お風呂
朝陽の家に着いてインターホンを押すと、朝陽のお母さん 愛子さんがドアを開けてくれた。
「いらっしゃーい。って、要! あんた何でそんなに服が汚れてんの!」
「愛子さん聞いてくれ! この間教えてもらったドロップキックが綺麗に決まったんだ!」
「また喧嘩したの?」
「おう! 圧勝よ圧勝!」
「私が教えたんだから当たり前でしょ。それより要は先に風呂に入んなさい」
「はーい」
要はそう返事をしながら、藤真家のお風呂に向かった。
「愛子さん、朝陽と要のアイス溶けるから冷凍庫入れてもいい?」
「湊、あんたは汚れてないのね」
「え? うん、俺は喧嘩してない。でも俺にも今度ドロップキック教えて!」
「あぁー気分が乗ったらね。それより、あんたも一緒に風呂入って来なさい。汗かいたでしょ? アイスは私が冷凍庫に入れとくから」
「えぇー要と一緒に入ると、うるさいんだよな」
「いいからまとめて入ってきな」
愛子さんの有無を言わせない圧力に俺は屈した。
「分かったよ」
俺は愛子さんにアイスを預けて、俺も風呂場に向かった。
服を脱いでカゴに入れて置くと、いつも愛子さんが洗濯してくれる。
なんか第二の家みたいだ。
愛子さんの事を昔「朝陽のおばちゃん」と呼んだら「愛子さんって呼びなさい!」と言われてから、ずっと愛子さん呼びだ。
あの時は何で?って思ったけど、今なら分かる。
愛子さんまだ若いから「おばちゃん」呼びが嫌だったんだろうなって。
昔を思い出して笑っていると、要が風呂のドアを少し開いてこっちを見ていた。
「思い出し笑いとかキモーい」
「うるせー。覗いてんな!」
「湊来たら遊ぼうと思って待ってんだよ」
「待つな! さっさと洗え!」
「はいはい。でも、手擦りむいてて痛ぇんだよな」
そう言って要は上目遣いで俺を見てくる。
「全然可愛くないから無理」
「えぇー、シャンプー絶対しみるじゃん!」
「知らね」
「そんな事言わずにさー。お願い!」
「もー分かったから、そこ座れよ」
「やったー! お願いします!」
要はそう言うと俊敏な動きで風呂の椅子に座った。
俺は要の頭を美容師気分で洗ってやった。
「痒い所ないか?」
「あー背中が痒いです」
ふざける要の背中をバチンと叩いた。
「いってぇーー」
「背中が痒いらしいからな、叩いといた」
「ひでぇー」
「ハハハ。ほら、後は自分でしろよ! 男の体なんて洗いたくねー」
「えー……ま、そうだな。体は自分で洗うわ」
「そうして。俺も頭洗お」
「いてぇーやっぱ泡しみる……」
「どこで怪我したんだよ」
「ドロップキックした後、着地した時だと思う……」
「自業自得じゃん」
「はぁー普通にやれば良かった」
要は傷が痛いのか、今日は風呂で暴れずに洗い終わるとすぐに風呂場から出て行った。
「擦り傷って地味に痛いよな……」




