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ヤンキー戦隊 グラスマン  作者: りったんばっこん(原案:小波奈子様)
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戦その参拾参 明野明星美奈子の思惑

 Z県立鮒津高等学校の生徒会長である明野明星あけのみょうじょう美奈子みなこは、生徒会の役員達に所謂いわゆる不逞ふていやから」を取り押さえる事を許可しなかった。


 その最大の理由は、ヤンキー戦隊グラスマンの生みの親である茶川さがわ博士ひろしが開発した死者すらも蘇生させる試験薬の正体が不明な事だった。


 ヤンキー戦隊を捕縛して、茶川を脅迫する事はできようが、想像を絶する程のひねくれた性格の持ち主である茶川が、そのような定番のやり方で屈するとは思えなかったのだ。


 現に、唯一の理解者と思われる笹翠ささみどり茉莉まりの身を脅かす事を言っても、茶川は全く怯まなかった。


(茶川を屈服させる方法は何? 奴には弱点ウィークポイントはないの?)


 美奈子は歯軋りをした。そして彼女は自分の教室である二年一組に向かった。


「会長」


 そこへ一番下っ端の生徒会役員である六等むとう星太せいたが現れた。


「何ですか、六等君?」


 美奈子はクルッと振り返り、目を細めて星太を見下ろした。星太は思わず後退あとずさりしそうになったが、


「例の三人が保健室から各々(おのおの)の教室に戻りました」


 星太はヤンキー戦隊のメンバーである赤井真一、村崎香織、黒田パンサーの監視を続けているのだ。


「そのまま監視を続けなさい。彼らが仕掛けてこない限り、こちらからの手出しは厳禁です」


 美奈子は背を向けて歩き出しながら告げた。


「わかりました」


 星太は深々と一礼すると、廊下を駆け去った。


 


 真一は自分の教室に帰るなり、いつもの連中に絡まれた。


「お前さあ、何してるんだよ? 今日の二時限目、数学なの知っててサボっていたのか? それ程俺達を陥れたい訳?」


 絡み組の男子生徒の一人が強引に肩を組んで耳元で言った。真一はそいつを見て、


「そんなつもりはないよ」


「だったらどんなつもりでサボったんだよ?」


 更に別の男子生徒が反対側から詰め寄って囁いた。


「もうこんな事をやめて欲しいからだよ」


 真一は二人の押し退けて自分の席に着いた。真一に押された二人はまさかそんな事をされるとは夢にも思っていなかったのか、一瞬唖然としたが、


「てめえ、誰に向かってそんな口聞いてるんだよ?」


 同時に凄んで真一の襟首を掴もうとしたが、


「何を騒いでいるんだ?」


 数学の担任の矢野やのあらたが入ってきたので、慌てて席に着いた。


「昨日出した宿題は全員できているだろうな? 今回忘れた者は居残りをしてもらうぞ」


 矢野は教壇に立ちながら教室を見渡した。真一に絡んいでいた五人はギクッとしてから、一斉に真一を睨んだ。


「それから、赤井」


 矢野が不意に真一を見た。真一は油断していたので、ピクンとして立ち上がり、


「は、はい!」


 素っ頓狂な声で応じた。クラス全体に失笑が漏れた。矢野も苦笑いして、


「何をそんなにびくついているんだ? お前はいつも宿題はやってきているだろう?」


「あ、はい」


 真一は顔を赤らめて俯いた。矢野はニヤリとして、


「話があるので、授業が終わったら、職員室に来なさい」


「え?」


 意外な展開に真一はキョトンとしてしまった。矢野はキッとして真一を睨みつけると、


「返事は?」


「は、はい!」


 真一は直立不動になって応じた。またクラス全体に失笑が漏れた。


 そして、授業が始まり、真一に絡んでいた五人組の居残りが決定し、もう一度真一が睨まれたが、彼は矢野に言われた事が気にかかっており、それに気づく事はなかった。


 授業が終わると、真一はすぐさま教室を飛び出し、矢野を追いかけた。


 五人組の「復讐」が怖かったからではない。何故呼ばれたのか、知りたかったからだ。


「先生、ご用は何でしょうか?」


 真一は矢野に追いつくなり尋ねた。すると矢野は半目で真一を見て、


「ここでは話せないから、職員室に来なさい」


「あ、はい」


 真一はそのまま矢野と一緒に廊下を進んだ。


(何があった?)


 真一を監視していた星太は不審に思って後をつけた。彼は、心を惹かれている香織と一緒にいる事が多い真一を生徒会と対立する者としてではなく、「恋のライバル」として見ているのだ。


 そのせいで、星太は香織やパンサーより真一に監視の目を多く向けていた。


(職員室?)


 星太は真一が矢野の共に職員室に入るのを確認し、その場を立ち去った。


(次は村崎香織さん……)


 顔が嫌らしくなる星太であった。彼は、香織が生徒会と敵対する存在だと知っても、どうしても信じられず、香織に直接問い質そうと考えていたのだ。


(嘘だよね、香織さん。何かの間違いだよね?)


 ここにも一人、妄想の激しい男がいた。


 


 真一は確かに職員室に入ったのだが、矢野は彼を伴って、職員室から直接行ける生徒指導室に行った。


(生徒指導室?)


 そこは問題のある生徒を教師が呼びつけて指導する部屋である。パンサーと同じくらいビビりである真一は嫌な予感がして身体が震えてしまった。


「赤井君」


 ところが、中に入ると、何故か真一の中ではすでに恋人の香織とパンサーが立っていた。


(どういう事だ?)


 真一はますます不安になった。当然の事ながら、パンサーも不安の渦に巻き込まれていた。香織は二人程ではないが、これから何が始まるのか、先が読めないので警戒していた。


「さて、君達にここに集まってもらったのは、他でもない」


 矢野は不敵な笑みを浮かべて、三人を順番に見た。


 真一とパンサーはビクッとして矢野を見た。矢野は真顔になり、


「君達が妙な一団だという事は調べがついている。一体その力の源は何なのか、私に教えて欲しいのだよ」


 思ってもいなかった事を尋ねられ、三人はお互いに顔を見合わせてしまった。


「何の事でしょうか、矢野先生? 意味がわからないのですが?」


 それでも三人の中では冷静な香織が微笑んで尋ね返した。すると矢野は目を細めて香織に詰め寄り、


「とぼけても無駄だよ、村崎君。私が生徒会の顧問なのは知っているよね?」


 その言葉に香織はハッとした。


(生徒会長から全部聞いているという事なの?)


 香織は真一やパンサーとは別の意味で戦慄してしまった。

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