ふみきり
踏切で止まったときに思いついたので書いてみました。
(カンカンカンカン・・・・)
僕のアパートはふみきりの近くにある。駅も近くだから移動するには便利だが、なんせ近すぎて電車の音がうるさい。そのため寝るときはいつも苦労する。
(カンカンカンカン・・・・)
「ったく今日もうるさいなぁ。駅まで近いのはいいけどここまでうるさいとなー。」
僕はひとりで愚痴を言いながら耳をふさぐ。いつもこうしてはいるが効果がないことは知っていた。
(カンカンカンカン・・・・)
「なんか今日はやけに長いな。」
いつもの終電の時間を過ぎてもふみきりの音が鳴りやまないことに気がついた。
「なんだろ壊れてるのかな?」
ふとそう思い窓を開ける。だがうちの窓からは隣のアパートが邪魔して見えなかった。
(カンカンカンカン・・・・)
ずっとこの音を聞いていると不気味に思えてくる。すごく耳に残るから嫌な気分だ。
同じアパートに友人が住んでいるので電話してみた。友人も同じ悩みを持っているはずである。
・・・・・・・
「もしもし?」
友人は寝ていたのか、すごく眠そうな低い声で電話に出た。
「なぁ。ふみきりの音やけに長くないか?」
「は?なんも聞こえないけど。そんなことで起こすなよ。俺は眠いから寝るぞ。」
あっさり切られてしまった。ちょっとひどい。だがこのふみきりの音が聞こえるのは僕だけなのだろうか・・・
「・・・なんなんだよ・・・」
僕はもう耐えられなくなり、自分の目で確かめることにした。そして外にでた。徒歩一分とかからないところにあるからすぐである。
(カンカンカンカン・・・・)
ふみきりが近くなるほどその音は大きくなる。
(カンカンカンカン・・・・)
そろそろあのうるさいふみきりが見えてくるはずだ。そして・・・到着した。
「・・・あれ?」
うるさいふみきりの音はしっかり聞こえてくるのだが、ランプも点滅していなければ遮断機も下りていない。
「・・・なんで音だけ聞こえるんだ?」
(カンカンカンカン・・・・)
でも音は消えない。いったいなぜだろうか。機械は壊れていないはずだ。
「・・・ん?・・・あれは?」
踏切の真ん中をよく見ると小さい子供が座っているのが見える。足が線路の隙間に挟まっているのだろうか?
「ねぇ君?大丈夫かい?」
僕は特に何も考えず話かけていた。子供がそんなところにいたら危ないし、単純に助けようとした。だが・・・
「・・・・カンカンカンカン・・・・」
・・・子供は振り返り、そう言ったのだ。まさに僕が毎日聞いているあのふみきりの音そのものだった。子供の顔はもはや血だらけで、どんな表情かも確認できない。目も片方つぶれていた。
「うわぁぁぁぁ!!」
僕はびっくりして逃げようとしたが、その瞬間、子供に腕をものすごい力で掴まれた。
「・・・・カンカンカンカン・・・・」
「うわぁぁぁ!やめろっ!離せっ!!」
僕は自分で出せる限りの大声と力を振り絞ったが、子供にはびくともしなかった。
(・・・・カンカンカンカン・・・・)
すると今度は本当に踏切の遮断機が下り始めた。
・・・僕の出口をふさぐ。
「なんだよ!離せよ!・・・やめろぉぉぉ!!」
「・・・・カンカンカンカン・・・・」(・・・・カンカンカンカン・・・・)
もはやどっちの音が本物の踏切の音かもわからなかった。だが遮断機が下りているということは・・・まさか・・・
僕のいやな予感は的中した。
電車が向かってくるのが見える。もう終電なんてとっくにないのに。
「やめてくれぇぇぇ!!離してくれぇぇぇ!!」
僕は泣き叫びながら、子供の手を振りほどこうとしたが無意味だった。子供の顔は血だらけで何も見えなかったが、僕にはその顔が、満面の笑みを浮かべているのだと思った。
電車が近付いてくる。
ライトが眩しい。
(・・・・カンカンカンカン・・・・)
その踏切では昔、とても電車好きな子供が、線路の隙間に足をはさんでひかれてしまったことがあるという。その家族は踏切近くのアパートに住んでいたと言われている。
踏切の音が本当に本物かなんて誰にもわからない。
こんな子供がいたら怖いです。踏切に近づきたくないです。




