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ヤンキー戦隊 グラスマン  作者: りったんばっこん(原案:小波奈子様)
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戦その参拾漆 自称リーダー登場

 一瞬形勢逆転したかに見えたヤンキーパープルこと村崎香織の攻撃も、すぐに矢野やのあらたなされてしまった。


(奴には勝てないというの?)


 ヤンキーグリーンこと笹翠ささみどり茉莉まりは額から幾筋もの汗を垂らしながら、矢野と香織を交互に見た。


「女だと思って手加減してやったのに許さねえぞ!」


 矢野の攻撃目標はヤンキーパンサーこと黒田パンサーから香織に移ってしまった。


「くっ!」


 茉莉はまだ完全回復していない身体を無理に動かし、香織の救援に向かおうと思ったが、立ち上がった途端、ふらついてしまい、歩く事ができずに倒れてしまった。


「味わってから殺そうと思ったけど、生意気だからすぐに殺してやるよ、クソ女!」


 矢野はニヤリとしてジャンプすると、そのまま倒れている香織にフライングボディプレスを食らわせた。


「ぐうう……」


 巨体に押し潰され、香織はうめき声をあげた。


「ヤンキーパープル!」


 茉莉が涙声で叫んだ。矢野は嫌らしい笑みを浮かべ、


「おお? お前、ガキのくせにでかいおっぱいしてるじゃねえか? やっぱり味わってから殺すか?」


 両手で特攻服の上から香織の胸を掴んだ。


「いやああ!」


 香織は絶叫した。目の前には矢野の気持ち悪い顔があり、臭い息を吐く口が迫っている。香織は気絶しそうだった。


(そう言えば、赤井君はどうしたの?)


 茉莉はその時不意にもう一人のヤンキー戦隊のメンバーである赤井真一が姿を見せていない事に気づいた。


(役に立たない奴ね!)


 茉莉は心の中で毒づいてから、瀕死状態のパンサーを見た。


(黒田君、回復しているみたいだけど、まだとても戦える状態じゃないわ)


 そしてもう一度香織に視線を移した。


「まずはキスさせろや!」


 矢野はバーコードの髪を振り乱して、嫌がる香織に唇を突き出した。


「やめろ、変態教師!」


 茉莉は再び立ち上がって怒鳴ったが、立っているのがやっとで、前に進む事はできなかった。


「うるせえよ、貧乳! 次はてめえだから、おとなしく待ってろ!」


 矢野は茉莉を睨みつけて怒鳴った。


「何だとお!?」


 その一言が、茉莉のトラウマエネルギーを全開にした。彼女は急速回復し、矢野に突進した。


「む?」


 さっきまでフラフラしていた茉莉が突然走り出したのを見て、矢野は身を起こした。


「誰が貧乳だ!」


 茉莉は突進力を利用して矢野の首めがけてラリアットを放った。


「そうくると思っていたよ、おバカさん」


 矢野は茉莉の行動を見切っており、彼女の右腕を両手でブロックし、逆に掴んで投げ飛ばしてしまった。


「やられるか!」


 ところが茉莉も矢野の投げに堪え、遠心力を利用して、背後から矢野の頭にトゥーキックを見舞った。


「ぬあ!」


 意表を突かれた矢野は前のめりになった。茉莉は矢野の後ろに着地し、続けざまに背中にニーバットを決めた。


「チョロチョロとうるさい女だな!」


 だが、矢野はそれをものともせず、左の裏拳を放った。


「くう!」


 茉莉は辛うじてそれを飛びのいてかわした。


「少し寝てろ!」


 ところが、更に矢野は茉莉にボディアタックを見舞ってきた。


「うわ!」


 茉莉はそれには対処しきれずにまともに食らってしまい、破壊された保健室のドアの向こうまで跳ね飛ばされた。


「さあて、続きを始めようか、村崎君」


 矢野は舌舐めずりして香織を見た。香織は震えそうになった。


「さっき、君が踵落としを放った時に見てしまったのだが、あのパンツはやめたほうがいいな。身体は大人なんだから、もっとセクシーなパンティを履いたほうが男に持てるよ」


 矢野はますます嫌らしくて下卑た顔で言った。その時だった。


「うわあああ!」


 香織が絶叫した。彼女の身体が輝き出し、フワッと浮いて、立ち上がった。


「な、に?」


 矢野は何が起こったのか理解できないのか、呆然として香織を見ていた。


「はあああ!」


 香織は気合いを入れると、矢野に一瞬にして接近し、腕を交差させて矢野の首にぶつけた。


「ぐえええ!」


 矢野の太くて短い首に香織の両腕がまるでハサミのように食い込み、締め上げていく。


「村崎、さん?」


 ようやく半身を起こした茉莉が香織の反撃に目を見開いた。


「私のパンツを笑うなあ! お気に入りなんだぞお!」


 香織は鬼の形相で矢野の首を絞め続けた。


「お気に入りなんだぞお!」


 もがく矢野を押さえ込み、香織は更にその首を絞め上げる。


「お気に入りなんだぞお!」


 香織は今自分が何をしているのかもわからない状態なのか、同じ事しか言わずに矢野の首を絞めた。


「ぐえええ……」


 矢野は白目を向き、口から泡を噴き出していた。


「お気に入りなんだぞお!」


 矢野は完全に失神していたが、香織は攻撃をやめない。


「いけない、村崎さん、死んでしまうわ!」


 茉莉が慌てて駆け寄り、香織を矢野から引き剥がした。そのせいで、矢野は前に崩れるように倒れ、顔面を強打した。


「は……」


 矢野から引き離されて、香織はやっと我に返る事ができた。


「私、一体?」


 香織は倒れている矢野を見てから、自分を後ろから抱きしめている茉莉を見た。


「よくやったわ、村崎さん。このハゲオヤジ、もう気を失っているから」


 茉莉は涙を流して香織の健闘を讃えた。


「え?」


 香織はその言葉にハッとして、もう一度矢野を見た。


(村崎さんのトラウマは、幼稚園児にスカートをめくられて、クマさんパンツを見られた事。だから、矢野がパンツの事に触れたのを切っ掛けに、トラウマエネルギーが更に振り切れたのね)


 冷静さを取り戻した茉莉はそう推理した。


「あれ?」


 そこへようやくヤンキーレッドに変身した真一が駆け込んできた。


「あれれ、もう終わってしまったの? あれ、これは矢野先生? 生徒会の誰かにやられたの?」


 矢野の強さを全く見ていない真一は唐変木な事を言った。


「違うわよ。矢野が敵だったの」


 茉莉が呆れ気味に正解を告げた。


「えええ!?」


 更に驚愕する真一である。


「ちょっと油断したよ」


 すると気を失ったはずの矢野の声がした。


「ええ?」


 茉莉はビクッとして香織を庇うように前に立った。


「いやあ、死ぬかと思ったよ」


 ニヤニヤしながら、矢野が飛び起きたので、一番近くにいた真一が飛びのいた。


(殺すしかないっていうの、こいつ?)


 茉莉と香織はまた嫌な汗を掻き、矢野を睨んだ。


「ハッハッハ、ここから先は、このヤンキーレッドが引き受けるぜ!」


 矢野の戦いを全然見ていない真一は余裕の表情で言い放った。


(赤井君、殺されちゃうよ……)


 かなり回復してきたパンサーが心の中で呟いた。

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