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ヤンキー戦隊 グラスマン  作者: りったんばっこん(原案:小波奈子様)
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戦その参拾陸 弱点なし? 矢野新の驚異

 いつものように強烈な強気発言で登場したヤンキーパンサー。だが、その中の人は日本で一二を争うほどのビビリで臆病者の黒田パンサーである。


「口だけは達者だね、黒田君。だが、本当は怖くて仕方がないのではないかね?」


 矢野は右の口角だけを吊り上げて尋ねる。中の人のパンサーは、


(ひいい! 見抜かれてる! もうダメだあ!)


 パニック寸前であったが、


「うるせえよ。怖くなんかねえよ。ぶちのめしてやるから、かかって来いや!」


 表のヤンキーパンサーは両手の中指を立てて更に挑発を強めてみせた。


 矢野はそんなヤンキーパンサーの行為を鼻で笑い、


「よかろう。ならば、君の言うとおりにしてあげようか」


 言うや否や、パンサーに電光石火のボディアタックを炸裂させた。


「ヤンキーパンサー!」


 それを見ていたヤンキーパープルこと村崎香織とヤンキーグリーンこと笹翠ささみどり茉莉まりがほぼ同時に叫んだ。


「うおりゃあ!」


 ところが、ヤンキーパンサーは矢野の動きを見切っており、横に移動してそれを難なくかわすと、その後頭部に延髄斬りを叩き込んだ。


 矢野は自らの突進力にヤンキーパンサーの蹴りの威力を加えられ、そのまま保健室のドアに激突して突き破り、廊下へと飛び出し、更にその先にあった消火栓に激突してしまった。


「やった!」


 茉莉と香織は思わず歓喜の声を上げた。


「でけえ口叩いた割には、自爆かよ、矢野? みっともねえな」


 ヤンキーパンサーはそれを見て腹を抱えて笑った。しかし、


「思ったより動きが機敏だね、黒田君。驚いたよ」


 そう言いながら、崩れたドアと壁の下から現れたのは、全くの無傷状態の矢野だった。


「ええ!?」


 茉莉と香織は顔を見合わせて叫んでしまった。


(そんな! 矢野先生、どうなっているんだ?)


 中の人のパンサーは仰天していたが、表のヤンキーパンサーはフッと笑って、


「そう来なくちゃ面白くねえよ、先公! もっとぶちのめしたいんだからさ!」


 余裕の表情で右手の人差し指をクイクイと動かした。


「減らず口もそこまでだよ、黒田君。次はこうはいかない。覚悟したまえ」


 矢野はスーツに着いている壁やガラスの破片を払いのけながら、ヤンキーパンサーを睨みつけた。


(あれだけの衝撃を受けて、どうして矢野先生はかすり傷一つ負っていないの?)


 養護教諭である茉莉には、その点が大いに疑問であった。


(身体は鍛えれば強くなるし、痛みにも耐えられるようにはなる。でも、ドアを突き破って、壁を崩してしまう衝撃があったのに、皮膚が全く傷ついていないなんて、考えられない)


 茉莉は矢野の異常とも言える頑丈さに薄気味悪さを感じた。


(矢野先生は人間なの?)


 香織はそこまで想像してしまった。


「終わりだよ、黒田君」


 矢野は次の瞬間、パンサーの視界から消えていた。


「何!?」


 強気一辺倒のヤンキーパンサーもさすがにこれには焦って周囲を見渡した。


「ここだよ、黒田君」


 ハッと声がした方に目を向けると、矢野はパンサーの足元にしゃがみ込んでいた。


「ぐはっ!」


 矢野のバーコードハゲが見る見るうちにパンサーの顔に迫り、そのままぶち当たった。パンサーは鼻骨と前歯をへし折られ、血とよだれを撒き散らしながら、もんどり打って仰向けに倒れた。


「まだおネンネには早いぞ、小僧。この私の頭に蹴りを入れた報いはその程度ではすまさんからな!」


 矢野は乱れたバーコードを櫛でセットし直すと、スーツの襟元を直し、大の字に倒れているパンサーを見下ろした。


(人間の急所の一つである首の後ろと後頭部に大きな衝撃を受けても何ともないなんて、こいつは一体何?)


 茉莉も香織と同じく、「矢野人間じゃない説」に傾きかけていた。


「げほ……」


 パンサーは血に噎せ返りながらも、起き上がろうとした。


「寝てろよ!」


 ところが、矢野がその血だらけの顔面を右足で力任せに踏みつけた。


「がああ!」


 パンサーは溜まらずに叫び声を上げた。


「ヤンキーパンサー!」


 矢野の非情とも言える行動に茉莉と香織が涙声で絶叫した。


「おらおら! くたばっちまえよ!」


 矢野はニヤニヤしながら、続けざまにパンサーの顔だけではなく、胸や腹を踏みつけた。


「やめて! 死んでしまうわ!」


 香織がたまりかねて怒鳴った。すると矢野は蹴るのをやめた。香織がホッとしていると、


「うるせえよ。死なすつもりでやってるんだよ、バカが!」


 矢野は香織に怒鳴り返してまたパンサーを踏みつけ始めた。香織はショックのあまり、何も言えなくなった。


(ヤンキー戦隊のスーツには自動治癒装置が付いているけど、あそこまで連続して蹴られたら、本当に黒田君は死んでしまう!)


 茉莉は自分の身体が動かないのに歯痒さを感じ、拳を強く握りしめた。


「どうした、もうくたばったか、クソ野郎が!」


 矢野は嬉しそうに笑いながら、反応がなくなったパンサーの身体を蹴り続けた。


「やめてー!」


 香織が遂に回復し、立ち上がった。矢野はそれに気づくとパンサーを蹴るのをやめ、香織を睨みつけた。


「うるせえんだよ、クソ女! てめえからぶちのめしてやろうか?」


 矢野が香織に向かってゆっくりと歩き出した。


「ヤンキーパープル、逃げて!」


 やや回復してきた茉莉が叫んだ。


「遅い!」


 その時すでに矢野は香織の背後に回り込んでいた。


「じっくり味わってから、絞め殺してやるよ」


 矢野は香織の両肩に手を置き、耳元で告げた。その時だった。


「私のォ、後ろにィ、立つなァァッ!!」


 香織が雄叫びをあげ、鋭い裏拳を放った。


「ぶへっ!」


 完全に不意を突かれた矢野はそれを喉元に喰らい、呻き声を上げて後退した。


「私のォ、後ろにィ、立つなァァッ!!」


 最大のトラウマを刺激された香織は振り切れていた。次に右後ろ回し蹴りが同じく矢野の首元を一閃した。


「げべっ!」


 裏拳を叩き込まれて怯んでいた矢野はそれもすれすれでかわし、尻餅を突いてしまった。


「私のォ、後ろにィ、立つなァァッ!!」


 まだ振り切れたままの香織の次の攻撃が始まった。尻餅を突いた矢野の脳天にかかと落としを炸裂させたのだ。


「調子に乗るな、クソ女が!」


 しかし、矢野は香織の脚を真剣白刃取りの要領で受け止め、そのまま振り上げると、床に叩きつけた。


「ぐう……」


 香織は床に倒れてしまった。


(何だ、今のは?)


 矢野は香織の突然のレベルアップしたかのような攻撃に目を見開いていた。


(村崎さんの攻撃が少し効いたように見えたのは、気のせい?)


 茉莉も一瞬矢野が怯んだのを見逃さなかったが、すぐに反撃したのを見て、混乱していた。

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