第九話 明かされた真実
「一つ質問があります。あなたたちはなぜこのカードゲームを運営しているんです? 何が目的なんですか?」
ユウが黒スーツの男――マリウスに問いかける。
「願いだよ」
「……願い?」
「人間の『願い』を測定し、データ化するための場。それがこのスペルカードゲームと、その舞台である『セレスティア』。つまり、このゲームとセレスティアは、プレイヤーの『願い』の観測装置なんだよ。──そして、君もまた、その観測対象の一人だ」
『観測対象:ユウ・ミナヅキ』との表記が彼の頭上に表示される。
かつて、ユウが別世界で失った唯一の肉親──アミ。
彼女を救えなかった後悔、そして「もしやり直せるなら」という強すぎる想い。
それこそが、運営が『彼』をこの世界に呼び寄せた理由だ。
「君の願いは、『妹を蘇らせること』だろう?」
「……ええ、そうです」
「だが、それは『誰かの願いを諦めさせる』という行為でもある。願いを叶えるための力は有限だ。だから、君がその願いを叶えれば、他の誰かの願いが潰える。――だからこそ、観測が必要なのさ。君の『願い』と、君がその願いを叶えるに値する人間であるかを、正確に測る必要がある」
ユウは静かに話を聞いていた。納得と、戸惑いが入り交じる。
「……もしボクがこのゲームに勝ち残ったら、願いは必ず叶うんですか?」
マリウスは、静かに語りかける。
「君が勝ち続け、『願い』が他を上回っていれば──そうだ。このゲームに勝つには、何より、対戦相手を上回る『想い』と『意志』が必要だ。だから、勝者の願いは敗者の願いに優ると判断される」
ユウは最後に、マリウスに問いかける。
「なるほど。では、最後にお聞きします。このゲームに『運営を倒す』って選択肢はあるのですか?」
マリウスの目がわずかに見開かれる。
だが、次の瞬間、彼は笑った。
「あはは、やはり君はイレギュラーな存在だよ。ルール上は可能だ。君がゲームに勝ち続ければ……の話だけどね。──何かをしたいなら、勝ち続けることだよ、ユウ君。勝つことで、君の道は開ける。では、君の活躍を期待しているよ」
◇◇◇
部屋に戻ったユウはライザのカードを見つめながら、自問する。
「ボクの願いが……プレイヤーの封印した『キャラクター』たちの命を代償に叶うものだとしたら……」
そのとき、ライザが小さく口を開いた。
カードの中から、微かな声が聞こえる。
「気にしないでユウ。私は自分から、あなたに『封印』をお願いしたんだよ……」
ライザがユウに語りかけてきた。
「それに、あなたの願いが本当に叶うのなら……私は、喜んで戦うよ」
ユウの手が震える。
「でも、ボクが負けたら、ライザは……ライザはこの世界から消滅しちゃうかもしれないんだよ?」
「それでも構わないさ。君と一緒に戦った結果なら、私はそれでも構わない」
「ありがとう、ライザ。でも、心配しないで。ボクは負けないから」
ユウはライザのカードを優しく握りしめる。彼の瞳には、再び強い光が灯った。




