第4章『境界』 第1節 沈黙の地
新たな街に到着した彼
どこか懐かしい心落ち着く風景に彼が思うことは、、?
男の足が、砂を踏むような音を立てて止まった。 そこに広がっていたのは、崩れかけた街だった。建物の骨組みだけが空に伸び、窓という窓は割れ、道端の看板は色を失って傾いている。 それでも、光はあった。 まばらな雲の隙間から降り注ぐ陽光が、粉塵を照らしながらゆっくりと漂っている。 風が吹くたびに、古びた標識がかすかに鳴った。
──誰かが、ここに生きていた。
そう思えるほど、この沈黙には温もりがあった。 人影はない。声もない。けれど街全体が「息を潜めている」ような気配がある。 壁には古い落書き、地面には消えかけた足跡、折れた街灯の根元には乾いた花束が落ちていた。 それらはどれも、過ぎ去った時の名残であり、 同時に、ここで確かに“時間が動いていた”という証だった。
男は歩を進める。 踏みしめるたびに、砂塵が舞い上がり、陽光の粒がそれに混ざる。 静かだ。だがその静寂は、虚無ではない。 まるで街そのものが“眠っている”だけのように感じられた。
ふと、崩れかけたビルの壁面に残る看板の文字が目に入った。 それは色あせた広告だったが、そこに描かれていたのは“笑う人々”の姿だった。 技術も、喧騒も、すべてがまだ遠い時代の光景。 その無邪気な笑顔を前に、男は立ち止まる。
「……ああ、覚えてるよ」
誰にともなく呟き、彼は顔を上げた。 風が再び吹き、雲がゆっくりと形を変えていく。 陽が傾き始め、長い影が廃墟の地面を覆い始めた。 その影の中を、男はもう一度歩き出した。
第4章第1節「沈黙の地」
お読みいただきありがとうございました。
少しずつ近づく旅の終わり、これまでの旅で彼が得るものとは、、!!!




