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林間学校積立金はどこへ?(2)

~昼休み~

 4時間目の終了のチャイムがなった。そう、俺の思考は今この時間に正しく戻ってこられた。ただ、タイムマシーンやタイムリープではないので起こったことを変更することはできない。そう、これはただの記憶だからだ。

 俺は昔からこうやって過去を思い出す訓練をしてきた。特に寝る前に一日あったことを朝から高速で思い出すことをするのが一日の最後の日課だ。どこに行っても俺には居場所がなかったので気がつくとベッドに寝転がって天井を見ていることが多かった。だからこそ一日にあったことを思い出していることが多かった。といっても、俺が傍観してきていた世界についてだけれど。そう、4時間目終了のチャイム付近を思い出すんだった。

 チャイムが鳴ってからまず近藤はお弁当を持って後ろの席にいる何とか川という川がつく名前の女のほうに向かって歩いていった。確か佐川だか香川だか田川だがそんな感じだ。

名前を聞き取るのってものすごく難しいんだということをいうと言い訳にしか聞こえないかもしれないが俺に取っては難しいことだ。余談なのでこのあたりは流してくれると丁度いい。

そう、表向きはこの何とか川は近藤と仲良くしているが実は近藤がいないときは一番きついことを言っている。

「ごめん、ちょっと飲み物かって来るね」

 近藤がそう言って購買に走っていく。何とか川ともう一人これまた目つきの悪そうな狐みたいな狐女がいる。名前は上野とかいう。山手線の駅名だから覚えやすい。俺の中でこの狐女は上野動物園から抜け出てきたやつだと思うようにしている。そう思うことですんなりと名前が覚えられたからだ。できればパンダがよかったのだけれど実際パンダに似ている女の子とかが教室にいたらそれはそれで困ると思う。

 一体どんな日焼けをしたらそんな風になれるんだとか突っ込みを入れたくなるからだ。ま、そんなパンダっ娘はいないから突っ込みを入れることもないし、実際にいたとしても俺は机に突っ伏しているだけだから関係もない。

 ちなみに、俺はダイエットのためお昼は食べないようにしている。これ以上マッチョにならないようにするためだ。ガリガリに痩せてまわりに威圧感を与えないようにするのが俺の目標だからだ。でも、なぜか目指すようになってくれない。朝も食べず、昼も食べず、夜も少ない食事にしているのになぜか痩せないのだ。痩せるために体を動かしてもいるのだが、これが不思議と筋肉に変わっていくのだ。思い通りにいかないのが世の中なんて思いたくないとかつぶやいてみてもCルートとかNルートとかの分岐も起きてくれそうもない。ま、この世の中ゲームじゃないから困ったものだ。

 そうそう、近藤がいなくなってからこのなんとか川と上野の二人はこんなことを言っていた。

「なんか、また近藤機嫌悪くない?」

「ね~、なんかマジむかつくんですけれど」

「何かあいつ困ったことになればいいのに」

「ま、近藤ってなんか服とかもみすぼらしいものね。なんか私のシュシュ見ながらずっといいな~を連呼していたのよ。そういうのってfacebookだけにしてほしいわ」

「うわ、まじウケるんだけれど。でも、あの近藤のfacebookってなんかやばくない?」

「あれはやばいでしょう」

 そう、このあたりで近藤が帰ってきたのだ。

「え?何?何?なんの話し?」

 このあたりが女子の怖いところだが二人は、「この前見たfacebookのサイトの話しを言っていたの。なんかバイト先でふざけたのしている人がいて」とか言っていた。

 上野が続ける。

「なんかふざけたバイトは首になるし、損害賠償とかもきたらしいよ。近藤ってそういうことしないよね。まじめだものね。だって、何千万なんて請求きたらうちらじゃ払えないものね」

 そう上野が言った後に明らかに近藤の目が泳いでいた。そして「もちろん、そんなことしないわよ」と言ったが声が上ずっていた。

 俺はこっそり近藤の名前で検索をしてみた。見つけたくなかったがすぐに見つかる。そこにはバイト先でふざけている画像をアップしているのが載っていた。タイトルは「仕事なう」内容から飲食店でのバイト風景と思われるが思いっきりつまみ食いをしているのがわかる。まるでハムスターみたいにほっぺたいっぱいに何かを詰め込んでいる画像だ。これはハムスターにあこがれていたのだろうか。今度からハムスター近藤改めハム藤とでも名づけてみようかと思った。ま、言いにくいので却下であるが。

ちなみに、うちの学校はバイト禁止である。なぜか不良と間違われるので学校の校則は片っ端から読んだのだ。うっかり校則違反なんかをしてしまったら不良と思われてしまうからだ。こういう事に注意をしないと間違われる俺の立場になってみればいいのにと本気で思った。

 ちなみに、さっきの画像はいいねとシェアがされていた。だが、そこにはなんとか川と上野の名前はなかった。こういうところも女子の怖いところだ。つくづく男子でよかったと思うし、孤独が一番身の安全なのではないのかと思う時でもある。

 不思議となんとか川と上野は笑顔だった。目の泳いでいる近藤を見ていて二人が楽しんでいるのがわかるからだ。

 ちなみに、バイト先での悪ふざけのニュースが出ているのを見て盛り上がったていたのが3日前だ。それに感化されて「私もやったよ」って自慢したかったのだろう。だが、なんとか川と上野は冷淡だった。近藤は一人空気を読み違えたのだ。かわいそうに。見ていられなくなったので俺は顔を違うほうに向けた。

 そこにいるのは男子4人組だ。A男、B男、C男、D男。名前って聞き取りにくいって思うのは俺だけなのだろうか?

 いや、どうでもいいことって記憶に残らないのだ。勉強はできないと不良と勘違いされてしまうから頑張るが、必要のないものは覚えたくないのが俺の信条だ。この4人組はいつもふざけながら談義をしている。ゲームの話し、アイドルの話し、クラスの女子の誰がいいとかの話しだ。自分たちの立場をどう認識しているのかわからないが、クラスの女子のランキングをつけていたり、評価ポイントなんかもつくっている。多分彼らは俺にはない何かをもっているのだろう。

ちなみに理解できないがB男はマゾなのか近藤のあの切れる目が言いと言っている。なんだか罵って欲しいとか言っているから普通じゃないのだろう。A男とC男はクラスのすみにいる上岡がいいといっている。上岡の名前は愛だ。英語の時間だと「I’m Ai Ueoka」と言っていたので覚えた。狙ったわけじゃないのだろうけれど、笑いが生まれたため覚えている。A男とC男はこの上岡がいいと言っている。上岡は授業中も休み時間も静かだ。今このお昼も友達と3人でお弁当を食べている。相手を立てることを一番に考えていて、その控えめな態度が好印象らしい。確かに俺もその意見には同意だ。激しく同意してもいい。D男はこれまた違ってなんとか川がいいと言う。なんかこう少し擦れて、でもいかにも自分は手を汚さない立場にいるというフィクサー的ポジションに引かれるとよく言っている。これまたよくわからない。とりあえずB男とD男はマゾなのだろうと思うことにした。

D男が席を立って歩き出した。向かう先はなんとか川のほうだ。D男が言う。

「なぁ、facebookってやってる?」

 多分、その話題は今の近藤にはきついふりだろう。まるでゾンビに聖水をかけるような行動だ。しかも聖水をかけている方は人間なのでその苦しみがまるでわかっていない。あきらかに近藤の目が泳ぎだしている。なんだか見ていられなくてかわいそうになってきた。だが、なんとか川はそんな近藤を見て、ニヤリと笑いながらその話しに乗っかることを決めたらしい。

「うん、やっているよ。そういえば近藤っちもやっているよね」

 なんだ、その「っち」って。そんな呼び方していたっけ?呼び捨てだろういつもは。だが、そのなんとか川に上野も乗りかかってきた。

「あ、私もやってるよ。そう言えば最近更新してないな~近藤っちは更新してる?」

 ニヤニヤ笑っている女子二人。その女子と会話できると思ってB男も混ざってきた。

「え、なになに。みんなfacebookやってんの?どんなのアップしてるの?」

 そういってくるB男に対してあわてて近藤は携帯を取り出してものすごいスピードで何か操作をしている。画面を覗き込もうとしたB男は近藤に振り払われて体制を崩す。

ガタンという大きな音とともに近藤の机が横倒しになる。だが、近藤は見向きもせず携帯を操作している。

「もう、うるさいわね~」

 そう言いながらなんとか川と上野は椅子から動くそぶりはない。近藤は手の動きをとめて席を見た。多分記事を消し終わったのだろう。もう一度近藤で検索をすると前のハムスター近藤の画像はなくなっていた。変わりにアップされているのはどこかで食べたのだろうご飯の写真だった。

「ごめん、ごめん。ちゃんと戻しておくから」

 そう言ってB男は倒れた机と机から放り出された教科書やノートを無造作に机の中に押し込んだ。

「ちょっと、勝手にさわんないでよ!」

 近藤がいきなり大きな声をだした。B男の手が止まる。今から思えばお金が入っているから触られたくなかったのがわかるが、その時はいきなりヒスって意味がわからなかった。まわりもなんだか変な空気になる。

「いや、わるかったよ。机倒して。でも、そんな怒ることないじゃんかよ」

 B男がなだめるように近藤に話しかける。だが、怒りが収まらない近藤はぶつぶつ言っている。それを見たなんとか川は携帯を見ながらこう言った。

「あ、近藤っちのfacebookのこの記事いいよね~いっぱいいいねついている」

 そう言われて近藤は携帯を取り出す。そこにはハム近藤の画像はないはずだ。私も机の上で調べて画像を見てみたがハム近藤の画像はなかった。だが、近藤の顔はどんどん青ざめていく。確かにネット上に出た情報は消したとしてもどこかに残っているらしい。なんだかよくわからないがキャッシュというものがあるらしくてどこかに残っていることが多いらしい。誰かこのあたりを教えてくれたら助かるのだけれど、それを聞く相手が悲しいかな俺の周りにはいない。それに特段必要にもかられてもいない。

 目の前の近藤は追い立てられているかもしれないが、俺みたいな見た目が赤髪でごつい男が何かちょっとでも悪いことや筋違いなことをしてしまったら不良と思われてしまう。それだけは避けたいんだ。俺が目指すのは平穏であって、喧騒ではない。誰かと関わりたいと思わないわけではないが、俺が会話をしようとするとうまくいかないんだ。なぜか不思議な笑みを浮かべていたり、後ずさったりする。そんなに俺が怖いのかといいたいくらいだ。

 などとつぶやいてみたも俺の世界は何も、変わりはしない。

そうそう、狼狽する近藤だ。ここからだとなぜ狼狽しているのかはわからないが明らかに挙動はおかしい。それとも過去に何か変なのがあるのだろうか。

過去の記事を見ようとスクロールをしていたら、D男とB男が言い出した。

「これすごいよな。ハムスターみたいだ」

「でも、これ近藤のサイトじゃないよな」

 どうやらどこかの晒しスレにもう上がってしまっているのだろう。何を見ているのかわからなかったが痛いスレとかバイトやっちまったとかで検索をしたらハム近藤の画像が出てきた。

「やるじゃん、近藤って」

「これ勇者だよな」

 B男とD男がそう言う。そう言われてちょっとだけ優越感に浸ったのか近藤は「まあね」とか言っている。その近藤を見ながら何とか川と上野はものすごくにらみつけている。なんだこの状況は。そんなに腹が立つ行動なのだろうか。俺にはわからない。何とか川がよほど腹が立ったのか足を伸ばして近藤の机を蹴る。さっきB男が無造作に机の中に入れたノートやら教科書が床に落ちる。

「ちょっと、何すんのよ!!」

 また、近藤がヒスってる。

「ごめんって、近藤っち」

 横にいた上野がそう言って教科書やノートを拾おうとする。

「ちょっと触んないでよ」

 そう言いながら近藤は上野を押しのけた。上野が言う。

「ちょっと何よ。ひどくない。親切心で拾ってあげようとしている私を押すなんて」

「うん、今のはちょっとひどいかな」

 A男がそう言うが、A男の目はどちらかというと教室の隅を見ている。その視線の先には上岡がいる。どちらかというと俺も上岡の方を見たいが、この席から教室の隅を見るのは不自然すぎる。ま、どうしたって不自然なのは変わらないが、俺はとりあえず眠くないが寝たふりをして昼休みを過ごしている。そうだ、近藤だ。相変わらずヒスっている。周りも「そんなに怒んなよ」とか「そうそう」「どうどう」

ん?「どうどう?」

どうどうは上野が言っていた。近藤は暴れ馬なのだろうか。確か「どうどう」いや「どーどー」なのかわからないけれど、そのセリフって暴れ馬を鎮める時に言うやつだと記憶している。うん、確かにそうだったはずだ。ま、確かに今の近藤はある意味で暴れ馬みたいなものだ。まるで今にも噛み付きそうなくらいにらんでいる。ま、にらまれているのは俺ではないが。

実際近藤は「そうそう」でも「どうどう」でも気にせずに何か叫んでいる。そしてこう叫びだしたんだ。

「ない、ない」

 ヒステリックが頂点になる。

「何がないの?」

 なんとか川があきれた感じでそう言ってきた。誰もが落ち着くと思ったら更に酷くなったからだ。なんだか場がしらけてきのか、近藤を無視して女性二人と男性二人が話しはじめている。残りの男性二人は少し離れながら教室の隅を見ている。うらやましい限りだ。俺も起き上がってしまえば隅を見ることもできるだろうけれど、もう少しで昼休みも終わりだ。だから、このままやり過ごそうと思った。

 だって、ずっと眠っているんだ。ご飯も食べずに。それがダイエットだと思ってくれるやつなんていない。下手にかまわれてもうまく話せる自身もない。とりあえず授業が始まるまでこのままでいよう。俺はそう思った。もうすぐ授業だ。静かになるなと思っていた。時間割を見るともうすぐ現国だ。この現国って授業はよくわからない。とりあえず教科書は読みやすいように書き込みをしている。わからない単語は辞書で調べる。だって曖昧なまま文章を読んだらそれこそ、この文章を書いた人に失礼だ。それが小説でも評論でも詩でもだ。だから俺はできるだけ書き込みをしている。

 だが、もうすぐ授業がはじまるというのに近藤はずっと「ない、ない、ない」と言って机の中を出しては暴れている。次に近藤はB男に詰め寄って「取ったでしょう!」と言っている。B男は何で切れられているのかわからないから「何が?」と言っている。

「だから、私のお金よ。なくなっているのよ」

「はぁ、だから俺が取ったって?そりゃないよ」

 B男は近藤がいいと言っていた。そのいいと思っている相手から犯人扱いされるんだ。そりゃいやだろう。B男は明らかに狼狽をしているのがわかる。B男が言う。

「俺を疑うのなら上野の方が怪しくないか。落ちた教科書を拾うふりして取ったかもしれないじゃないか」

 いきなり振られて上野は驚愕の表情だ。上野が言う。

「何言っているの、やめてよ。私、そんなにお金に困ってないし」

 次は上野とB男が話し合っている。近藤はカバンを開けて中身を見ているがどうやら見つからないみたいだ。近藤が言う。

「誰よ、誰でもいいわ、お金返してよ」

 まあ、うるさいことこの上ない。うるさすぎる中寝ているのもどうかと思ったので体を起こしてみる。伸びをして周りを見渡す。教室の隅にいる上岡は不思議そうに近藤を見ていて適度な距離を取っているみたいだ。けれど、近づいて何かをしようとしない。

 そりゃそうだろう。こんなものに近づくやつはいない。君子危うきに近寄らずだ。うん?これって使い方あってたっけ。ことわざってなんだか難しいんだ。漢字とか感じがよくわからない。韻を含んでみたがこれといって何も変わらなかった。

 ただ、変わったのは教師が来たくらいだ。現国の加藤先生。このクラスの担任でもある。歳は40代の男性。よく授業の前に海外旅行に行った話しをする。教師という仕事は忙しいというイメージがあるが、どうやらこの加藤先生は適度に休みを取ってどこかに行くのを楽しみにしているらしい。ま、どこまでが実話なのかわからないが。

 いつか話してみたいと思っているが話せていない。英語の榊先生なんか発音が大事といいながら「L」と「R」の区別がものすごくつきにくい人だ。まぁ、どっちでもいいことなのかも知れないが。

 とりあえず加藤先生が来て教室のカオスな状態に秩序が戻った。だが、近藤はその加藤先生に食い下がる。おかげで授業にはならずなんとも言えない良くわからない雰囲気になった。まるで出来損ないの裁判みたいだ。

 だから俺は空気を変えようと思って立ち上がった。ま、保健室に逃げ込んだというのが正解だね。


 俺はその逃げ込んだ先で出会った女の子、と言っても先輩なのは胸にある名札の色でわかる。とりあえず見てきたことは話したはずだ。

「で、どう?何かわかった?」

 まあ、今の話で何かがわかるとは思えない。だが、目の前の女の子は違った。

「確実に、一つ、わかったことが、あり、ます」

 きりっとした顔でそう言うのだ。とりあえず俺はその子の話しを聞こうと思った。


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