第3章 『足跡』
2つの街を巡った彼にしばし休息が必要だろう
元から気ままなひとり旅、けれどもその足取りは進むごとに力強く、、、
夜明け前、男は“未完成の街”を後にする。 自分の懐中時計と端末を眺め、 二つの街で見た“同じもの”をぼんやりと思い出しながらポケットにしまった。 まだ薄暗い地平の向こうから、光が少しずつ滲み出している。 風が、背中を押すように吹く。
足元の砂が、わずかに音を立てる。 その一歩一歩が、止まっていた時間の代わりに“刻み”をつくっていく。 歩きながら、男は考える。
——あの街の喧騒は、なぜあんなにも静かに感じたのか。
——あの街の静寂は、なぜあんなにも生きていたのか。
歩くたびに、光が変わる。 まばらに浮かぶ雲が地面に影を落とし、 その影の中に過去の自分が見える気がした。
思い出すのは、誰かと笑い合った声。 忘れかけていた温度。 そして、そこに確かにあった“時間”の感触。 それは幻のように一瞬で消えるが、 心の奥には確かに残響を残していく。
ふと立ち止まり、懐中時計を取り出す。 針は止まったままだ。 けれど、太陽は確かに昇り、影は伸び続けている。 男は思う——時間は、モノの中で止まっても、歩みの中では止まらないのだと。
歩き出す。 砂に刻まれる足跡が、太陽の光に照らされていく。 風が足跡をなぞるように吹き抜け、 それでも完全には消えない。
——記憶の足跡は消えていく。 ——けれど、現実の足跡は残る。
男は振り返らない。 長く伸びた影が前方へと続き、 その先にまだ見ぬ街の輪郭が、蜃気楼のように揺れている。
彼はただ、静かに息をつき、前へ進む。 足音だけが、朝の空気に溶けていった。
第3章『足跡』
お読みいただきありがとうございました!
今回の章はこれで完結です、街をめぐる彼にも思考を整理する時間が必要でした。
皆様も是非次章に進む前に考えの整理をしてからお進みいただけると幸いです。




