頭に教えたはずのない私の名前が聞こえた
散々貪られ回らなくなった舌で問いかけようとするがそれすら叶わず何か丸い球体の様な物が押し込まれた
突然の異物に身体が拒否反応を起こす
胃の奥から想像もしたくないものがせり上がる
「ああ、吐き出さないで飲み込んでくださいね?…貴女に必要なものですから」
真っ青になっているであろう私の顔色から男は察したのか悲しげな表情から一転にっこりと笑顔で再び口付けるとぐいぐいと物を押し込んでくる
呼吸すらままならず拒否反応に逆らってそれを飲み込んだ…飲み込んでしまった
「こ、れ…なに……」
「貴女をお迎えするにあたって、必ず渡さなければいけないものなんですよ。さて、少し休んでいてくださいね…おやすみなさい」
がくがくと震えが止まらず意識が遠ざかる私を他所に男は楽しそうに身体を支えると横抱きに私を抱いた
ふざけるなと叫びたい気持ちを抱いたまま私の意識はそのままぶつりと切れた