人の話はちゃんと聞こうねって事よ
「エトリーゼ、お前は本当に冷たい奴だな!」
「何ですかロレンス様、藪から棒に」
読書をしていた私の元へ、突然怒鳴り込んできたのは一応婚約者のロレンスだ。
「とぼけるなよ!フレアにデビュタントのドレスさえ作ってやらないんだってな!」
「あぁ、そんなことですか。当たり前でしょう?フレアは⋯⋯」
「そんなこととはなんだ!フレアはお前の妹だろうが!」
いちいち声大きいし、人の話を遮るな。
「何度も言うように、フレアは妹ではございません。そもそも⋯⋯」
「妹じゃないだなんて、可哀想とは思わないのか!?」
いや、だから人の話は聞けよ。
「ですから、フレアに関しましては⋯⋯」
「もういい!フレアには俺がドレスを用意してやる!」
ホントに人の話を聞かないな⋯⋯。
「はぁ⋯⋯もうお好きになさったら?」
呆れたように言えば、再び顔を真っ赤にして叫ぶ。
「こんな冷たい女が婚約者だなんて最低だ!父上に言ってすぐに破棄してやる!」
「ーーお好きにどうぞ。」
こっちこそ願ったりだわ。
控えていた侍女に視線をやると、彼女は頷いてからその場を離れた。
きっとお父様へと報告してくれるだろう。
「ふんっ!後悔するなよ!」
捨て台詞を吐いて出て行く婚約者を視線だけで見送り、本を閉じて立ち上がる。
「本当に厄介事しか運んでこないわね、あの子」
まぁ、それに騙される奴もバカであるが。
「説明しても理解しないんだから、自業自得よね」
二人共頭におが屑でも詰まっているのかしらね?
「さて、さっさと手続きしましょうか」
私は足早にお父様の執務室へ向かった。
「どういうことだエトリーゼ!」
学園で友人とのランチ中に、おが屑頭の元婚約者が乗り込んできた。
「何がでしょう?」
迷惑そうに見ると、元婚約者は怒りを顕にして私を糾弾し始めた。
「フレアを追い出すなんて、人としての情はないのか!?俺がフレアを選んだからといって見苦しいマネしやがって!」
彼の親はキチンと話をしたのでしょうか?
「実の妹にこんな意地悪をする女なんて、地獄に落ちればいい!」
「妹ではないと何度も言っております」
「フレアもこんな姉を持って可哀想に!」
「本当に話が通じませんね⋯⋯」
友人達を見ると迷惑そうにしている。
それはそうだ。5歳児でも理解できることが、彼にはできていないのだから。
彼の扱いに迷っていると、向こうから数人の生徒とが教師を連れてやって来る。
「おい、ロレンス・キーフ何をしている」
教師が元婚約者の肩を掴んで止めようとしたが、それを迷惑そうに払い暴言を吐き出した。
「邪魔をするな!この性悪女を庇うなら容赦しないからな!」
いや、意味が分からないから。
「いいから黙れ!」
教師と生徒が3人がかりで羽交い締めにしても、ロレンスは暴言をまき散らし、逃げようと藻掻いていた。
「とにかく、学園長室。えぇと、エトリーゼ・グロウも共に」
「はい」
憂鬱な気持ちで立ち上がると、その一団の後に着いて行った。
「さて、ロレンス・キーフ君は何をやってるのかね?」
学園で密かに人気のイケオジ学園長が、静かに微笑みながらロレンスに詰問している。
猿轡をされたロレンスは、椅子に縛り付けられてまで「ゔーゔー」と唸っている。
往生際が悪いことで⋯⋯。
「君の父上から聞いてはいたが、あんまりにも常識がなさすぎる」
あぁ、キーフ伯爵も対処に困ったのね。
思わず溜め息を吐き出すと、学園長は苦笑いで私を見た。
「グロウ嬢。抑えつけてる今ならば、少しばかり話を聞くのではないかな?」
いつも話を途中で遮り、自己都合で暴走するバカにはハッキリと現実を分からせた方がいい。
遠回しにそう言うと、学園長は私にこの場を譲ってくれた。
「ーーいいですか、ロレンス様。何度目か分からないけれどハッキリ言いますわね。フレアは妹などではありませんし、私には兄しかおりません」
ロレンス様が驚いた顔で私を見る。
「フレアが勝手に私を姉と呼んでいますが、私達家族はそれを許しておりません」
あの子も大概話を聞かない。
「お祖父様の怒りを買い、貴族籍を抜かれたお父様の弟の子供がフレアです。私からしたら従姉妹ではありますが、あの子の身分は平民です」
フレアの父親が亡くなり、母親も病に倒れ、どうしようもなくなってお父様を頼ったのが、今の状況である。
病で倒れた母親も1年後に亡くなり、一人残ったフレアを哀れに思って、成人まではと屋敷の離れに置いてあげていたのです。
それを勘違いしたのか、あの子は兄と私の妹だと勝手に名乗り、私の私物を勝手に持ち出し、必要のないデビュタントのドレスを欲しがり、挙句に婚約者まで横取りしたのですよ?
普通に考えて置いておけないでしょう?
勝手にしすぎてお父様の怒りを買い、追い出されたのですよあの子。
「家族などではないと私は何度も言いましたわよね?」
養われているだけなのに、貴族のように振る舞い我儘を通そうとした。
これは詐欺行為である。
処刑されなかっただけでも感謝して欲しい。
「ロレンス様が最初からキチンと話を聞いていれば、こんなことにはならなかったのです」
バカみたいにフレアの話を鵜呑みにして、私の話など聞かなかったロレンスが悪い。
呆然としてるロレンスを一瞥すると、学園長へと顔を向けた。
「まぁ、貴族の義務である学園に通ってない時点で気付くべきだったよね」
だから常識ナシと言われるんですよ。
私は燃え尽きて呆然としてるロレンス様を見た。
と言うか先ずは。
「人の話は最後までちゃんと聞こうねって事ですわよ」
幼児でも理解してますわよ?
(・∀・)多分フレアは修道院でもぶち込まれてる
話を遮られるのってイラっとしません?




