小さな参謀あらわるっ!!
バタバタとまだまだ身体には大きいランドセルを左右に揺らしながら洋館の形容をした家にたどり着く。
「相変わらず、琅の家大きいね。」
「兄弟も多いからいいなぁ。」
二人の幼馴染みの声に琅は苦笑した。
「カルだっておうちおっきいじゃん!!リキにもおにーちゃんいるし...」
幼稚園からつるんでいる三人はそれぞれの家庭についてきちんと把握している。
琅は物心つく前に両親が旅行先で行方不明。
兄とともに滝川家に預かってもらってるのを8才で幼いながらも理解していた。
だからこそ、人懐こく自身が不利な立場に陥らないように本心を隠してきた。
...この幼馴染み達以外には。
「ラウっ!!あたしが褒めてあげてるんだから素直に受け取りなさいよねっ」
「そうだよ、ラウ。確かに僕にも兄ちゃんいるけど、ハルちゃんのお世話ばっかりだし...」
「ハルおねーちゃん可愛いもんねっ!!」
「リョー兄ちゃん、毎日通ってるんだよっ」
「...それ、男として見られてないでしょ。」
ギャーギャーと必要以上に声が大きくなってしまうのはこの年頃の特徴でもあるんだろうが、周囲に恋路を暴露されまくっている力都の兄を憐れに思う琅だった。だが、これくらい二人の性格がおおっぴらだからこそ琅はほとんどの時間をこの二人と過ごすことができたのだ。
「...琅?」
「瓏兄ちゃんっ!!」
ふわりと体が浮き上がり、何事かと体
を固くすると聞きなれた声が耳に届いた。
自分とは正反対な小麦色の肌に白に近い金色の髪。
だが、二人を兄弟だと結びつけるように輝く碧色の目に端整な顔立ち。
普段は無表情な癖にいまは困ったように笑っている。
「こんなとこにいたらまた囲まれるぞ。」
「うっ、うんっ!!」
ギュッと抱きつくと頭を優しく撫でられ、やっぱり自分はブラコンと呼ばれる類いのものじゃないかと
不埒なことを考える。
「瓏兄ちゃん、茜ちゃんまだおしごと??」
「...茜? 茜ならさっき弥生さんに連行されてたぞ。」
「そっかぁ、だからおうちあいてないのか!!」
ぽんっと手をあわせると琅はにこやかに笑う。
「瓏兄ちゃん、かぎあけて!!」
「ん、分かった。そこ二人も入るか?」
口喧嘩がヒートアップしていた二人も瓏の声にぴたりと固まる。
「も、もちろんっ!!」
「はいっ!!」
イケメンの無表情は以上に迫力があることに身を以て理解した小学生だった。