酒場の歌い手
とある北の国の酒場にて、一人の旅人がカウンターで一人酒を飲んでいた。
その日は満月の月が出ているはずなのに生憎の雨、酒場の中は活気付いていたものの、旅人は沈んだ気分だった。
酒場の中はがやがやと騒がしく、旅人にとってはゆっくりと酒を飲む気にもなれなかったが、その日は雨のせいか、グラスに目を落としてはため息をつくだけだった。
時間は1時間、2時間とどんどんと過ぎてゆくが、旅人は依然とその場でグラスを傾けていた。
夜も更けてきたころ、酒場の中が静まり返っていた。
旅人は不思議に思い、ふっと振り返った。
そこには紅いドレスを身に纏った少女がステージに立っていた。
そして少女は歌い始めた。
紅い姿をした嫌われた氷の妖精と若い旅人の物語を……




