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早瀬湊の日常  作者: 彩心


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2/7

アイス2

 要と2人でコンビニに行って、朝陽の分のアイスも買った。


 「湊、ありがとな!」


 満面の笑みで要はそう言うと、自分のアイスの袋を破いた。


 「もう食べるのか?」


 「うん。半分先に食べようと思ってパピコにしたからな」


 ドヤ顔をしながらも、視線はアイスに夢中だ。


 「ちゃんと前向いて歩けよ」


 「うん」


 そう返事はするものの、絶対前見てないやつ……。


 「あっ」


 「危ねぇっ!」


 縁石に足を引っ掻けて、転びそうになった要の肩をとっさに俺はつかんだ。


 「おぉー、危なかった……」

 

 「はぁー、だからちゃんと前見ろって言っただろ!」


 「湊が横に居るから大丈夫かなと思ってたら、やっぱり大丈夫だった!」


 ニコッと笑って言う要にイラッとしたので、ほっぺをつねってやった。


 「何が大丈夫なんだー? 何が!」


 「痛い、痛い。冗談じゃん、冗談」


 「はー。今度はちゃんと前見ろよ。早く朝陽の家に行かないとアイス溶ける」


 「はーい」


 そう返事をしながら、要は美味しそうにアイスをムシャムシャ食べていた。


 俺はそれを横目で見ながら、要って本当に美味しそうに食べるよなーと思っていたら、要の後頭部に何かが飛んできて「カーーン」と音がした。


 「いってぇー……」


 要は後頭部を手で押さえて、低くうめいた。


 「大丈夫か? 何が飛んできたんだ?」


 俺は慌てて周囲を見回すと少し凹んだ空き缶が(そば)に落ちていた。


 「よぉー、お前が天童てんどうだろ? 俺の彼女が世話になったな」


 要の名前を言いながら、ニタニタ笑って近付いてくるお兄さん達、誰?


 彼女が世話になったって事は、要の知り合いか?


 「あ? お前誰だよ」


 低い声で苛立ちを隠しもせずに要はそう言った。


 あ、要も知らないのか。


 じゃー誰なんだよ、ほんと。


 「彩葉いろはって言えば分かるか?」


 「ん? いろは、いろは、いろは……あぁー、なんか最近帰り道で良く会うわ」


 「それだけなわけねーだろ! お前が好きだからって俺ふられたんだぞ!」


 あーね。


 逆恨みってやつね。


 これは本当に要悪くないやつだな。


 「いや、知らねーけど。ってか、帰り道待ち伏せされてキモいから、逆に引き取ってくんね?」


 「は? お前喧嘩売ってんのかよ!」


 「喧嘩ふっかけてきてるのお前達だろ! アイツを何とかしてくれるなら、缶の事はチャラにしてやろうと思ったのに……」


 要の目つきが鋭くなった。


 あ、やる感じ?


 「要、出来れば早く終わらしてほしいな。アイス溶ける」


 「ん、分かった。これ持ってて」


 そう言って要は食べかけのパピコを俺に渡してきた。


 「食っていい?」


 「ダメ。持ってるだけ」


 「分かったよ」


 俺が要からパピコを受け取ると、要は走って相手との距離を一気に詰めた。


 うわ、初手ドロップキックって遊んでるなアイツ。


 綺麗に決まったって、ちょっと喜んでるじゃん。


 愛子さんにでも教わったのかな?


 俺も今度教えてもらおうかな。


 綺麗に決まったら気持ち良さそう。


 なんて考えている間に喧嘩は終わっていた。


 「え、3人居たのに早くない?」


 砂埃で汚れた服をはたきながら戻ってきた要にそう言うと、要は「だってお前がアイス溶けるから早くしろって言ったじゃん」と言って、俺の手からパピコを取った。


 「いや、言ったけど、最初遊んでそうだったからさ」


 「あ、分かっちゃった? この間愛子さんに教えてもらってさ、やってみたかったんだ。綺麗に決まっただろ?」


 「あぁ、綺麗に相手吹っ飛んでたな」


 「だろ? 後はちゃんと一撃で終わらしたよ。アイスが溶けたら朝陽が可哀想だろ?」


 「いや、俺のアイスも溶けるけど」


 「チョコモナカは少し溶けても旨いから大丈夫だ。でもスイカバーは溶けたら美味しくないだろ?」


 「確かにな……って何で俺納得してんだろ」


 「ハハハ、湊は可愛い奴だな」


 「うるせー。それは女子に言われたい」


 「あー、お前(つら)は良いのに何でモテないんだろうな。ハハハ」


 「そんなの俺が知りたいよ」


 「俺が女なら……朝陽選ぶな」


 「いやそこは俺って言う所だろ!」


 「いや、言おうと思ったんだけどさ、良く考えたら、お前良い奴止まりだなって思って」


 「ひでーな」


 「ハハハハハハ。早く朝陽の家行こーぜ」


 「笑って誤魔化しやがった……はぁー」


 「これあげるから元気出せよ」


 そう言って要が渡してきたのは、食べ終わったパピコの(がわ)だった。


 「お前、これゴミじゃねーか!」


 「ハハハハハハ」


 

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