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生命の行方・第一部  作者: 杉谷ゆぬの(果樹)
第9章・運命の一日
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ウィンの第六感

「あっ!先生さん!こんにちわ!」

俺が出勤すると、真っ先にユキちゃんにあった。

「あれ、ユキちゃん。久しぶりな気がするけど」

「うん。わたし、ロナさんにお世話になることになったから、準備をしてたの」

「そうだったんだ」

「そういえば、先生さんも今日は早いね。いつも寝坊してるんだよってロナさんが言ってたよ」

「ん?うん……。なんか、嫌な予感がするときってだいたい目が覚めちゃうんだ」

「いやなよかん?」

「たとえば、病院内で事件が起こったりとか……」

「ウィンストン!たた、大変だ!」

説明しようとしたとたん、部長がすごい焦りようで俺のところにやってきた。

「部長。どうしたんですか?」

「ニコルと、スギサキくんが……行方不明なんだ……!」

「えっ!?」

「お兄ちゃんが……?」

「昨日、ニコルは夜勤じゃなかったはずだ。でも、荷物も残ってるし帰った形跡もない。ニコルの患者の3人に昨日の夜のことを聞いたら、スギサキくんと一緒にいたと言うんだ。もしかしたら、二人は……」

部長が言いたいことは十分にわかってしまった。

「でも!あいつは……」

「あの男が警察に捕まっていても、研究者はまだたくさんいるんだろう……」

「……!」

だとすれば、ユキちゃんが狙われる可能性だって大いにある。

「俺、警察行ってきます!ユキちゃんは部長と一緒にいて!」

「うん、わかった!」

俺は、自宅に戻り、車に乗り換えて警察に向かった。




(マサヤ、俺たちあの人たちに捕まっちゃった方がよくなかったか?)


なんか、今まで出てこなかった人物が出てきた。

幼い俺に話しかけているそいつは、俺よりも少し年上な感じがした。


(なにいってるんだよ!?つかまったら俺たちだって大人たちみたいにころされちゃうかもなんだぞ!)

(……俺は、違うと思うな。そうなる可能性も十分にあるけど……、でも、違うと思う)

(俺はやだ!トシ兄がそういうならひとりでいけばいいじゃん!)

(……やっぱり、俺とマサヤは考え方が違うんだな……。俺は本当にあの人たちのところに行くけど、お前たちは行かないんだな)

(行かない。俺たちはずっと、にげつづける)

(そういう選択もありだよ……。じゃあ、これからは別々だ。マサヤ、逃げるんならとことん逃げろよ。俺は助けてやれないんだからな)

(わかってる)


俺は幼い頃から変わっていない。

でも……この、『トシ兄』って誰だ?顔に見覚えはあるんだ……。でも、どこで見たんだっけ……?ここ最近だった気がする……。


「あっ!」

思い出した。と、同時に現実に意識が引き戻された。

そうだ。あの顔は警察の資料にあった『斉藤俊貴』だ。

俺はあいつと仲がよかったのか。

起きあがろうとして気づいた。俺の腕と足に枷が付けられている。

しかも、おそらく牢屋であろう、かなり狭い部屋に閉じこめられていて、その壁に枷とつながった鎖がついていると見た。

「そうだよ、忘れてたよ……」

これで『斉藤俊貴』のことを考えてる場合じゃなくなった。

「おい、マサヤ」

結構近くからニコル先生の声が聞こえる。

「大丈夫か?」

「先生こそ!すいません、巻き込んじゃったみたいで……」

「ああ、そりゃしかたない」

「それより、先生はどこにいるんです?」

先生はこの問いに答えられないようだ。

「うーん……さあ?でも、こんだけ声が近くに聞こえてんだから結構近いだろ」

「先生は出られそうですか?」

「今、壁とかに隠し通路がないか探してるんだ。無いなら無いで格子外すつもりなんだけどさ」

どうやら俺と違って枷はついていないみたいだ。

「ちっ……、やっぱねえか……」

先生は格子外しに取りかかったようだ。

その間に俺は鎖だけでも外せないかとあがいてみることにした。

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