明かされるマサヤの真実
マサヤは自分のベッドに腰掛けて、俯いた。
「先生……ずっと、言わなくちゃと思っていたんですけど……誰にも言えなくて。先生は、俺の話真剣に聞いてくれますか?信じてくれますか?」
なんか、深刻そうな話だ。もしかして……警察が言ってたあのことだろうか……。
「ああ。ちゃんと聞く」
「ありがとうございます……」
マサヤは小さな声でつぶやいた。
「俺……、実は人を……殺してるんです……。俺、本当は……人を殺したくなんてなかった……。でも、俺以外の何かが人を殺すことを……やめなかったんです……っ。俺の体が攻撃を受けて……俺以外の何かが消えたとき……、目の前に広がる光景を見て……もう、このまま死にたいと思いました……。実際……俺は死んでもおかしくない傷を負っていたし、生きていてもしょうがないと……思ってたんです」
マサヤは肩を震わせて……泣いている。なんで、こいつは今までこのことを黙ってたんだ……?
「何で今まで黙ってたんだ?苦しかったはずなのに。すぐ全部吐き出しちまえばよかったのに……」
「だから……言えなかったんです……っ!何度も……言おうと思ったんです……。でも……言えなかった……」
だが、話を聞いて確信が持てた。マサヤは警察の言ったとおりあの研究所で暴走した兵器だ。でも、この話を聞いて俺が素直にこいつを警察に引き渡すかと言ったらそうじゃない。
もう少し詳しい話を聞こう。マサヤはまだ若い。それに、この言い方からすると自分の意志で兵器になった訳じゃないはずだ。
「マサヤ、お前は何かに意識を乗っ取られてたんだな?」
マサヤはうなずく。だが、すぐに付け足した。
「でも、俺がやったことに変わりはありません……」
泣いているせいだろうか、マサヤの呼吸が少しだけだが辛そうに感じる。
「先生、俺、警察に自首した方がいいんですか……?」
自首、か……。それは俺にしてみると何かが違う気がする。
「大丈夫だよ。やったのは暴走した兵器だ。お前は体を勝手に使われただけ。まあ……、警察が来たら説明しないと捕まるかもだけどな」
「先生……、ありがとう。俺、警察が来たらちゃんと説明します」
マサヤは涙を拭いてそう言った。その言葉を聞いて安心した。
「うん、それが一番いいよ。あ、そろそろ当番の時間だ。もういかないと。また、あとで来るから」
「はい。あっ、ちょっと待ってください」
マサヤは何か思い出したらしく、俺を引き留める。
「ん?」
「……最近、よく夢を見るんです。小さいころの夢なんですけど……」
マサヤはそこまでいって考え込んでしまった。
「どうしたんだ?」
「もしかしたら……この記憶のこと警察に話したら重要な証言になるかもしれません」
つぶやいて、マサヤは顔をあげる。
「その夢って言うのは、たくさんの大人に追いかけられてる夢なんです。あと……実験とか、適応率って言葉が出てきて。正直、思い出すのがかなり怖いんですけど……」
実験、か。ということは、マサヤは研究材料にされてたんじゃないのか?……だとすれば、マサヤが起こした事故は研究者の自業自得だ。人を研究に使うなんて、どうかしてる。
「なあマサヤ、もしかしてお前以外にもその実験を受けた、とかいう人いるんじゃないのか?」
マサヤがかたまった。やっぱり、マサヤにも話したかったこととずっと黙っておきたかったことはあったみたいだ。
「……無理には聞かないよ。言いたくなきゃ言わなくても。ただでさえ嫌な記憶を思い出してるんだから」
「すいません……」
「いいよいいよ。あ、やば、今度こそ俺は行くから」
「はい。引き留めてすいませんでした」
俺はマサヤの部屋を出た。
あいつはよく頑張ったと思う。でも、俺の頭の中の整理も必要だ。仕事前に、少し外の空気でも吸ってこよう。