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ヤンキー戦隊 グラスマン  作者: りったんばっこん(原案:小波奈子様)
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戦その参拾肆 強敵 矢野 新

 数学教師の矢野やのあらたの意外な言葉にヤンキー戦隊の面々は驚愕していた。


「もし、生徒会の連中が何か仕掛けてきたら、構わないから変身しなさい。今は何を置いても、自分達自身の安全確保が最優先よ」


 ヤンキーパープルこと村崎香織は、県立鮒津高校の養護教諭で、校内で唯一の味方でもある笹翠ささみどり茉莉まりの言った事を思い出していた。


(もしかして、今こそその時なのだろうか? 私達の正体を知っていながら、脅迫をしてくる矢野先生は、新たな刺客かも知れない)


 三人の中で一番冷静な香織はそう思っていた。ところが、自分ではヤンキー戦隊のリーダーだと思っているヤンキーレッドこと赤井真一は、


「矢野先生が生徒会の顧問なのは知っていますが、先生のおっしゃっている事がどうにもわかりません。もう少し説明していただけませんか?」


 まだとぼけようとしていた。香織は項垂れそうになったが、何とかこらえ、真一に異を唱えようとした。


「なるほど、確かにそうかも知れないな。君の言う通りだ」


 意外にも、矢野が真一の提案に乗ってきたので、呆気に取られた。


(どういうつもりなの、矢野先生?)


 香織は矢野をいぶかしそうに見たが、真一とヤンキーパンサーこと黒田パンサーはホッとした顔をしていた。


(どこまで呑気なの、二人共!?)


 香織は真一とパンサーの反応に腹を立てた。


「君達は、町外れに住んでいる変わり者として有名な茶川さがわ博士ひろしを知っているね?」


 矢野は香織、真一、パンサーの順に顔を見ながら言った。


「誰ですか、その人? 全然知りません」


 真一は顔を引きつらせながらもおとぼけを続けようとした。香織は更に唖然とした。


(赤井君、どこまでシラを切る気なの? 限界だと思うんだけど?)


 香織は真一の自爆とも思える無茶な「作戦」を何とか止める手立てはないものかと思案した。


「なるほど、そう来たか。案外しぶといな、君達は」


 矢野は苦笑いをして腕組みをした。その時、チャイムが鳴った。


「仕方がない。また次の休み時間にここへ来なさい。今度はこんな時間稼ぎは許さないからな」


 矢野は真顔になって告げた。パンサーと真一はビクッとしたが、香織は拍子抜けした。


(あっさり解放するなんて思わなかった)


 だが、次の休み時間にも来るように言われてしまったので、油断はできないとも思った。


「失礼します」


 香織は一刻も早くこの場を去った方がいいと考え、真一とパンサーを引きずるようにして応接室から直接廊下に出た。


(まあいいさ。好きなだけとぼけろ。こっちにはいくらでも方法はあるのだからな)


 矢野は真一達の背中を見てニヤリとした。


 


 一旦は教室に戻った香織だったが、一計を案じて、次の授業の担任に体調が悪いと申し出て、保健室に行った。


「どうしたの、村崎さん?」


 茉莉は香織の緊迫した顔を見て尋ねた。香織は廊下を見回してから保健室のドアを閉じ、ロックした。


「矢野先生が私達の秘密を知っているようです」


「ええ?」


 茉莉は思ってもいない人物の名前が出たので仰天した。


「そう言えば、矢野先生は生徒会の顧問だったわね。その関係という事?」


 茉莉は自分の机に戻りながら言った。香織は茉莉に出された丸椅子に腰を下ろして、


「ええ。矢野先生自身がそう言っていました」


「そうなの」


 茉莉は腕組みをして考え込んだ。香織は大きくため息を吐いてから、


「どうすればいいでしょうか? 今回は解放されましたが、次の休み時間にも応接室に来るように言われたのです」


 茉莉はしばらく思案していたが、


「行く必要はないわ。あなた達は全員、早退しなさい。担任の先生には私から話をしておくから」


「でも、それは一時しのぎにしかなりませんよ」


 香織は賛成しかねるとういう顔で意見した。しかし、茉莉は、


「一時しのぎでも、引き延ばすしかないわ。矢野先生がどこまであなた達の秘密を知っているのか、まだはっきりしていないし、ましてや、もう一度応接室に行くのはリスクが大き過ぎるわ」


「それはそうですが……」


 香織はそれでもなお承服しかねる口調だ。すると茉莉は、


「あなた達の代わりに、私が矢野先生と話します。あなた達の秘密を本当に知っているのであれば、私が話があると言えば、応じるはずだから」


「それでは笹翠先生が危険過ぎます。賛成できません!」


 香織は思い余って立ち上がった。茉莉は微笑んで、


「ありがとう、村崎さん。私なら、大丈夫。昔、茶川博士に言われていた事を思い出したの」


「え?」


 何の事かわからない香織はキョトンとした。茉莉は立ち上がって香織の両肩を掴み、


「人の思いより強いエネルギーはないって、あのジイさんが言ってたの。だから、大丈夫」


 香織はますます意味がわからなくなっていた。


「その話、もう少し詳しく教えてもらえませんかね、笹翠先生?」


 ロックされたドアの向こうから、矢野の声が聞こえた。茉莉と香織はギョッとして思わずドアを見た。


 すると、ロックが外から開けられ、スッとドアが開いて矢野が中に入って来た。


「思った通りだったよ。一時の猶予を与えれば、必ず誰かが笹翠先生のところに行くと推理したんだ」


 矢野は妙に嬉しそうだ。そのせいで、茉莉と香織は身震いしてしまった。


「私はこの校舎の全ての鍵を管理している。そんな事もお忘れですかな、笹翠先生?」


 矢野の狡猾な笑みを見せ、二人のそばに歩み寄ってくる。


「村崎さん、変身して!」


 茉莉は香織を庇いながら叫んだ。


「はい! 変身!」


 二人はほぼ同時にヤンキーパープルとヤンキーグリーンに変身した。


「ほお、これは凄い。世界的に名の知られた茶川博士の発明しただけの事はある。素晴らしいですな!」


 矢野は二人の変身に全く動じる事なく、歓喜の声をあげた。


「減らず口もそれまでだよ!」


 茉莉が先に動き、電光石火の早業で右回し蹴りを矢野の右脇腹に炸裂させた。


(決まった……?)


 香織は一瞬そう思ったが、矢野が微動だにしていないのに気づき、ハッとなった。


「何をしたのかね、笹翠先生?」


 矢野は痩せ我慢している様子はない。茉莉の渾身の一撃を受けても全く痛みを感じていないようだった。


(何、こいつ?)


 茉莉は危険を感じて後退した。

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