第十九話 激昂するユウ
ライザを苦しめられたことでプッツン切れたユウは、鋭くライルを睨みつける。それまでの優しい雰囲気は無くなり、その瞳には殺気が宿っている。
「なんだこいつ。氷のような冷たい視線で俺を睨んできやがる……」
ライルは豹変したユウの雰囲気に驚き、恐怖している。
ユウは静かに場にカードを2枚伏せて置いてから、そのうちの1枚を発動する。
「カウント2でマジックカード発動。【落雷】で悪魔の拘束器具を破壊する」
ユウは落雷のマジックカードでライザに取り付けられた拘束器具を破壊した。そのままユウはもう一枚の伏せカードを発動する。
「カウント1でサポートカード発動。【リサイクル】で悪魔の拘束器具を再利用する」
◆サポートカード【リサイクル】
スピード:1 ウエイト:4
効果:このカードはデッキからカードを1枚墓地に送ることで【即時発動】できる。お互いの墓地にあるサポートカードを1枚選んで、そのカードの効果を使用することができる。
ユウはクリスからもらったリサイクルというサポートカードの効果で、悪魔の拘束器具のカードを再利用して、ライルに使用する。
「ぐぅっ!」
ライルの身体を拘束器具が締め付けていく。
ターン終了時の手札補充でマインドコントロールのカードを引き当てたユウは、次のターンにそのカードを使用する。
「カウント5でサポートカード発動。【マインドコントロール】でポイズン・トードをコントロールする」
ユウはマインドコントロールの効果で、ポイズン・トードのコントロールを奪った。
「カウント3でポイズン・トードの猛毒の霧を発動。対象はライル」
ポイズン・トードの吐き出した毒霧がライルの身体を包み込む。ライルは毒の状態になった。
拘束器具の締め付けと毒の効果で苦しむライル。それに加えて、ユウからのおぞましい殺気に当てられたライルは、すでに戦意を喪失していた。
その次のターン、ライザのコントロールがユウに戻ると、ユウはアーケインギア・スティンガーを展開する。
◆キャラクターカード【アーケインギア・スティンガー】
HP:420 スピード:6 ウエイト:8
パッシブスキル:マジックガード【永続効果】
このカードを対象とするマジックカードの効果を無効にする。
アクティブスキル:急所突き
一定の確率で相手のHPに関係無く敵を倒すことができる。
属性:機械
「カウント6でアーケインギア・スティンガーの急所突きを発動。その尾でライルを貫け!」
「ぎゃあああああ!」
アーケインギア・スティンガーの鋭い尾に身体を貫かれたライルは悲鳴をあげて、気絶した。急所突きの効果で、彼のライフはゼロになったのだ。
だが、ユウは冷たい視線をライルに向けたまま、気絶した彼を更に攻撃しようとする。
「……まだ足りない。ライザの受けた痛みと屈辱には、全然足りてないよ!」
感情を爆発させて叫ぶユウにジャッジメントシステムが警告する。
『ユウ様、すでにあなたの勝利は確定しています。勝利後にスペルカードで相手を攻撃する行為はルール違反となります』
「──うるさいなあ。なら、こうすればいいんだろ?」
ユウはライルの持っている悪魔の拘束器具のカードを彼のデッキから強引に奪った。
「アンティルールだ。文句は無いよね?」
『ええ、問題ありません』
「それでは、このカードを解放する。対象はライルだ」
ユウは悪魔の拘束器具のスペルカードを解放して、あらためてライルに拘束器具を装着する。拘束器具はライルの身体をキリキリと締め上げていく。
「これは、相手への『攻撃』にはあたらないよね?」
『──確かに、サポートカードの使用ですので、攻撃では無いです』
「このまま、こいつをカードに封印する」
【封印条件を達成しました】
拘束器具ごと、ライルの身体はブランクカードの中へと吸い込まれていった。
「ライル、お前はボクの大切な仲間を傷つけた。カードの中で拘束されながら、永遠に苦しむんだな!」
ユウは、身体を拘束されたままカードに封印されたライルを睨みつけている。
「さて、このカードはもういらない。運営に返すことはできるのかな?」
『それであれば、私が回収しましょう』
ジャッジメントシステムを操作する運営スタッフのレインが、ライルのカードを自身のもとへと転送した。
『ユウ様、今回は【警告】とします。次からは気をつけてくださいね』
ユウに警告を与えると、ジャッジメントシステムの黒い球は上空へと戻っていった。




