落選の先にあった景色
私は去年一年、公募にチャレンジした。
その間、出したものは三本。
いずれも10~12万文字完結の女性向け異世界ファンタジー。
結果待ちもあるのが、今の状態である。
その中で一本、二次選考に残ったものがあった。
「わたくし、売られた妻ですので」だ。
細かく描写するのは割愛するが、「売られた妻」は二次選考(残り10本)の中には残ったものの、その先へ行くことができなかった。
その時の感情は、筆にしがたいものがあった。
喜びや希望を全て真っ黒に塗られたような。
ただただ「駄目だった」「おまえじゃない」の現実を突きつけられて、二次に上がれなかった時よりよっぽどしんどかった。
そこから私は、しばらく、行き場を探した。
自分に合うレーベルはあるのかとか、この作品を受け入れてくれそうな・相性のよさそうな場所はあるのかとか。
そこで行っているコンテストとか公募とか。
調べて、聞いて、情報を集めて、そしてわたしが取った手段は……
動画だった。
公募じゃ待ち時間が長すぎる。
運命はあっちが握ってる。
そんな、選ばれるのを待ってたら人生が終わる。
少なくとも、その時の私にはそう感じられたのだ。
そんな思いに駆られた私は、そのままの勢いでソフトを調べた。
AI読み上げソフトをDLし、自分の文章の読み上げ音声を作るまでほんの一時間。
あっという間にのめりこんだ。
落選して一週間後の出来事だった。
動画制作なんて経験のない私、しつこいぐらいAIに聞いて教えてもらい、なんとか10分超えの動画一本(一話分)を作り上げたのは、DLして二週間後のことだ。
正直えぐいほどの作業量だった。
チャンネル名・アイコン・本文調節・音の確認・演じてもらうキャラボイスの選定・セリフのイントネーション調整・AIボイスとの格闘・合成と字幕と声の兼ね合い……
数時間作業して、1分の動画一本しかできないなんてザラ。
まじで「これ、小説書く方が早い」と思った。
(なにやってんだろ)と何度も思った。
けれど、私にはそれがあっていた。
他人に人生を預け、託し、選ばれるのを待つ人生より
誰も見なくても、誰にも相手にされなくても、たとえ閲覧数0でも、自分で手を動かし、自分でイラストをつけ、自分のできる精一杯で世界を演出する方が数千倍、楽しく有意義な時間だった。
想像してみてほしいのだ。
PCの中で、「文字だけの世界」がみるみる「声とイラストで彩る世界」になっていくんだ。ソシャゲのストーリー画面のように、再生してるだけでストーリーが流れていく。
想像力の補助として、雰囲気と音声で伝えられることがある。
演出できる!
なんて素晴らしい!
わたしは、そう、これ! これがしたかった!
……と、のめりこんで半年。
六本のストックができたので、ゆっくりじっくり、私は自分の物語を、動画にして発信していくことにした。
とてもドキドキする。
きっと誰にも見てもらえないし、相手にもされないだろう。
AIに反対の作家さんには叩かれるだろう。
でも、でもね。
私には、これがあっていた。
これが最高だった。
公募・商業化という夢に続く道は横に置いて、私はひっそり物語を動画にして積み上げていく方が、自分には向いていたのだ。
私は、これで積んでいく。
落選の物語をそのままにしない。
文字だとちょっと重いから。
動く画と声で、物語を広げていくと決めた。
チャンネル名は、「聞き流しファンタジーちゃんねる」。
聞き流してくれていいんだ。
耳の寂しさを埋めるのに使ってくれたらそれでいい。
愛情は込めるから。
だから、画面の向こう側で、出会ってくれた人は、ただ、聞き流してくれ。
そんな思いで、今日も私はPCに向かう。
最高の趣味を見つけた。
そんな気持ちでいっぱいだ。




