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『お前の薬草遊びと茶飲み友達など無価値だ』と言われ離縁しました。翌月、全商会が夫との取引を止めました——私は今、隣国王宮の薬草茶室で働いています

作者:かおるこ
最終エピソード掲載日:2026/05/19
冬の茶は、すぐに冷める。
けれど、冷えたのは茶ではなく、
あなたの言葉だった。

---

「薬草遊び」
「茶飲み友達」
「役に立たない女」

笑い声の混じる広間で、
私は静かに離縁状を受け取った。

湯気は細く揺れ、
やがて見えなくなる。

まるで、
あの日の私の居場所のように。

---

あなたは知らなかった。

眠れぬ商人に、
胃を痛めた老侯に、
長旅に疲れた使節に、

どの葉を、
どの温度で、
どの順番で淹れていたかを。

知らなかった。

香りひとつで、
人の怒りが和らぐことを。

一杯の茶で、
止まりかけた交渉が動き出すことを。

---

だからあなたは捨てた。

温室を。
薬草を。
積み重ねた季節を。

「雑草だ」と笑いながら。

乾いた土の匂いだけが、
冬空に残った。

---

翌月。
港から船が消えた。

商会は扉を閉ざし、
招待状は途絶え、
屋敷から人の気配が消えていく。

静かだった。

恐ろしいほどに。

崩壊とは、
雷のようには来ない。

誰も茶を飲みに来なくなる。
それだけで、世界は終わる。

---

今、私は隣国の王宮にいる。

朝露を含んだミント。
眠りを守るカモミール。
月明かりに香る銀月花。

私は今日も、
誰かのために茶を淹れる。

戦を避けるために。
涙をこぼさぬために。
人が、人でいられるように。

---

「本当の茶飲み友達ですね」

そう笑う声に、
私はようやく気づく。

大切なのは、
誰に価値を決められるかではない。

誰の心を、
温められたかだ。

---

春の庭園。
白い湯気が空へ昇る。

もう、
この茶が冷めることはない。

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