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第5章『静かな中心』第1節 夢の中の時
動き出した彼の懐中時計
確かに感じた世界の動き
さぁ 教えてよ 君が感じた全ての事を
音がした。
それは懐中時計の針が刻む音だった。 遠くで、近くで、一定のリズムを保ちながら響いている。 ただの夢だとわかっているのに、妙に現実的な音だった。 男は暗闇の中でその音を追う。
やがて、光が見えた。 赤と青――あの街の色だ。 ホログラムが滲む夜の街角、機械音声がかすかに鳴る。 だが、そこには誰もいない。 ネオンの反射だけが、無人の通りを濡らしていた。
懐中時計が、宙に浮かんでいる。 時計の針が、音もなく回り続けていた。 男は手を伸ばす。 指先が触れた瞬間、世界が波紋のように揺れた。
街が、消えた。 代わりに現れたのは、光のない空間。 上下も、時間もない。 ただ、あの懐中時計の音だけが続いている。
──止まっていたのは、世界じゃない。
心の奥で、誰かの声が囁いた。 その声が、まるで自分自身のもののように感じられた。
男はゆっくりと目を閉じる。 時計の音が鼓動に重なり、 暗闇の中に、わずかな温もりが灯った。
完結まで残り2話!
もう余計な事は書きませんm(_ _)m




