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早瀬湊の日常  作者: 彩心


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5/7

映画

 要は文句を言いつつも、俺の膝の上にまだ居座っていた。


 要はスマホでゲームをして、俺は一生懸命3人が楽しめそうな映画を探している内に、朝陽がお風呂から上がってきた。


 頭をタオルでゴシゴシ拭きながら、朝陽もコーラを持って俺達の所にやって来た。


 「要、そこ座るから足どけて」


 「えぇー」と要は文句を言って、伸ばしていた足を曲げて丸まった。


 「なんかその態勢猫みたいだな」


 朝陽は要を見ながら笑って、ソファーの空いたスペースに座った。


 「にゃー」


 要は猫の鳴き真似をするが、全然可愛くない。


 「でっかい猫だな」


 「湊はうるさいにゃー」


 そう言うと要は一度起き上がり、今度は朝陽の膝の上に頭を乗せた。


 「でっかい猫来た」


 朝陽は笑って、要の髪の毛をわしゃわしゃと撫でた。


 「こっちもゴツゴツしてる……」


 「そりゃそうだろ」


 「さっきから要は人の足に文句ばっかり言ってるよ」


 「朝陽か湊が太れば良いと思う」


 「何でお前の膝枕のために太らないといけないんだよ!」


 「俺、いくら食っても太らないから無理だわ」


 「朝陽もか。俺もだ」


 「お前ら筋トレやり過ぎなんだよ」


 「いや、お前もだろ!」


 「喧嘩するのに筋肉はいるだろ」


 「何? 喧嘩はスポーツか何かだと思ってる?」


 「湊がサッカーするように、俺は喧嘩すんだよ」


 「ちょっと何言ってるか分からない」


 「湊ってバカだな」


 「は? お前!!」


 「何だよ」


 俺達が睨み合いをしていると、テレビから映画のオープニングロゴの低い効果音が流れた。


 「まぁまぁまぁ、映画でも観ようぜ」


 「……朝陽君、ちなみにこれはなんの映画かな?」


 「ハハハ」


 「いや、笑ってないでさ」


 「観れば分かるって」


 「あ、俺これ観た事ないやつ」


 要は朝陽に膝枕されたまま、映画に集中しだした。


 「要が観た事ないやつだから大丈夫!」


 「ほんとかよ……俺、アイス取ってくる。お前らもいるよな?」


 「うん」と朝陽は返事して、要は手だけ出している。


 持ってこいって事か。


 はいはい、分かりました。


 要の分も取ってきますよ。


 俺は冷凍庫からアイスを取り出し、またソファーに戻るともう映画が始まっていた。


 主人公であろう女子3人組が車に乗って楽しそうにドライブをしている。


 朝陽と要は静かにそれを観ていた。


 「はい、朝陽の」


 「ありがとう」


 「はい、要の」


 「サンキュー」


 2人にアイスを渡し、俺も元の席に座ってアイスの袋を破いた。


 一口齧ると、チョコとバニラの甘さが口の中に広がった。


 久しぶりに食べたけど、うまー。


 空きっ腹に甘い物最高!


 チラッと画面を見ると、さっきまで楽しそうにドライブしていたのに、森の中で車が動かなくなって誰のせいかと喧嘩していた。


 森の中で車が動かなくなるって、やっぱこれって……。


 俺はチラリと朝陽の方を見る。


 朝陽は俺の視線に気付いてニッコリ笑った。


 クラスの女子が見たら卒倒そっとうしそうな笑顔浮かべやがって……クソ、顔が良いってずるい!


 もう確定じゃねーか。


 これはホラー映画だ。


 ほら来た、車に乗った見るからに怪しいおじさんが。


 あーその車に乗るな、乗るな!


 ホラー展開が始まってしまう……。


 俺は見ないようにスマホを取り出し、いつも暇つぶしにしているゲームアプリを開いた。


 音を消していなかったので、軽快な音楽が流れた。


 あ、やべっ。


 俺は慌てて音量を下げた。


 だがしかし、要にあっという間にスマホを取り上げられてしまった。


 「何、ゲームしようとしてんだよ」


 さっきまで寝転がってたのに、こういう時はやけに動きが速いな。


 「いや、だって……怖いじゃん……」


 「しょーがねーなー」


 要はそう言うと、また俺の膝に頭を乗っけて来た。


 「これで怖くねーだろ。だからスマホは没収」


 「いや、怖いけど」


 「そんな怖いやつじゃねーよ……知らねーけど」


 「知らないのかよ!」


 「だって観た事ねーって言っただろ」


 「もし怖かったら?」


 「目閉じてればいいじゃん」


 「それだけじゃ無理だろ」


 「あーごちゃごちゃうるせぇ。見ろ! まだ何も起きてない。ただおっさんの家に行ってご飯ご馳走になってるだけだ。ほら、楽しそう」


 「今は楽しそうだけど……」


 「な? 黙って見ろ」


 そう言うと要はまた画面に集中し始めた。


 「朝陽ー、要だけじゃ心許こころもとないんだけど」


 朝陽に助けを求めたのに「黙って見ろ」と笑顔で言われた。


 「はい……」


 どうかそんなに怖くないやつでありますように……。



 


 

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