病院内を歩いてみる俺
「…………!!」
俺は悪夢にうなされ目が覚めた。勢いで起きあがってしまったことで体中が痛み、ここが病院だということを思い出す。
「う……」
……とても嫌な夢を見た。思い出したくもない、幼い頃の記憶。
汗をじっとりかき、呼吸はなかなか落ち着かない。ゆっくり深呼吸して自分の呼吸を落ち着かせた。
まだ窓の外は薄暗い。どうやら少し早く起きすぎてしまったようだ。
「なんか、気持ち悪い……着替えよう……」
部屋の中を見渡すと、小さなテーブルの上に着替えが置いてあった。
「いててて……」
ちょっとした拍子で傷が開きそうだ。でも、なんとかなるだろう。ベッドを降りて、服を脱ぐ。
「点滴邪魔……」
とりあえず着替えたし、このあとどうするか……。
ふと思いついたのがこの病院の中を歩き回ってみることだった。
部屋を出ようとして、気づいた。
(俺、病院脱走の常習犯だと思われてるんじゃ……?)
「書き置きしとこう」
メモを残し、テーブルに置いておいた。
「おし。これで多分心配されない」
病室から出て、廊下を歩く。静かな病院……なんだかあの施設を思い出して怖くなる。
「……ふう」
談話室みたいな場所があった。そこで、一息つく。
あまり動かなければ傷が開くことはなさそうだ。椅子に座り、テレビの電源を入れた。朝早いので、ニュースくらいしかやっていない。
『ワーナル地方は全体的に晴れ。南マルア地方は晴れますがところにより雲が多くなるでしょう。次は週末の天気です……』
俺はナハネ族という少数民族だ。だが、ナハネ族を見た目で判断することはできない。見た目はほかの民族と変わらない。違うのは身体能力の高さだ。
普通の人と比べると1.5倍くらい違うという話を昔聞いた。俺は気にしてないからいいんだけど。
でも……。
「いっ……!!」
急に胸の傷に激痛を感じた。何でだ……?なんかやったっけ……?
テーブルに顔を伏せて、ズキズキする痛みに耐える。
もう少し経てば誰かしら俺のこと気づいてくれると思うんだよな……。
「スギサキくーん。あさ……」
ロナは固まった。マサヤはまたもいない。
急いで部屋の中に入ると、着替えたらしく、丁寧に畳まれた服と書き置きが残されていた。
『少し病院の中をうろついてみることにします。』
「なんだ……またも脱走しちゃったのかと思ったわ」
ロナは胸をなで下ろし、マサヤを探しに病室を出た。
廊下に出ると入院中の女性が慌ててやってきた。
「ロナさん!男の子が談話室でぐったりしてるの!急いできて!」
「わ、わかった!」
話を聞き、ロナは急いで談話室に向かった。