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生命の行方・第一部  作者: 杉谷ゆぬの(果樹)
第2章・俺を救ってくれた人たち
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幼い頃の思い出したくない記憶

ロナは、ニコルを発見した途端ニコニコ笑顔で近付いてきた。

それに言いようのない恐怖を感じ、逃げようとするニコル。

「あんた待ちなさいよ……どういうことだかわかってるわよねぇ……?」

「う、は、はい……」

「スギサキくん、すごく迷惑そうだったわよ。何がしたかったわけ?」

「それは……。ちょっといたずらしてみようかと……。でも、あいつは散々俺達に迷惑掛けたんだ。あのくらいならかわいいもんだろ?」

ニコルの必死の言い分により、ロナは何とか納得した。

「まあ、確かに……そう言われてみれば、そうなのよね。……いいわ。今回は許してあげる」

その言葉にニコルは胸をなで下ろす。

「よかったぁ……。で、そのマサヤはどうしたんだ?ロナがここにいるってことはあいつは1人ってことだろ?落ち着いてんのか?」

「ええ。今は寝てるわよ。たぶん……意識を保ってるのが限界になっちゃったんだと思うわ」

ニコルはロナの言葉を覚え、メモをとる。

「何でメモってるわけ?」

「ウィンに伝えないとだろ?」

「まあ、あんた意外と気が利くじゃない」

「他になんかあった?」

「ないない。傷も化膿してないし、体温も正常だったわ」

「ふーん。わかった。ウィンの見舞い行くときに渡しとけばいいか」

ニコルはメモをポケットの中にしまい、歩いていく。

「ロナって今日夜勤だっけ」

「ええ、明日の朝までよ。丸一日なんて、この病院も人使い荒いわよねえ」

「大変だなあ。俺は定時までだから。がんばれ。じゃあな」

ニコルはロナにひらひらと手を振りながら医局に戻っていった。



……夢を見ていた。幼い頃の恐ろしい記憶……


少年と少女はたくさんの大人に追いかけられていた。堅くお互いの手を握りしめ走る。だが、少年と少女の手は離れ、少女が地面につまずき、倒れた。

「ユキ!」

少年は少女の名前を呼ぶ。

「私のことはいい!お兄ちゃんは逃げて!!」

大人たちは少女を捕まえ、少年には殴る蹴るの暴行を加える。

少年は気を失う。遠ざかっていく意識の中で大人たちの声がした。

「この少年はどうするんだ?」

「こいつもナハネ族だ。実験しない手はないだろう。ましてや少女の双子の兄だ……適応率は少女と近いものがあるに違いない」


少年の記憶は一旦そこで切れ、別の記憶が流れ込んできた。


「ユキをどこへやった!?教えろ!」

少年は叫ぶ。後ろ手に縛られ、身動きのとれない状態なのにじたばた抵抗した。

その様子を大人たちはあざ笑うかのように見つめている。

「少女の実験は大成功だ……。次はお前だ……」

少年は捕まえられ、手術台のようなものに腕と脚を固定された。

大人の1人がメスを少年の胸にあてた。

「なにをするんだ!はなせ!」

そのメスは少年の胸を開いていく。


(止めろ……やめてくれ!)


「やだっ……痛い……!」

少年は痛みで顔を歪める。

「こいつを黙らせろ」

少年は猿ぐつわを噛まされ、言葉を発することもままならなくなった。



(……嫌だ……俺はこんな記憶……いらないっ……!やめてくれ……!こんなもの……見たくない……!!)

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