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第七話 アシュリーの涙

「アシュリー、あなたの愛は重すぎたの。そして、あなたは私を束縛しすぎた。だから私は……」


「嘘だ、嘘だ嘘だぁー! 私は、こんなにもあなたに尽くしてきたのに、どうして……どうして私の思いに答えてくれないんだぁー!」


 アシュリーが感情を爆発させながら叫んだ。


 キリアはナナミを抱き起こし、彼女の身体を支えながらアシュリーに話しかける。


「アシュリーといったな。君はこの子の気持ちを考えたことはあるのか?」


「気持ちだと?」


「ああ。君の言葉には、この子への思いやりが欠けている。君の気持ちを押し付けているだけでは、本当の愛とは言えないんじゃないか?」


 キリアはアシュリーに諭すように話しかけている。


「何が言いたい?」


「私のマスターは、カードの中にいる私にも、優しく語りかけてくれるんだ。私が言葉を返さなくてもね。いつも私を気にかけてくれる。君に足りないのはそこだ。もっと、彼女の気持ちを考えて、彼女の言うことを聞いてあげたらよかったんじゃないか?」


「カードごときが、ふざけたことを……」


「ただのカードじゃないよ、アシュリー。キリアはボクの大事なパートナーだ!」


 ユウが叫ぶ。


「今、君のフィールド上にはコントロールできるキャラクターがいない。もし、次のターンに君がキャラクターカードを展開したとしても、もう一体ボクがキャラクターカードを展開すれば、君に直接攻撃ができる。そして、ナナミが滅身の焔で君を攻撃すれば、ボクの勝ちだ。できれば、ナナミには君を攻撃させたくない。でも、パッシブスキルのせいで、彼女は滅身の焔をするしかない……」


「私も、大好きなナナミからは攻撃されたくない……」


 アシュリーは苦渋の表情を浮かべている。


「……わかった。サレンダーするわ」


【対戦終了】【勝者:ユウ】


 勝者であるユウは、アシュリーからカードを一枚選ぶ権利を得た。


 だが、ユウは一つもカードを取らず、ただこう言った。


「君がナナミに与えた心の傷は、たぶん一生消えない。だから、せめて彼女をカードから解放できるのなら……」


 アシュリーは膝をつき、泣いていた。


「……私がカードに封印されるわ。そうすれば、カードの所有者がいなくなって、ナナミはカードから解放されるはずよ。お願いユウ。私をカードに封印して」


「それはできないよ。そんなことをしたら、君は……」


「いいのよ。それが、ナナミに対して私がしてきたことへの、最高の罰になるからね」


 アシュリーは、罰として自分をカードに封印してほしいとユウに頼み込む。最初は断ったユウだが、仕方なくカードに封印することになる。


「不思議ね。私、男の人は大嫌いなのに、あなたのことは、嫌いになれないの。むしろ──」


「それは、ボクが──」


 途中まで言いかけて、ユウは続きを言うのをやめた。


 ユウが本当は女の子だってことは、妹以外には秘密だ。


「ねえ、封印する前に、私のこと、ハグしてくれる?」


「わかったよ」


 ユウはアシュリーのことを優しく抱きしめる。自身の胸に当たる柔らかい感触で、アシュリーは全てを理解した。


「ああ、そういうことだったのね……。ありがとう、ユウ。あなたのこと、大好きになった。これから私はあなたに忠誠を誓うわ」


【封印条件を達成しました】


 ユウの頭の中にメッセージが流れると、アシュリーの身体が光へと変化して、カードの中に入り込んだ。


「アシュリー、ボクも君を大事にするよ。一緒に戦おう」


 アシュリーの持っていたカードから、ナナミは解放された。彼女はユウに深々と頭を下げると、『彼』のもとから離れていった。


 その後、ユウの手にあるキリアのカードが彼に話しかけてきた。


『今まで黙っていてすまなかった。君はライザと仲良くしているからな。私からはなかなか話しかけにくかったんだ』


『そうだったんだね。気を遣わせてしまって、本当にごめん。キリア、ボクは君も大切なパートナーだと思っているよ。これからも力を貸してくれ』


『──うれしいことを言ってくれるじゃないか。カードになった私にここまで言ってくれたのは、君が初めてだ。私も全力で君の気持ちに応えるよ』

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