映画
要は文句を言いつつも、俺の膝の上にまだ居座っていた。
要はスマホでゲームをして、俺は一生懸命3人が楽しめそうな映画を探している内に、朝陽がお風呂から上がってきた。
頭をタオルでゴシゴシ拭きながら、朝陽もコーラを持って俺達の所にやって来た。
「要、そこ座るから足どけて」
「えぇー」と要は文句を言って、伸ばしていた足を曲げて丸まった。
「なんかその態勢猫みたいだな」
朝陽は要を見ながら笑って、ソファーの空いたスペースに座った。
「にゃー」
要は猫の鳴き真似をするが、全然可愛くない。
「でっかい猫だな」
「湊はうるさいにゃー」
そう言うと要は一度起き上がり、今度は朝陽の膝の上に頭を乗せた。
「でっかい猫来た」
朝陽は笑って、要の髪の毛をわしゃわしゃと撫でた。
「こっちもゴツゴツしてる……」
「そりゃそうだろ」
「さっきから要は人の足に文句ばっかり言ってるよ」
「朝陽か湊が太れば良いと思う」
「何でお前の膝枕のために太らないといけないんだよ!」
「俺、いくら食っても太らないから無理だわ」
「朝陽もか。俺もだ」
「お前ら筋トレやり過ぎなんだよ」
「いや、お前もだろ!」
「喧嘩するのに筋肉はいるだろ」
「何? 喧嘩はスポーツか何かだと思ってる?」
「湊がサッカーするように、俺は喧嘩すんだよ」
「ちょっと何言ってるか分からない」
「湊ってバカだな」
「は? お前!!」
「何だよ」
俺達が睨み合いをしていると、テレビから映画のオープニングロゴの低い効果音が流れた。
「まぁまぁまぁ、映画でも観ようぜ」
「……朝陽君、因みにこれはなんの映画かな?」
「ハハハ」
「いや、笑ってないでさ」
「観れば分かるって」
「あ、俺これ観た事ないやつ」
要は朝陽に膝枕されたまま、映画に集中しだした。
「要が観た事ないやつだから大丈夫!」
「ほんとかよ……俺、アイス取ってくる。お前らもいるよな?」
「うん」と朝陽は返事して、要は手だけ出している。
持ってこいって事か。
はいはい、分かりました。
要の分も取ってきますよ。
俺は冷凍庫からアイスを取り出し、またソファーに戻るともう映画が始まっていた。
主人公であろう女子3人組が車に乗って楽しそうにドライブをしている。
朝陽と要は静かにそれを観ていた。
「はい、朝陽の」
「ありがとう」
「はい、要の」
「サンキュー」
2人にアイスを渡し、俺も元の席に座ってアイスの袋を破いた。
一口齧ると、チョコとバニラの甘さが口の中に広がった。
久しぶりに食べたけど、うまー。
空きっ腹に甘い物最高!
チラッと画面を見ると、さっきまで楽しそうにドライブしていたのに、森の中で車が動かなくなって誰のせいかと喧嘩していた。
森の中で車が動かなくなるって、やっぱこれって……。
俺はチラリと朝陽の方を見る。
朝陽は俺の視線に気付いてニッコリ笑った。
クラスの女子が見たら卒倒しそうな笑顔浮かべやがって……クソ、顔が良いってずるい!
もう確定じゃねーか。
これはホラー映画だ。
ほら来た、車に乗った見るからに怪しいおじさんが。
あーその車に乗るな、乗るな!
ホラー展開が始まってしまう……。
俺は見ないようにスマホを取り出し、いつも暇つぶしにしているゲームアプリを開いた。
音を消していなかったので、軽快な音楽が流れた。
あ、やべっ。
俺は慌てて音量を下げた。
だがしかし、要にあっという間にスマホを取り上げられてしまった。
「何、ゲームしようとしてんだよ」
さっきまで寝転がってたのに、こういう時はやけに動きが速いな。
「いや、だって……怖いじゃん……」
「しょーがねーなー」
要はそう言うと、また俺の膝に頭を乗っけて来た。
「これで怖くねーだろ。だからスマホは没収」
「いや、怖いけど」
「そんな怖いやつじゃねーよ……知らねーけど」
「知らないのかよ!」
「だって観た事ねーって言っただろ」
「もし怖かったら?」
「目閉じてればいいじゃん」
「それだけじゃ無理だろ」
「あーごちゃごちゃうるせぇ。見ろ! まだ何も起きてない。ただおっさんの家に行ってご飯ご馳走になってるだけだ。ほら、楽しそう」
「今は楽しそうだけど……」
「な? 黙って見ろ」
そう言うと要はまた画面に集中し始めた。
「朝陽ー、要だけじゃ心許ないんだけど」
朝陽に助けを求めたのに「黙って見ろ」と笑顔で言われた。
「はい……」
どうかそんなに怖くないやつでありますように……。




