プロローグ 県立鮒津高等学校生徒会
まずは敵方の紹介です。
西暦20XX年。日本は超格差社会へと変貌していた。
関東地方にあるZ県の県庁所在地の鮒津市にある進学校の県立鮒津高等学校。県下でも指折りの大学進学率を誇り、東大京大に三十人以上を送り込んでいるエリート校である。
「生徒会長の明野明星美奈子様のお通りである。皆の者、図が高い!」
廊下を練り歩く一団。まるでどこかの病院ドラマの院長先生の回診シーンのようだが、歩いているのは医者ではなく、生徒会役員達である。
行列の先頭で、露払いのような事をしている天性の太鼓持ちのような仕草が様になっている小男。
彼の名は、六等星太。通称、六等星。
生徒会役員の最下級である第二書記の任に就いている。
只、悲しいかな、彼はイケメンではなかった。どちらかと言うと、おどけメンである。
そして、星太の後ろで、鞄持ちをしている女子生徒と生徒会の会旗を掲げている男子生徒。
女子生徒の名は、五島誓子。生徒会の第一書記の任に就いている。
おかっぱ頭で、ガリガリに痩せており、不健康を具現化したら、誓子になるのではないかという容貌だ。
そんな誓子だが、実はスポーツ万能で、アクティブな女子である。
だが、見た目がアレなので、男子にはモテない。本人もそれをよくわかっており、控え目である。
そして、会旗を掲げている男子生徒。
身長2メートル、体重100キロの巨漢。名は士藤四郎。
見た目と違い、繊細で、理数系の天才でもあり、生徒会の第二会計の任に就いている。
そして、その後ろを威風堂々と歩いているのが、生徒会の頂点である会長の明野明星美奈子である。
その美貌のため、芸能界からの誘いは数知れず、政財界の御曹司達からの誘いも枚挙に暇がない。
長い黒髪は腰まで届き、まるで絹糸のように煌びやかでしなやか。
そして、細い眉の下の瞳は輝きを放ち、長い睫は気品を感じさせる。
鼻筋は通り、高過ぎる事なく、唇も小さくまとまっていて、まさに潤いのあるサクランボの如しである。
無論、美奈子の成績は学年トップ、そして、全校トップ、Z県トップである。
更にスポーツも万能であり、その技量は五島誓子を遥かに上回る。
そんな完璧な女子である美奈子の後ろを守るのは、副会長と第一会計。
副会長は長身で、楕円形の黒縁眼鏡をかけたキッチリ七三分けの美形の男子。
名は、二東颯。美奈子に継ぐ成績で、全校女子の憧れの的でもある。
だが、彼の目には美奈子しか写らないらしく、多くの女子の告白を断わっているという噂だ。
そして、その隣を歩く第一会計の女子、三椏麻穂。
漆黒の髪をボブカットにした一団の中では一番小さく、顔もこれと言って特徴のない地味な生徒である。
だが、生徒会ではナンバースリーの地位にあり、学年の成績も二東に次ぐ。
だから、女子達の憧れの存在である二東の隣を歩いていても、誰も何も言えないのだ。
(こんな制度は間違っている。必ず正す!)
柱の陰から生徒会役員の行進をジッと見ている男子がいた。
赤い縁の眼鏡をかけたボサボサの髪の冴えない風貌の生徒である。
だが、その眼鏡の奥の瞳には、誰にも負けない正義の炎が宿っているのであった。
次回は主役の登場です。