インフルエンザとウィンストン
その頃、ウィンストンは診察用ベッドの上に寝ていた。
「ううう……何でだ……?」
腕には点滴が刺さっている。診断の結果、インフルエンザ。
明日から一週間休暇を取らされた。
「はっはっは。ウィンストンが寝坊しないなんておかしいなとは思ってたんだが、まさか、こんなにいろんなことが起こるなんてね」
部長は笑う。だが、ウィンストンにしてはそれどころではない。
むくっと起き上がり、文句を言った。
「何言ってんですか?あんたが俺にアイツ押しつけたからでしょう……?ふう……アイツのせいでどれだけ神経がすり減ったか……」
「はっはっは。そうだったね。で、例の彼はどうだい?」
「知るわけ無いでしょう?俺は帰ってきてからずっとここにいるんですから。ニコルに頼んでありますから、ニコルに聞いてくださいよ」
ウィンストンは点滴の針を抜き、薬を持った。
「わかったわかった。気をつけて帰るんだ。途中で倒れないように」
むすっとしたまま立ち上がり、そのまま部屋を出ていった。
ウィンストンがふらふらな足取りで廊下を歩いていると、ニコルが医局に戻るところらしく、歩いていた。
「お。ウィン、どうだった?」
「……インフルエンザ。一週間休み」
「あらら。まあ、仕方ないよな。患者さんにうつると困るし」
「そうなんだよな……。そうだ、マサヤはどうだ?意識戻ったか?」
「ああ。ちょっといたずらしといた。たぶんあいつは怒ってると思うけど」
「……?」
ウィンストンはいたずらについてものすごく気になったが、敢えて聞かないことにした。
「……まあ、いいや。俺、もう帰る」
「おう。ちゃんと見舞い行ってやるからなー」
ウィンストンは徒歩で自宅に帰っていった。
「な、なにこれ……」
俺は痛い思いをしながら腕を動かし、自分の顔をみた。
額には第三の目が書かれている。まつげまでリアルに書かれていた。……だいぶきもい。
それプラスなぜか猫みたいなヒゲもある。
ムカッとしながら視線を下にずらすと、腕時計の落書きまでされていた。しかも、針は三時だ。
「……」
(なんだあいつ……ホントに医者か……?)
一瞬あのニコル先生がホントに医者なのか疑わしく思った。が、茶目っ気たっぷりなだけで実際は優秀な人なんだと思うことにした。