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ヤンキー戦隊 グラスマン  作者: りったんばっこん(原案:小波奈子様)
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戦その参拾捌 トラウマエネルギー全開

 敵である矢野やのあらたがどれほど強いのか全く知らない自称ヤンキー戦隊のリーダーであるヤンキーレッドこと赤井真一は、余裕の笑みを浮かべて矢野と対峙していた。


「ヤンキー戦隊グラスマンのリーダーであるこのヤンキーレッドが来たからには、もうお前の敗北は確定だぞ」


 ビシッと右手の人差し指で矢野を指し示した真一は、一人悦に入っていた。


(赤井君、いつから貴方はリーダーになったの?)


 ヤンキーグリーンこと笹翠ささみどり茉莉まりとヤンキーパープルこと村崎香織は、可哀想な子を見る目で真一を見ていた。


(赤井君、まずいよ。矢野先生、半端なく強いよ)


 ヤンキーパンサーこと黒田パンサーも真一を心配して見ていた。


「でかい口を叩くな、赤井真一。お前はクラスメートに宿題の写しを強要されても何も言い返せないヘタレのくせに、口だけは達者か?」


 矢野はさげすんだ目で真一を見て、嘲笑した。真一はビクッとしそうになったが、何とかこらえ、


「口だけではない事を見せてやるよ!」


 言うや否や、矢野に突進した。


「受けて立とう!」


 矢野はフッと笑って真一の突進を真正面から受け止めた。


「ぐべえ!」


 茉莉達の予想通り、真一は矢野のボディアタックに跳ね飛ばされ、保健室の窓を突き破って校庭に飛び出してしまった。


「ヤンキーレッド!」


 茉莉と香織とパンサーが異口同音に叫んだ。


「やはり口だけだったな、ヘタレが。お前は一生誰かの使いっ走りで人生を終えるんだよ、赤井。それがお似合いだ」


 矢野は腹を抱えて大笑いした。その時、


「まだまだ!」


 真一は窓の外から飛び込んできて、その勢いのまま矢野に頭突きを見舞った。


「それも受けて立とう!」


 矢野は再び真正面から真一のフライングヘッドバットを三段腹で受け止め、跳ね返してしまった。


「二度は通用しないぞ!」


 真一はそれを想定していたのか、バク宙をして着地し、部屋の隅に踏みとどまった。


「だが、それまでだよ、赤井!」


 その着地した真一に矢野が更に仕掛けた。続けざまの三段腹のボディアタックである。


「ぶへえ!」


 それを顔面でまともに食らってしまった真一はもんどり打って壊れた窓から再び外に出てしまった。


「ヤンキーレッド!」


 茉莉と香織が絶叫した。


「リーダー!」


 パンサーが意外な叫び声をあげたので、茉莉と香織は、


「え?」


 何言っているの、こいつという顔でほぼ同時にパンサーを見た。


「歯医者、ハイシャ、はいしゃー!」


 真一の雄叫びが聞こえた。


(赤井君?)


 茉莉と香織は顔を見合わせた。茉莉は真一の「異変」に気づき、


(もしかして、トラウマスイッチ、入ったの?)


 真一のトラウマは不良に絡まれて前歯を三本折った事である。矢野のボディアタックで歯が折れたのだ。


「うん?」


 矢野は真一の雄叫びを意味不明に思い、眉をひそめた。


(よし、赤井君、反撃だ!)


 パンサーは思わずガッツポーズをした。それに応えるかのように、口からダラダラと血をしたたらせている真一がもう一度窓から戻ってきた。


「まだ懲りないのか、赤井? 何度やっても同じだぞ?」


 矢野は真一が無駄な頑張りをしていると思い、ニヤリとした。


「歯医者、ハイシャ、はいしゃー!」


 真一は更に雄叫びをあげ、矢野に向かって走り出した。


「無駄だと言っているだろう!?」


 矢野は真一の叫びにイラつき、ボディアタックで今度こそ止めを刺してやろうと激突した。


「何!?」


 ところが真一は吹き飛ばされなかった。それどころか、矢野の身体をジワジワと押し戻しているのだ。


「ふざけるな!」


 矢野の右の張り手が真一の左頬を一閃した。しかし、真一は一瞬よろけただけで倒れなかった。


「痛かったんだぞお! もの凄く痛かったんだぞお!」


 真一は目を血走らせて矢野を睨みつけた。悲しい事に赤いサングラスのせいで、それは矢野には見えていなかったが。


「しつこいぞ、赤井!」


 矢野は突進をやめない真一の後頭部目がけて両手を組んで振り下ろした。グシャッという音がして、真一が崩れ落ちた。


「赤井君!」


 聞こえてはいけない音を聞いてしまったので、茉莉も香織もパンサーも、ヤンキーレッドとは言えず、真一の名字を叫んでいた。


「てめえは地べたに這いつくばっている様が似合っているんだよ」


 矢野は乱れたバーコードヘアを櫛で直しながら、


「藪な歯医者に前歯を全部抜いてもらえ!」


 そう言って、高笑いをした。すると、真一の身体が輝き出した。


(何が起こっているの?)


 茉莉はまた香織と顔を見合わせてしまったが、状況が理解できず、首を傾げてしまった。


(赤井君!)


 回復してきたパンサーは起き上がり、真一の様子を見守った。


「な、何だ?」


 矢野も真一の身体が輝いているのを見て、さすがに奇妙に思ったのか、飛び退いた。


(どういう事だ? 私の知らない何かがこいつらのスーツには内蔵されているというのか?)


 矢野の額を焦りの汗が流れ落ちた。


「歯医者の話はやめろー! もの凄く痛かったんだぞー!」


 不意に真一が起き上がり、矢野の顔面に右ストレートを叩き込んだ。


「ぐばべ!」


 完全に虚を突かれた形となった矢野はそれをまともに喰らい、逆にもんどり打って仰向けに倒れた。


「歯医者の痛みを知らないお前に何がわかるんだあ!」


 真一の攻撃は止まらない。倒れている矢野に馬乗りになり、その顔にショートフックの連打を見舞った。


(あれくらいじゃ、死なないよね)


 茉莉は先程の香織の攻撃でも復活した矢野の事を思い出し、自分に言い聞かせた。


(今度は止めない。とことんやってしまって、赤井君!)


 心の中で応援する茉莉である。


「痛かったんだぞお!」


 真一はもう一度叫び、右ストレートを矢野の鼻に叩き込んだ。グキッと鼻骨が折れる音がして、矢野の鼻から血が噴き出した。


 その凄まじさに香織は息を呑んだ。


(ちょっとやり過ぎじゃない、赤井君)


 パンサーは自分が殴られているような恐怖を感じていた。




 その頃、明野明星邸の地下牢に監禁されたままの茶川さがわ博士ひろしは、何かを感じたのか、


「赤井君、もう一息じゃな。イーヒッヒ。その男は強敵じゃぞ。イーヒッヒ。何しろ、わしが最初にスーツを渡した元正義のヒーローじゃからな。イーヒッヒ」


 そう呟き、その場にしゃがみ込んだ。

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