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ヤンキー戦隊 グラスマン  作者: りったんばっこん(原案:小波奈子様)
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戦その肆拾肆 心強い味方

 明野明星あけのみょうじょう美奈子みなこの衝撃的な「敗北」というか、「屈服」により、Z県立鮒津高校での戦いは幕を下ろした。


 裏生徒会の面々は、美奈子が敗北したのを知り、全面的に降伏し、戦いの意志がない事を表明した。


(赤井君が無事でよかった)


 密かにヤンキーレッドこと赤井真一に恋心を抱いていた生徒会第一書記の五島ごとう誓子せいこは、ホッとしていた。


 だが、彼女はまた、真一自身がヤンキーパープルこと村崎香織に夢中になっている事に気づいてはいた。


 だから、告白するつもりはなかった。


(私のような不細工な女が告白したりしたら、赤井君に迷惑がかかるから)


 忍ぶ恋を選んだ誓子であった。


(美奈子さんが、あんな中途半端なハーフと結婚の約束をしただなんて、幻滅だ……)


 美奈子にずっとアプローチをしていたが、全く相手にしてもらえなかった副会長の二東にとうはやては、百年の恋も覚める状態になっていた。


 但し、美奈子が結婚を迫ったヤンキーパンサーこと黒田パンサーは、ハーフではなく、両親共に日本人であるが、その日本人離れした濃い顔のせいで、颯は勘違いしている。


(チャンスかも!)


 そんな颯の心変わりを見抜き、彼に好意を抱いている第一会計の三椏みつまた麻穂まほは誰にも見られないようにガッツポーズをした。


(香織さん、そんな奴と楽しそうに話さないで!)


 第二書記の六等むとう星太せいたは、真一が一方的に香織に話しかけているのを見て、妄想を膨らませている。


(俺、これからどうしよう?)


 パンサーにトラウマを植え付けられた第二会計の士藤しとう四郎しろうは途方に暮れていた。


「しっかりなさって」


 気絶してしまったパンサーを膝枕して介抱している美奈子を見て、


(明野明星さん、本当はいい子なのよね。ちょっとホッとした)


 微笑ましく思っているヤンキーグリーンこと笹翠ささみどり茉莉まりである。


(明野明星さんは、矢野が何者なのかは知らないと言っていた。となると、(矢野)は一体?)


 美奈子も知らない数学教師である矢野やのあらたの正体を考え、茉莉は深刻な顔になった。


「先生、茶川さがわ博士を助けに行かないと」


 真一の妄想劇場を振り切って、香織は茉莉に近づいた。茉莉は香織を見て、


「そうね。明野明星さん、茶川博士はどこにいるのか知っている?」


 美奈子に視線を巡らせた。美奈子はパンサーから茉莉に目を動かして、


「茶川博士は私の邸の地下牢にいるはずです」


「いるはず?」


 茉莉と香織はその言い回しに違和感を覚えて鸚鵡おうむ返しに尋ねた。


「はい。私が最後に博士と会ったのは地下牢ですが、その後どこかに移された可能性があります」


 美奈子は愛おしそうにまだ意識が回復しないパンサーの頬を撫でながら言った。


「どういう事?」


 茉莉は美奈子に近づきながら尋ねた。美奈子はパンサーを見たままで、


「私には一回り以上離れた姉がいます。そもそも、茶川博士に用があったのは、姉なのです」


「ええ?」


 茉莉と香織は意外な展開に思わず顔を見合わせた。


(美奈子さんのお姉さん? 初耳だ。きっと美しい方なのだろうな)


 節操のない男である颯は、美奈子の姉の美祢子の本当の容貌と性格を知らずに興味を持った。


「そして、姉には御庭番衆というボディガードがついています。その首領である宵野明星よいのみょうじょうおさむは私のお師匠様です」


 茉莉と香織は美奈子の話にハッとなった。


(ジジイもそんな事を言っていたわね)


 茉莉は茶川が言っていた事を思い出した。


(治さん……)


 そして茉莉は、元同級生の治の事も思い出した。だが、彼女は、その治に口づけされ、相思相愛だった事を朦朧とした意識の中で確認したため、何も覚えていないのだ。


「そして、笹翠先生の同級生なのですよね?」


 美奈子は悲しそうな顔で茉莉を見た。茉莉は自分の心の中を美奈子に覗かれたような気がして、ビクッとした。


(ああ……)


 そしてまた一人、香織も心中穏やかではなかった。彼女もイケメンで強い治に心を奪われているのだ。


(笹翠先生とあのひとは相思相愛だとわかっているのに、私、何を考えているのかしら……)


 未だに治の事を諦め切れていない自分に気づき、香織は自己嫌悪に陥った。


「それでも、ジジイ、いえ、茶川博士を助けに行かなければならないわ」


 茉莉は心を見透かされないようにと虚勢の笑顔を見せ、言った。すると美奈子はパンサーを膝からゆっくりと下ろして地面に寝かせて立ち上がった。


「私も参ります。姉とは決着をつけなければなりませんから」


 美奈子の言葉に茉莉と香織は喜色に顔を輝かせたが、何故か真一はビクッとした。


(罠じゃないのか?)


 真一は美奈子がパンサーにどうやって負けたのか知らないので、まだ美奈子を信用していないのだ。


 どこまでもズレている男であった。


「それは心強いわ。明野明星さんが味方になってくれれば、百人力以上よ」


 茉莉は微笑んで美奈子の参加を歓迎した。


「そうですね」


 香織も微笑んで同意した。


「では、急ぎましょう」


 美奈子が告げると、


「矢野先生はどうしますか?」


 香織が言った。茉莉は意見を求めるように美奈子を見る。すると美奈子は、


「矢野先生は恐らく姉と関わりがあります。姉が在校生だった当時も、矢野先生はいましたから」


「なるほど、繋がってきたわね」


 茉莉は大きく頷き、ポンと手を叩いた。


「私のリムジンを呼びますから、それで乗り込みましょう。但し、御庭番衆の襲撃があるので、覚悟をしてくださいね」


 そんな緊張感のある事をにこやかに告げる美奈子を見て、


(やっぱりこの子、変わっているわ)


 茉莉は苦笑いして応じた。


 


 一方、美奈子の読み通り、地下牢に監禁されていた茶川は、美祢子の指示により、邸の最深部にある美祢子の部屋の一室である居間に移され、椅子に縛り付けられていた。


「茶川さん、喜びなさい。お仲間が助けに来てくれるようですわよ」


 美祢子がニヤリとして茶川に言うと、茶川は、


「当然じゃ。イーヒッヒ。皆、私の弟子じゃからの。イーヒッヒ」


 真顔で応じたが、言葉がふざけているので、美祢子はムッとした。


(このジジイ、人を食った言動は相変わらずね。それよりも気になるのは、あの方の事だわ)


 美祢子は居間のドアのそばに直立不動で立っている治を見た。


不良おバカさん達に(美奈子)が加勢したようですわ。ちょっと気をつけた方がよろしいわよ」


 美祢子は愉快そうに治に言った。すると治は、


「関係ありません。私は遥かに強いですから」


 無表情に告げると、一礼して、居間を出て行った。


(お互い潰し合いなさい。最後に笑うのはこの私よ)


 美祢子は狡猾な笑みを浮かべた。

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