膝枕
俺が風呂から上がってリビングに行くと、要がコーラを飲みながらソファーで寛いでいた。
「あんたも飲む?」と言って、愛子さんは冷蔵庫からコーラの缶を取り出した。
「いる!」
俺は愛子さんからコーラを受け取ると「ありがとう」とお礼を言って、要の横に座った。
「傷口手当てしたのか?」
「あ? 何もしてねーよ。痛いじゃん」
「放置してるのも痛くないか?」
「うーん……ま、大丈夫」
「風呂場であんなにギャーギャー言ってたのに?」
「泡は沁みるだろ!」
そう必死に要が俺に訴えて来た所で「ただいまー」と朝陽の声が聞こえた。
すぐリビングに入って来た朝陽は「悪い、待たせたな」と俺達に謝ってきた。
「いいよ。大事な話だったろ?」
朝陽は一瞬キッチンに居る愛子さんの方を見てから「まぁ……」と答えた。
せっかく朝陽が濁したのに「どーせ告白だろ」と要が面白くなさそうに言った。
「ちょっ、お前言うなよ! 母さんにバレたら面倒なんだから!」
慌てて朝陽は要を止めてるけど、もう遅いだろ。
「なーにが面倒なのかしらー?」
ほら、キッチンから愛子さんが叫んでる。
「いや、何でもない!」
朝陽は必死に叫んでるけど、愛子さん来ちゃったよ。
「何? 朝陽また告白されたの?」
「いいじゃん、そういうのは……」
「まぁーお父さんがカッコイイから、朝陽がモテるのも当然ね。お父さん、カッコイイから」
「もーいいって、父さんの惚気は。友達の前でまでやめてくれよ、恥ずかしい」
「恥ずかしいって何よ。本当の事言ってるだけでしょ」
「それが惚気なんだよ!」
まーた始まったよ。
要なんてコーラに夢中で聞いてもいないし。
「はいはい、私が悪かったです。朝陽、あんたも先に風呂入ってきなさい。湊達はもう入ったよ」
「本当だ。早いな」
「要が汚れて帰ってきたからね」
「要、また喧嘩か?」
「おう! なんかごちゃごちゃうるさかったからな」
「一瞬で寝かしつけてた」
「そうそう、うるさいから寝かしてやった」
「……程々にしとけよ。じゃ、俺も汗かいたし、先にお風呂入ってくる」
「おう! 朝陽が風呂から上がったら皆んなでアイス食おうぜ!」
「いつものスイカバー買っといた」
「ありがとな。すぐ風呂入ってくる!」
そう言って朝陽は慌てて風呂場に向かった。
愛子さんはそれを見送ると、俺達の方を向いて「あんた達、晩御飯どうする?」と聞いてきた。
「「食べたい!」」
2人同時に返事をすると「りょーかい。あんた達ほんと仲良いね」とクスクス笑いながら、愛子さんはキッチンに戻って行った。
俺は要の脇腹を膝で小突いて「被せてくんなよ」と言うと「お前がな」と言ってきた。
「うるせっ」
「お前がな」
今は何を言っても「お前がな」と返ってきそうなので、俺は話を切り上げコーラの缶を開けた。
要は缶をテーブルの上に置くと、テレビのリモコンを手に取った。
テレビをつけると、動画配信サイトで何かを探し始めた。
「何探してるんだ?」
「内緒」
「……まさか、ホラーじゃないだろうな?」
「……内緒」
そう言いながら真剣に画面を見つめる要。
俺は嫌な予感がして、一緒に画面を見つめる。
「なぁ、ジャンルがホラーだけど?」
「気のせいじゃね?」
「気のせいな訳あるか!」
「大丈夫! 今探してるのは怖くない!」
「ほんとかよ……」
「ほんとほんと……あれ? 前見た時はこの辺にあったんだけどなー」
そう言いながら要は画面を下にスクロールしていく。
「あれ? どこいった? もぉーめんどいし、この辺でもいいけどな」
「やめろ! 貸せ! 俺が決める!」
俺は要から強引にリモコンを奪い取った。
「えぇー、お前が選んだら絶対アクション系になるじゃん」
「今日こそはアクション系の日だ」
「ま、多数決で朝陽に決めてもらおうぜ」
「それやったら、確実にホラーになるだろ……」
「ふはっ、知らね」
要は笑って俺の膝に頭を乗せて、ソファーに寝転がった。
「今日は朝陽の気分がアクション系かもしれないだろ?」
ニコニコと笑って俺を見上げている要。
この笑顔、絶対悪い事考えてるだろ。
「はぁー、もういいよ。その代わり軽めにしてくれ」
「……まぁ、善処します」
「何だよその間は」
「別に何も」
そう言って要は目を閉じた。
「何だよ。寝るなよ」
「いや、ゴツゴツしてて寝心地悪いなと思って」
「せっかく膝貸してやってんのに、文句言うなよ!」




