第三話 初心者狩りのライナー
「ここは、どこだ?」
今、ユウは広大な草原にいる。
突然、彼の目の前に光が溢れて、この場所まで転移させられたのだ。
周りには、一人を除いて誰もいない。
ユウの目の前には黒いコートを着て、銀色の長髪をなびかせる長身の青年が立っている。彼はすでに何枚かのカードを手に持っていた。
「よお、新人さん。驚いたかい? 俺がカードの効果でお前をここに呼び寄せたんだ。ふふ、今から俺と勝負してもらうぜ」
この男はスペルカードに封印されていた魔法を『解放』することで、ユウをこの草原へと呼び寄せたのだ。
男は、持っていたカードのうちの一枚をユウの方へと向ける。すぐに、彼のカードがフィールドに展開される。
◆キャラクターカード【ビーストソルジャー】
HP:150 スピード:6 ウエイト:5
アクティブスキル:獣王斬
敵に通常の二倍のダメージを与える。このスキルを使用した次のターン、このカードは攻撃ができない。
属性:地
「なるほど、あなたに魔法でここに呼び寄せられたってわけか……」
ユウはまだ一枚しかキャラクターを封印していない。そのカードが『彼』に問いかけてくる。
『ふん、初心者狩りってわけか。こんなやつに負けるわけにはいかないだろう? ユウ、私を展開しろ』
「……ボクもカードを展開するよ。フォレストウルフ、ボクに力を貸してくれ」
ユウはカードの使用を宣言する。
カードに古代文字が浮かび上がり、魔物の姿がカードから飛び出してくる。彼の目の前に白い狼の魔物が現れた。
◆キャラクターカード【フォレストウルフ】
HP:140 スピード:4 ウエイト:3
パッシブスキル:神速
敵の攻撃を一定の確率で回避する。
アクティブスキル:疾風牙
このスキルを使う場合のみ、相手のウエイトに関係なく、必ず先制して攻撃できる。
属性:風
ユウの顔が、真剣な表情へと変わる。
「へへ、そう来なくっちゃな。俺はライナー。お前は確か……ユウだったな。運営への試合登録は俺がやってやるよ」
銀髪の青年がスマホのようなデバイスで情報を入力する。すぐに草原の上空に、黒い球体が現れた。
その球体を通して二人を観察しているのは、まだ少女のように見える運営スタッフ、レイン。彼女はライナーの入力した情報を確認して、試合を承認する。
黒い球体が二人の前まで降りてきて、ジャッジメントとよばれるシステムが起動する。
『登録情報承認。本試合は公式戦として扱われます。両名の準備が完了次第、カウントダウンフェーズを開始します』
「俺はいつでも戦えるぜ。お前はどうだ?」
「大丈夫。準備はできているよ」
「よし、それじゃあ勝負を始めようぜ」
【カウントダウン、スタート──】
黒い球体を通して、10からのカウントダウンが始まる。
ユウは、この世界に来て初めての真剣勝負に挑んだ。




