アイス2
要と2人でコンビニに行って、朝陽の分のアイスも買った。
「湊、ありがとな!」
満面の笑みで要はそう言うと、自分のアイスの袋を破いた。
「もう食べるのか?」
「うん。半分先に食べようと思ってパピコにしたからな」
ドヤ顔をしながらも、視線はアイスに夢中だ。
「ちゃんと前向いて歩けよ」
「うん」
そう返事はするものの、絶対前見てないやつ……。
「あっ」
「危ねぇっ!」
縁石に足を引っ掻けて、転びそうになった要の肩をとっさに俺は掴んだ。
「おぉー、危なかった……」
「はぁー、だからちゃんと前見ろって言っただろ!」
「湊が横に居るから大丈夫かなと思ってたら、やっぱり大丈夫だった!」
ニコッと笑って言う要にイラッとしたので、ほっぺをつねってやった。
「何が大丈夫なんだー? 何が!」
「痛い、痛い。冗談じゃん、冗談」
「はー。今度はちゃんと前見ろよ。早く朝陽の家に行かないとアイス溶ける」
「はーい」
そう返事をしながら、要は美味しそうにアイスをムシャムシャ食べていた。
俺はそれを横目で見ながら、要って本当に美味しそうに食べるよなーと思っていたら、要の後頭部に何かが飛んできて「カーーン」と音がした。
「いってぇー……」
要は後頭部を手で押さえて、低く呻いた。
「大丈夫か? 何が飛んできたんだ?」
俺は慌てて周囲を見回すと少し凹んだ空き缶が側に落ちていた。
「よぉー、お前が天童だろ? 俺の彼女が世話になったな」
要の名前を言いながら、ニタニタ笑って近付いてくるお兄さん達、誰?
彼女が世話になったって事は、要の知り合いか?
「あ? お前誰だよ」
低い声で苛立ちを隠しもせずに要はそう言った。
あ、要も知らないのか。
じゃー誰なんだよ、ほんと。
「彩葉って言えば分かるか?」
「ん? いろは、いろは、いろは……あぁー、なんか最近帰り道で良く会うわ」
「それだけなわけねーだろ! お前が好きだからって俺ふられたんだぞ!」
あーね。
逆恨みってやつね。
これは本当に要悪くないやつだな。
「いや、知らねーけど。ってか、帰り道待ち伏せされてキモいから、逆に引き取ってくんね?」
「は? お前喧嘩売ってんのかよ!」
「喧嘩ふっかけてきてるのお前達だろ! アイツを何とかしてくれるなら、缶の事はチャラにしてやろうと思ったのに……」
要の目つきが鋭くなった。
あ、やる感じ?
「要、出来れば早く終わらしてほしいな。アイス溶ける」
「ん、分かった。これ持ってて」
そう言って要は食べかけのパピコを俺に渡してきた。
「食っていい?」
「ダメ。持ってるだけ」
「分かったよ」
俺が要からパピコを受け取ると、要は走って相手との距離を一気に詰めた。
うわ、初手ドロップキックって遊んでるなアイツ。
綺麗に決まったって、ちょっと喜んでるじゃん。
愛子さんにでも教わったのかな?
俺も今度教えてもらおうかな。
綺麗に決まったら気持ち良さそう。
なんて考えている間に喧嘩は終わっていた。
「え、3人居たのに早くない?」
砂埃で汚れた服をはたきながら戻ってきた要にそう言うと、要は「だってお前がアイス溶けるから早くしろって言ったじゃん」と言って、俺の手からパピコを取った。
「いや、言ったけど、最初遊んでそうだったからさ」
「あ、分かっちゃった? この間愛子さんに教えてもらってさ、やってみたかったんだ。綺麗に決まっただろ?」
「あぁ、綺麗に相手吹っ飛んでたな」
「だろ? 後はちゃんと一撃で終わらしたよ。アイスが溶けたら朝陽が可哀想だろ?」
「いや、俺のアイスも溶けるけど」
「チョコモナカは少し溶けても旨いから大丈夫だ。でもスイカバーは溶けたら美味しくないだろ?」
「確かにな……って何で俺納得してんだろ」
「ハハハ、湊は可愛い奴だな」
「うるせー。それは女子に言われたい」
「あー、お前面は良いのに何でモテないんだろうな。ハハハ」
「そんなの俺が知りたいよ」
「俺が女なら……朝陽選ぶな」
「いやそこは俺って言う所だろ!」
「いや、言おうと思ったんだけどさ、良く考えたら、お前良い奴止まりだなって思って」
「ひでーな」
「ハハハハハハ。早く朝陽の家行こーぜ」
「笑って誤魔化しやがった……はぁー」
「これあげるから元気出せよ」
そう言って要が渡してきたのは、食べ終わったパピコの側だった。
「お前、これゴミじゃねーか!」
「ハハハハハハ」




